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第7章 新国テンプルム
第360話 共同作業
「ここがドマさんの工房……」
ドマさんに案内されて屋敷へと入っていくと、そこには大きな鍛冶工房があった。
というか、さすが伝説の鍛冶師、屋敷のほとんどが工房で占められている状態だ。
危険な作業をするせいか内壁はかなり頑丈な作りになっていて、そして各設備や道具にも特殊な効果が付与されていた。
僕は鍛冶工房というのをあまり知らないが、ざっと解析しただけでも非常に上質な物ばかりで、相当お金が掛かっているのが分かる。
なるほど、この工房を作り上げるだけでも、かなりの出費だったろうな。
お金がいくらあっても足りないというのも道理だ。
ちなみに、どうもゼルマは僕がドマさんを口説いていると勘違いしているようで、貴様の女グセの悪さには付き合ってられぬとかなんとか言いながら帰った。
全く酷い誤解だ。ただドマさんの仕事を見せてもらおうと思っただけなのに。
だいぶ機嫌が悪そうだったけど、まあゼルマはいつもカリカリしてるから気にしないことにする。
「いま『水減し』をしているところでしゅ。本来なら坊主に構っているヒマなどないのでしゅが、今回だけ特別でしゅ」
『水減し』というのは剣作りの工程の1つで、熱した金属を叩いてのばし、それを急速に冷やしたのちに金属を砕く。
そうすることで、より良い金属へと精錬していく作業だ。
ちなみに、なぜ僕が知っているかというと、僕は『鍛冶』スキルを習得していて、しかもレベル10まで上げている。
なので、一応鍛冶に関する基礎知識は持っているのだ。
「この『水減し』でしゅが、今とっても苦戦しているでしゅ。どうしても思ったようにいかないのでしゅ」
「ドマさんほどの人が苦戦することなんてあるんですか?」
「……本来なら極秘でしゅが、お前からは山ほど白金貨を貰ったでしゅから、特別に教えてやるでしゅ。コレを見るでしゅ」
そう言って、炉から金属を取り出して金床へと載せる。
その赤く熱せられた塊に、うっすら虹色の光沢が浮かんだのを見て、僕は慌てて鑑定した。
「コレ……ひょっとして『火緋色鋼』ですか!?」
「坊主、お前本当に慧眼でしゅね!?」
やはり!
それにしても、まさか『火緋色鋼』を持っているとは……!
「コレはあたいの一族に受け継がれてきた家宝でしゅ。大昔発見した特殊な鉱石から『火緋色鋼』を製錬し、それを数千年にもわたって代々の者たちがコツコツ精錬して、ようやくここまで純度を上げてきたのでしゅ。ただ、これ以上にならないのでしゅ」
「何故ですか?」
「炉の温度が足らないのでしゅ。あたいらドワーフは魔法が苦手だから、鍛冶用のアイテム『核光焔結晶』を使って加熱しましゅが、これ以上『火緋色鋼』を精錬するにはもっと高温が必要なのでしゅ。先祖たちもこれで失敗してきたのでしゅ」
『核光焔結晶』というのは魔鉱石の一種で、砕くととてつもない熱を発するアイテムだ。
取り扱いが非常に難しいので、戦闘に使うことはほとんどなく、主に鍛冶作業や岩石を爆砕するときなどに使用する。
「高純度の『核光焔結晶』はとても希少で高価でしゅので、あっという間にお金が無くなるでしゅ。かといって、『核光焔結晶』以上の高熱を発する魔法も、そうはないでしゅし……」
超高温魔法もあるにはあるけど、例えば火属性最強と言われる『灼き焦がす熾光』は、鍛冶作業には全く向いてない。
そもそも『灼き焦がす熾光』を使える人が滅多に居ないけどね。
ほかの魔法も似たり寄ったりで、結局のところ、鍛冶作業には『核光焔結晶』が最適と言われている。
「そして、熱した『火緋色鋼』を冷やす液体も、全然物足りないのでしゅ」
