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送り狼的な彼

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「急に押しかけてすみません」

 寛道ひろみちの声に、私は彼に手をギュッと握られたままビクッと身体を跳ねさせる。

「あら、いいのよ。寛道くんならいつ来てくれても大歓迎」

 ニコッと笑ったを見て、私はソワソワしてしまう。

 病院って……だったの?
 なんで……お母さんの、所?


花々里かがり、どうしたの? 今日はやけにおとなしいじゃない」

 言われて、「あ、うんっ、お、お腹空いてて」と意味不明な返しをしてしまってから、こんなんじゃお母さんに心配かけちゃうじゃんって思って。


「ね、花々里ちゃん、御神本みきもとさんのところでは可愛がってもらってる? 辛い思いしてない? お母さん、もうちょっとで退院できるから……そうしたらまた2人で暮らすことも視野に入れて色々考えようね」

 言われて、「だっ、大丈夫! すっごく可愛がってもらってるし、私、今のままでも全然問題ないよ」って答えたら、瞬間手首を握る寛道の力が強くなった。


 いっ、痛いってば。

 眉をしかめて、寛道の手を振り解こうと、腕を自分の方に引きながら寛道を睨んだら、軽やかに無視されてしまった。

 ばかりか――。


「今日は俺、おばさんにお伝えしたいことがあってきました」


「えっ?」
 そこでグイッと寛道ひろみちに抱き寄せられて。
「俺、さっき花々里かがりにプロポーズしました」
 とか。


「まぁっ!」
 と驚くお母さんの声に被せるように、
「え!? アレそうだったのっ!?」
 と瞳を見開いたら、
「花々里、恋愛関係には本当ホンットうといんで、俺のことはまだ〝かぼちゃ〟程度にしか好きじゃないらしいんですけど……。嫌われてるわけじゃなさそうなんで、諦めるつもりはありません」

 そう言って、寛道が私を抱く腕にギュッと力を込めた。


「ちょっ、寛道ひろみちっ、お母さんの前っ」

 じゃなきゃいいってわけでもないんだけど、とりあえず親の前でこんなっ。

 でも寛道は私の抗議の声なんて全無視で、言いたいことをどんどん言ってしまう。
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