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*ふたりの初めて

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 音芽おとめの言葉に、俺は恐る恐る彼女の両腕を開放する。

 けど、どうしても音芽の目を覆う手だけは外せなくて。

 だって今の俺、絶対変な顔してる。
 こんな情けない顔、好きな女に見せられるかよ!

 なのにやっぱり音芽は視覚も取り戻したいんだろう。

「あ、あの……温和はるまささん? 目……」

 そう言いながら、戸惑いがちに彼女のまぶたに載せたままの俺の手に、そっと触れてくるんだ。

 柔らかくてふわふわな音芽の手の感触に、心臓がドキッと跳ねた。

 けどさ、そのくらいで外せるなら最初からそうしてると思わねぇか?

 気付いていて、音芽の要求を無視し続ける俺に、もう一度ダメ出しするみたいに「温和はるまさ?」って音芽が声をかけてきて。

 と、そこで不意に外から聞こえてくる雨の音が強くなって、俺はほんの少しそちらへ気を取られてしまった。

 雨、酷くなったんだろうか。

 そう思っていたら、俺の手に掛けられたままだった音芽おとめの手に微かに力がこもって。
 ん?と思ったと同時、ギュッと俺の手首を掴んでくると、やや強引に俺の手を引っ張って退けると、ついに視界を取り戻すんだ。

 そうしておいて、見て欲しくないと願ってやまない俺の顔をじっと見上げてくるとか……。

 なっ、何の嫌がらせだよ、バカ音芽。

 考えれば考えるほど頬に朱が登るのを感じずにはいられない。

 音芽に対しては、基本カッコよく主導権を握りたいと思っているのに、こんな顔見られたらアウトだろ。

「あんまジロジロ見んな」
 男の沽券こけんに関わる。

 ボソリとつぶやくように眉間にしわを寄せながらもっともらしいことを言ってそっぽを向いたら、音芽がクスッと笑った気がして。

「ね、温和はるまさ、お願い。こっち、見て?」

 とか言ってくるんだ。
 それでおいそれとお前のほう、見られるわけねぇだろうが、バカ音芽め。

 心の中でひとり密かに毒付いたら、「黙れ、バカ音芽おとめ」って無意識に声が出てしまっていた。

 音芽、怒るかな?
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