そう言って、ドマさんは冷却水みたいなモノに『火緋色鋼』を漬ける。
「コレは水よりも遙かに冷たい『極冷液』と呼ばれる液体でしゅが、帝国の上級調合士しか生成できず、取り寄せにも莫大なお金が掛かるでしゅ。それに、もっと超低温の水が欲しいのでしゅ」
さすが最強金属『火緋色鋼』、理想通りに精錬していくのは大変なんだな。
僕が持ってる『火緋色鋼』はかなり高純度だと思うので、それをドマさんにあげてもいいけど、それでもドマさんが思い描く状態にはまだまだ精錬が足らないと思う。
超超硬度の金属を作ろうと思ったら、不純物を極限まで排除しないとならないし。
それに、一族に伝わる秘宝で剣を作りたいだろうし、僕の『火緋色鋼』の出番はないだろう。
「打ちのばすときに使う鎚も、あたいが持っているアダマンタイト製では硬さが足りないでしゅ。こんなことでは、一族の悲願『魔剣ダーインスレイヴ』はとても完成しないでしゅ」
「『魔剣ダーインスレイヴ』?」
「そうでしゅ、全てを断つというドワーフ族の伝説の剣でしゅ。一度は諦めましゅたが、もう一度チャレンジしているのでしゅ」
魔剣か……それは凄そうだ。
なるほど、ドマさんの状況は分かった。
守銭奴だと思ったけど、ただお金が欲しいのではなく、剣作りにはお金が掛かるから、それで必死に集めてるんだな。
だけど、もはやお金では解決できないような状況になっていて悩んでいると。
いま聞いた限りでは、僕でも力になれることがありそうだ。
「ドマさん、その『魔剣ダーインスレイヴ』を作る作業、僕にも手伝わせてください」
「なんと! お前に何ができるというのでしゅか!」
「えっと、超高温の魔法が使えるので、炉を加熱しましょうか?」
「坊主が魔法? お前のような子供に何ができるか知らないでしゅが、まあやってみるでしゅ」
「あ、ドマさん、ちなみにこの炉は何度くらいの熱まで大丈夫ですか?」
「いくらでも問題ないでしゅ。バカなことを聞く坊主でしゅね、高熱で壊れる炉なんてあるわけないでしゅ」
なら『界域魔法』レベル5にある数十万度の『輝光球』じゃなくて、レベル6の『真紅煌光雷球』にしてみるか。
これは火属性最強『灼き焦がす熾光』なんて比較にならないほどの威力を持っていて、実に数百万度の高熱を発する超魔法だ。
念のため、一応ちょっとだけ手加減しておこう。
僕は『界域魔法』を詠唱する。
「炎界召喚、『真紅煌光雷球』っ!」
バシュンッ!
「おうっ!? ほおおおおおおおおおおおっ!?」
あれ? ドマさんが問題ないって言ってたのに、一瞬で炉が蒸発しちゃったぞ?
その余波がこっちにも来たから、吸収スキルで吸い取ったけど。
危うくドマさんが蒸発しちゃうところだった。
「ぼ、ぼ、坊主、今の魔法はいったいなんでしゅ? 見たこともないでしゅよ!?」
「ドマさん炉を壊してスミマセン、でも大丈夫って言ったから……」
「こ、こんな規格外の超高温魔法なら先に言うでしゅ、常識を考えろでしゅ! はあああ高いお金を払って作った炉が消えてしまったでしゅ! っていうか、お前何者でしゅか!?」
うーん、だからあらかじめちゃんと聞いたのに……。
とりあえず、炉と内壁を破壊しちゃったんで、『回帰魔法』で元通りに……いや、もっと丈夫に作り直しちゃおう。
僕は『高次建築魔法』で、工房の壁と炉を作り直す。
「なななな、なんでしゅか!? あっという間に炉が直ったでしゅ!?」
うん、この炉なら数百万度でも耐えられる。
僕はもう一度『真紅煌光雷球』を撃って、炉を超高熱状態にした。
「ささドマさん、『火緋色鋼』を入れてみてください」
「お、おうでしゅ!」
炉に入れて取り出した『火緋色鋼』は、先ほどの赤い状態ではなく、超高熱に光り輝いていた。
