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■ 彼女の気持ちと僕の不安■オマケ的短編⑤

隠し事が下手なキミ3

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 葵咲きさきちゃんは、さっき顔を覗かせたときとは違って、しっかり髪を乾かしていて、僕と同じようにホテル備え付けのバスローブに身を包んでいた。

(ヤバイ。めちゃくちゃそそられるんだけど……!)

 バスローブがこんなにエロいアイテムだとは思わなかった。

 しばし彼女に見惚みとれてから、無意識に立ち上がったら、危険を察知したみたいに葵咲ちゃんにキリッとした顔で線引きされてしまった。

「ね、理人りひと。そっちのクローゼットに荷物入れてあるから、着替えてご飯食べに行こう?」

 言いながら僕からさりげなく離れると、葵咲ちゃんはベッドに置いていた二人の服を手に取って戻ってきた。押し付けるように僕のスーツなどを手渡してくれると、
「あ、あの……下着は……着替える、よね?」
 少し視線を逸らしながら戸惑いがちにそう問いかけてくる。

 スーツはともかくとして、という意味が込められているんだろう彼女の言葉に、僕は「そうだね。僕のキミを求めすぎて結構前、濡れちゃってるし」と、意地悪な返事をしてしまう。

 途端、葵咲ちゃんが真っ赤になって、「理人の意地悪っ」とつぶやいてそっぽを向いた。

「……今さ、僕、バスローブの下、裸なんだけど……葵咲はどう?」

 耳まで赤く染めた葵咲ちゃんが可愛くて、僕は吸い寄せられるように彼女を背後からギュッと抱きしめた。

 耳元で囁くようにそう言って下腹部を密着させたら、葵咲ちゃんがビクッとして息を飲む。

「葵咲のバスローブ姿があんまり色っぽいから……」

 言って、首筋に軽くキスを落とすと、葵咲ちゃんの足から力が抜けて、僕の腕に彼女の重みがかかる。

(あー、本当、この反応、止められなくなりそうでまずすぎるだろ)

 ちょっとだけからかうつもりで抱きしめたのに、本気モードになりそうだ。一旦、落ち着け僕、と頭の中で警鐘が鳴っている。

「ごめん、葵咲。もう一回シャワー浴びてくる」

 僕にしなだれかかる葵咲ちゃんを、理性で引き剥がして、今まで僕が座っていた椅子に座らせると、彼女の頭にポン、と触れてきびすをかえす。

 脱衣所で着替えて出てくるから葵咲もそのつもりで、と声を添えて振り向かずに手を振ると、僕は浴室へ向かった。

 冷水かぶって頭を冷やそう。それでも無理なら一回抜いて――。
 でないと、葵咲ちゃんが僕のために準備してくれているだろうあれこれを、僕は絶対無下むげにしてしまう。

 そんなことを思いながら。
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