【完結】【R18】組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~

鷹槻れん

文字の大きさ
9 / 237
3.家なき子

遅くなってすまなかったな

しおりを挟む
「私の……家……」

 細波さざなみの質問を無視してポツンとつぶやいたら、「そう! 今燃えてるのは芽生めいちゃんの家だよ!? 見たら分かると思うけど、あんなじゃもう住めないよね!? だから僕の家においでって話をしてるんだけど……芽生ちゃん、ちゃんと僕の話を聞いてくれてる!?」と、何故か苛立ったみたいに再度畳み掛けてくる。

 分かっていても、酷いことになっているのは自分の家だと改めて他者の口から聞かされるのはものすごいショックだ。芽生は配慮のない細波の言動にいたく傷ついて、信じられないモノを見るみたいに呆然と眼前の男を見詰めた。

「ったく、そんなにぼんやりしてたんじゃ、路頭に迷うの決定じゃないか。ってことで、芽生ちゃん。うちに来るんでいいよね!?」

 グイッと掴まれたままの腕を引かれて火災現場から引き離されそうになった芽生は、懸命に足を踏ん張った。

 現状はどうあれ、自分があの家の住人である以上、何もしないままにこの場を立ち去るのは違うというのだけはぼんやりした頭でも分かる。

 細波はそんな芽生に舌打ちをすると、
「事後処理なら僕がちゃんとやってあげるから……!」
 言って、芽生の手をグイグイ引っ張ってくるのだ。

(細波さんは、どうしてそうまでして私をこの場から引き剥がしたいの?)

 思考の鈍った頭でそんなことを思っていたら、細波のすぐ後ろに大きな人影が立った。

 こんなに人だかりが出来ているというのに、みんなその長身の男を恐れるみたいに、彼の周りだけ不自然に空間が空いていく。

「せっかくの申し出だがなぁ、その必要はねぇよ」

 そんなに声を張り上げたわけではないのに、ガヤガヤと騒がしい喧噪けんそうの中にあって、その男の声は不思議とよく響いた。

「京ちゃ……」

 京介の登場に、細波さざなみ芽生めいの腕を握る力が一瞬だけ弱まって……芽生はずっと会いたくて仕方なかった京介の名を呼ぶと、倒れ込むみたいに京介の腕の中へ飛び込んだ。

「芽生。遅くなってすまなかったな」

 片腕で、今にも崩れ落ちそうな芽生の身体をグッと支えるように抱き留めてくれると、京介が申し訳なさそうに空いた方の手で芽生の背中を優しく撫でてくれる。その温もりを感じた途端、芽生は張りつめていた糸が切れたみたいにポロポロと涙をこぼして泣いてしまっていた。

「京ちゃ……、どうしよぉ……。私の……家、が……っ」

 わざわざ伝えなくても見れば一目瞭然だ。そう分かっていても、芽生は大好きな京介に、家がなくなってしまったことを言わずにはいられなかった。

 京介は上手く言葉に出来ない芽生の気持ちが分かっているみたいに、ただ静かに背中をトントンとあやすように撫でながら、途切れ途切れにしかつむげない芽生のつたない言葉を何も言わずに受け止めてくれる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

愛し愛され愛を知る。【完】

夏目萌
恋愛
訳あって住む場所も仕事も無い神宮寺 真彩に救いの手を差し伸べたのは、国内で知らない者はいない程の大企業を経営しているインテリヤクザで鬼龍組組長でもある鬼龍 理仁。 住み込み家政婦として高額な月収で雇われた真彩には四歳になる息子の悠真がいる。 悠真と二人で鬼龍組の屋敷に身を置く事になった真彩は毎日懸命に家事をこなし、理仁は勿論、組員たちとの距離を縮めていく。 特に危険もなく、落ち着いた日々を過ごしていた真彩の前に一人の男が現れた事で、真彩は勿論、理仁の生活も一変する。 そして、その男の存在があくまでも雇い主と家政婦という二人の関係を大きく変えていく――。 これは、常に危険と隣り合わせで悲しませる相手を作りたくないと人を愛する事を避けてきた男と、大切なモノを守る為に自らの幸せを後回しにしてきた女が『生涯を共にしたい』と思える相手に出逢い、恋に落ちる物語。 ※ あくまでもフィクションですので、その事を踏まえてお読みいただければと思います。設定等合わない場合はごめんなさい。また、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

虚弱なヤクザの駆け込み寺

菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。 「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」 「脅してる場合ですか?」 ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。 ※なろう、カクヨムでも投稿

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

処理中です...