「こ、これでしゅ! この状態にしたかったのでしゅ!」
ドマさんはそれを金床に置いて、アダマンタイト製のハンマーで打ち叩く。
すると、超高温と『火緋色鋼』の硬さに耐えられなかったのか、ハンマーのほうが変形してしまった。
「なんと……! アダマンタイト製の鎚でもだめでしゅか!? これでは薄くのばすどころか、『鍛錬』もできないでしゅ!」
『鍛錬』というのは、その名の通り金属を叩いて鍛える作業だ。
熱した金属を叩くと、金属に含まれている不純物が火花となって散る。それをくり返すことによってより精錬され、高純度の金属が出来上がるという仕組みだ。
「では、コレならどうですか?」
僕は『蒼魂鋼』製のハンマーをその場で作り、ドマさんに渡した。
「おっ、おっ、おまっ、コレは『蒼魂鋼』でしゅか!? こんな凄い鎚など見たことないでしゅ!?」
「どうぞ試してみてください」
『火緋色鋼』の次に硬いと言われている金属だ。
熱して柔らかくなってる『火緋色鋼』なら、叩き負けることはないだろう。
「おおっ、コレなら大丈夫でしゅっ! あとはちゃんと冷やせるか……」
ドマさんは、叩いてのばした『火緋色鋼』を『極冷液』に漬ける。
ジュボゴォッ!
なんと、『極冷液』は『火緋色鋼』を冷やしきる前に蒸発してしまった。
「今度はコレでしゅか……せっかくここまでできたというのに、冷やすことができないのでは……」
「ドマさん、ちょっとこの『極冷液』を調べさせてもらいますね」
少量だけ残っていた、上級調合士にしか作れないという『極冷液』を分析する。
……なるほど、だいたい解析できた。組成さえ分かれば、似たような物は作れる。
僕はアイテムボックスに保存してある素材から適切な物を選び、そして『物質生成』スキルと『魔道具作製』スキルを駆使して、さらに上位の冷却液を作った。
「おおっ、そ、その液体はなんでしゅか!?」
「これは『ウンディーネの涙』という超超低温の液体です」
「ウ、ウ、ウ、『ウンディーネの涙』でしゅと~っ!? 一掬いの量でドラゴンすら凍らせるという、伝説の液体ではないでしゅか!? それをこんなたくさん……城が買えるでしゅよ!?」
『魔道具作製』スキルには経験値100億以上使ってるからね。
この程度は造作もないこと。
「ぼ、坊主、お前ただのボンクラ金持ちかと思ったら、ただ者じゃないでしゅね」
「僕のことはともかく、とりあえず漬けてみてください」
『ウンディーネの涙』にドマさんが『火緋色鋼』を漬けると、超高熱に光っていたそれは瞬時に冷めて凍りついた。
「こ、これなら作業ができるでしゅ!」
ドマさんは凍った『火緋色鋼』を叩いて粉々に割る。
割れた断面が綺麗な物ほど硬いので、その破片を集めてまた炉で溶かす。
色々状態を見極めながら、この作業をくり返していくことで、硬度の高い金属が出来上がる。
もちろんこれらの作業は言うほど簡単ではなく、正確に、精密にこなすには、ドマさんの持つ『天匠鍛人』という称号の力が大きいだろう。
長年の経験とドワーフとしての鍛冶能力の高さ、そして天性の称号によって、天才ドマ・ギンガイムは誕生したのだ。
「あの……ドマさん、こうやってお手伝いさせてもらってもいいですか?」
一緒に作業することで、剣作りにおける秘訣や心構えみたいなものをドマさんから学びたい。
でも、やっぱりお邪魔かな……?
「お、おう、そ、そうでしゅね、一族の掟で本来は他人と共同作業をしてはダメなんでしゅが……お前には炉に火を入れてもらいたいでしゅし、て、手伝うことを許可するでしゅ」
やったー! お許しが出たぞ!
ドマさんが伝説の剣を作る作業に立ち会えるなんて、本当に嬉しい。
……ん? なんかドマさんの顔が赤いな。さすがにちょっと暑いのかな?
とりあえず、お手伝い頑張るぞ!
ドマさんに案内されて屋敷へと入っていくと、そこには大きな鍛冶工房があった。
というか、さすが伝説の鍛冶師、屋敷のほとんどが工房で占められている状態だ。
危険な作業をするせいか内壁はかなり頑丈な作りになっていて、そして各設備や道具にも特殊な効果が付与されていた。
僕は鍛冶工房というのをあまり知らないが、ざっと解析しただけでも非常に上質な物ばかりで、相当お金が掛かっているのが分かる。
なるほど、この工房を作り上げるだけでも、かなりの出費だったろうな。
お金がいくらあっても足りないというのも道理だ。
ちなみに、どうもゼルマは僕がドマさんを口説いていると勘違いしているようで、貴様の女グセの悪さには付き合ってられぬとかなんとか言いながら帰った。
全く酷い誤解だ。ただドマさんの仕事を見せてもらおうと思っただけなのに。
だいぶ機嫌が悪そうだったけど、まあゼルマはいつもカリカリしてるから気にしないことにする。
「いま『水減し』をしているところでしゅ。本来なら坊主に構っているヒマなどないのでしゅが、今回だけ特別でしゅ」
『水減し』というのは剣作りの工程の1つで、熱した金属を叩いてのばし、それを急速に冷やしたのちに金属を砕く。
そうすることで、より良い金属へと精錬していく作業だ。
ちなみに、なぜ僕が知っているかというと、僕は『鍛冶』スキルを習得していて、しかもレベル10まで上げている。
なので、一応鍛冶に関する基礎知識は持っているのだ。
「この『水減し』でしゅが、今とっても苦戦しているでしゅ。どうしても思ったようにいかないのでしゅ」
「ドマさんほどの人が苦戦することなんてあるんですか?」
「……本来なら極秘でしゅが、お前からは山ほど白金貨を貰ったでしゅから、特別に教えてやるでしゅ。コレを見るでしゅ」
そう言って、炉から金属を取り出して金床へと載せる。
その赤く熱せられた塊に、うっすら虹色の光沢が浮かんだのを見て、僕は慌てて鑑定した。
「コレ……ひょっとして『火緋色鋼』ですか!?」
「坊主、お前本当に慧眼でしゅね!?」
やはり!
それにしても、まさか『火緋色鋼』を持っているとは……!
「コレはあたいの一族に受け継がれてきた家宝でしゅ。大昔発見した特殊な鉱石から『火緋色鋼』を製錬し、それを数千年にもわたって代々の者たちがコツコツ精錬して、ようやくここまで純度を上げてきたのでしゅ。ただ、これ以上にならないのでしゅ」
「何故ですか?」
「炉の温度が足らないのでしゅ。あたいらドワーフは魔法が苦手だから、鍛冶用のアイテム『核光焔結晶』を使って加熱しましゅが、これ以上『火緋色鋼』を精錬するにはもっと高温が必要なのでしゅ。先祖たちもこれで失敗してきたのでしゅ」
『核光焔結晶』というのは魔鉱石の一種で、砕くととてつもない熱を発するアイテムだ。
取り扱いが非常に難しいので、戦闘に使うことはほとんどなく、主に鍛冶作業や岩石を爆砕するときなどに使用する。
「高純度の『核光焔結晶』はとても希少で高価でしゅので、あっという間にお金が無くなるでしゅ。かといって、『核光焔結晶』以上の高熱を発する魔法も、そうはないでしゅし……」
超高温魔法もあるにはあるけど、例えば火属性最強と言われる『灼き焦がす熾光』は、鍛冶作業には全く向いてない。
そもそも『灼き焦がす熾光』を使える人が滅多に居ないけどね。
ほかの魔法も似たり寄ったりで、結局のところ、鍛冶作業には『核光焔結晶』が最適と言われている。
「そして、熱した『火緋色鋼』を冷やす液体も、全然物足りないのでしゅ」
そう言って、ドマさんは冷却水みたいなモノに『火緋色鋼』を漬ける。
「コレは水よりも遙かに冷たい『極冷液』と呼ばれる液体でしゅが、帝国の上級調合士しか生成できず、取り寄せにも莫大なお金が掛かるでしゅ。それに、もっと超低温の水が欲しいのでしゅ」
さすが最強金属『火緋色鋼』、理想通りに精錬していくのは大変なんだな。
僕が持ってる『火緋色鋼』はかなり高純度だと思うので、それをドマさんにあげてもいいけど、それでもドマさんが思い描く状態にはまだまだ精錬が足らないと思う。
超超硬度の金属を作ろうと思ったら、不純物を極限まで排除しないとならないし。
それに、一族に伝わる秘宝で剣を作りたいだろうし、僕の『火緋色鋼』の出番はないだろう。
「打ちのばすときに使う鎚も、あたいが持っているアダマンタイト製では硬さが足りないでしゅ。こんなことでは、一族の悲願『魔剣ダーインスレイヴ』はとても完成しないでしゅ」
「『魔剣ダーインスレイヴ』?」
「そうでしゅ、全てを断つというドワーフ族の伝説の剣でしゅ。一度は諦めましゅたが、もう一度チャレンジしているのでしゅ」
魔剣か……それは凄そうだ。
なるほど、ドマさんの状況は分かった。
守銭奴だと思ったけど、ただお金が欲しいのではなく、剣作りにはお金が掛かるから、それで必死に集めてるんだな。
だけど、もはやお金では解決できないような状況になっていて悩んでいると。
いま聞いた限りでは、僕でも力になれることがありそうだ。
「ドマさん、その『魔剣ダーインスレイヴ』を作る作業、僕にも手伝わせてください」
「なんと! お前に何ができるというのでしゅか!」
「えっと、超高温の魔法が使えるので、炉を加熱しましょうか?」
「坊主が魔法? お前のような子供に何ができるか知らないでしゅが、まあやってみるでしゅ」
「あ、ドマさん、ちなみにこの炉は何度くらいの熱まで大丈夫ですか?」
「いくらでも問題ないでしゅ。バカなことを聞く坊主でしゅね、高熱で壊れる炉なんてあるわけないでしゅ」
なら『界域魔法』レベル5にある数十万度の『輝光球』じゃなくて、レベル6の『真紅煌光雷球』にしてみるか。
これは火属性最強『灼き焦がす熾光』なんて比較にならないほどの威力を持っていて、実に数百万度の高熱を発する超魔法だ。
念のため、一応ちょっとだけ手加減しておこう。
僕は『界域魔法』を詠唱する。
「炎界召喚、『真紅煌光雷球』っ!」
バシュンッ!
「おうっ!? ほおおおおおおおおおおおっ!?」
あれ? ドマさんが問題ないって言ってたのに、一瞬で炉が蒸発しちゃったぞ?
その余波がこっちにも来たから、吸収スキルで吸い取ったけど。
危うくドマさんが蒸発しちゃうところだった。
「ぼ、ぼ、坊主、今の魔法はいったいなんでしゅ? 見たこともないでしゅよ!?」
「ドマさん炉を壊してスミマセン、でも大丈夫って言ったから……」
「こ、こんな規格外の超高温魔法なら先に言うでしゅ、常識を考えろでしゅ! はあああ高いお金を払って作った炉が消えてしまったでしゅ! っていうか、お前何者でしゅか!?」
うーん、だからあらかじめちゃんと聞いたのに……。
とりあえず、炉と内壁を破壊しちゃったんで、『回帰魔法』で元通りに……いや、もっと丈夫に作り直しちゃおう。
僕は『高次建築魔法』で、工房の壁と炉を作り直す。
「なななな、なんでしゅか!? あっという間に炉が直ったでしゅ!?」
うん、この炉なら数百万度でも耐えられる。
僕はもう一度『真紅煌光雷球』を撃って、炉を超高熱状態にした。
「ささドマさん、『火緋色鋼』を入れてみてください」
「お、おうでしゅ!」
炉に入れて取り出した『火緋色鋼』は、先ほどの赤い状態ではなく、超高熱に光り輝いていた。
「こ、これでしゅ! この状態にしたかったのでしゅ!」
ドマさんはそれを金床に置いて、アダマンタイト製のハンマーで打ち叩く。
すると、超高温と『火緋色鋼』の硬さに耐えられなかったのか、ハンマーのほうが変形してしまった。
「なんと……! アダマンタイト製の鎚でもだめでしゅか!? これでは薄くのばすどころか、『鍛錬』もできないでしゅ!」
『鍛錬』というのは、その名の通り金属を叩いて鍛える作業だ。
熱した金属を叩くと、金属に含まれている不純物が火花となって散る。それをくり返すことによってより精錬され、高純度の金属が出来上がるという仕組みだ。
「では、コレならどうですか?」
僕は『蒼魂鋼』製のハンマーをその場で作り、ドマさんに渡した。
「おっ、おっ、おまっ、コレは『蒼魂鋼』でしゅか!? こんな凄い鎚など見たことないでしゅ!?」
「どうぞ試してみてください」
『火緋色鋼』の次に硬いと言われている金属だ。
熱して柔らかくなってる『火緋色鋼』なら、叩き負けることはないだろう。
「おおっ、コレなら大丈夫でしゅっ! あとはちゃんと冷やせるか……」
ドマさんは、叩いてのばした『火緋色鋼』を『極冷液』に漬ける。
ジュボゴォッ!
なんと、『極冷液』は『火緋色鋼』を冷やしきる前に蒸発してしまった。
「今度はコレでしゅか……せっかくここまでできたというのに、冷やすことができないのでは……」
「ドマさん、ちょっとこの『極冷液』を調べさせてもらいますね」
少量だけ残っていた、上級調合士にしか作れないという『極冷液』を分析する。
……なるほど、だいたい解析できた。組成さえ分かれば、似たような物は作れる。
僕はアイテムボックスに保存してある素材から適切な物を選び、そして『物質生成』スキルと『魔道具作製』スキルを駆使して、さらに上位の冷却液を作った。
「おおっ、そ、その液体はなんでしゅか!?」
「これは『ウンディーネの涙』という超超低温の液体です」
「ウ、ウ、ウ、『ウンディーネの涙』でしゅと~っ!? 一掬いの量でドラゴンすら凍らせるという、伝説の液体ではないでしゅか!? それをこんなたくさん……城が買えるでしゅよ!?」
『魔道具作製』スキルには経験値100億以上使ってるからね。
この程度は造作もないこと。
「ぼ、坊主、お前ただのボンクラ金持ちかと思ったら、ただ者じゃないでしゅね」
「僕のことはともかく、とりあえず漬けてみてください」
『ウンディーネの涙』にドマさんが『火緋色鋼』を漬けると、超高熱に光っていたそれは瞬時に冷めて凍りついた。
「こ、これなら作業ができるでしゅ!」
ドマさんは凍った『火緋色鋼』を叩いて粉々に割る。
割れた断面が綺麗な物ほど硬いので、その破片を集めてまた炉で溶かす。
色々状態を見極めながら、この作業をくり返していくことで、硬度の高い金属が出来上がる。
もちろんこれらの作業は言うほど簡単ではなく、正確に、精密にこなすには、ドマさんの持つ『天匠鍛人』という称号の力が大きいだろう。
長年の経験とドワーフとしての鍛冶能力の高さ、そして天性の称号によって、天才ドマ・ギンガイムは誕生したのだ。
「あの……ドマさん、こうやってお手伝いさせてもらってもいいですか?」
一緒に作業することで、剣作りにおける秘訣や心構えみたいなものをドマさんから学びたい。
でも、やっぱりお邪魔かな……?
「お、おう、そ、そうでしゅね、一族の掟で本来は他人と共同作業をしてはダメなんでしゅが……お前には炉に火を入れてもらいたいでしゅし、て、手伝うことを許可するでしゅ」
やったー! お許しが出たぞ!
ドマさんが伝説の剣を作る作業に立ち会えるなんて、本当に嬉しい。
……ん? なんかドマさんの顔が赤いな。さすがにちょっと暑いのかな?
とりあえず、お手伝い頑張るぞ!
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