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第7章 新国テンプルム
第372話 魔導国イオ① -Another side-
書籍4巻で少しストーリーを変更しましたので、ここから出てくる『サクヤ』というキャラを知らない方もいると思います。
もし気になる方は、『書籍未収録① 究極の称号編』を読んでいただければ幸いです。
***********************************
この世界イストリアの西――ユーリの国テンプルムから見て北西に位置する魔導国イオ。
その名の通り魔法がひときわ発展した国であり、魔導の研究においては、他の追随をまったく許さないほどである。
国民の多くが多種多様な魔法を使いこなし、それによって豊かな生活環境が保たれていた。
そして、高位の才能を持つ者たちで形成された魔導部隊の力は世界でも群を抜き、その軍事力は帝国に次ぐと言われている。
そのイオに、いきなり危機が訪れた。
「たっ、大変ですヘンデレック様っ! 謎の男4人が、王都正門を破壊してこの王城に迫っておりますっ!」
「な、なんだとっ!?」
魔導国イオ宰相ヘンデレックとその場に同席していた大臣たちは、定例会議中に飛び込んできた兵士の言葉に驚く。
「『魔導雷陣』は発動しなかったのか!?」
「そ、それが、門番の制止を振り切った時点で作動させたらしいのですが、報告では、その侵入者たちはものともせずに突破してきたとか」
世界一の魔導力を誇るイオでは、王都の入場門に強力な『侵入者撃退用魔導機』が設置してある。
『魔導雷陣』がそれで、命令に従わない侵入者を焼き尽くす効果があった。
その威力はSランク魔道士数十人分にも匹敵するはずだが、それを無傷で通り抜けたというのか!?
ヘンデレックは、かつてない緊急事態が起こったことを感じた。
同様に、それを察知した女性2人が椅子から立ち上がる。
「まさか……魔王軍の悪魔じゃないのかっ!? シェナは急いでサクヤ様に連絡してくれ! アタシは魔導兵団と一緒に侵入者を迎え撃ってくる! ヘンデレックはガイルウ国王陛下へ報告を頼む!」
「分かったわ姉さん、気を付けて!」
「む、承知した。では城の防衛は頼むぞ、マグナ!」
「任せとけっ!」
魔導国イオ出身の『ナンバーズ』――かつてユーリと共に迷宮に挑戦したベルニカ姉妹が、この事態に迅速に対応する。
ヘンデレックは、以前世界を我が物にしようとしたギュンターの次の宰相だ。
まだ40半ばと若いながらも、優れた判断力を持ち、そして人望も厚い。
そのヘンデレックが、イオ国王ガイルウ・クオジーンへと報告を急ぐ。
「陛下っ、何者かが我が王都へ侵入してきました! まだ確認されておりませんが、恐らく魔王軍の可能性が高いかと……」
「分かっておる。だが、来たのは悪魔ではない」
ヘンデレックが王の部屋に入ると、国王ガイルウはすでに異変には気付いていたようだった。
そして侵入者の正体についても、悪魔とは違う存在であることを察していた。
「魔王軍ではないと!? で、では、いったい誰が……?」
「分からぬ。ただ、これは悪魔の気配ではない。魔族や魔物でもなく、ましてや人間でもない。まったく新たな未知の存在だ」
イオの王族は、代々特殊な能力を受け継いでいく。
ただし、子が生まれると親の力は徐々に弱くなり、その受け継いだ子の能力が完全に覚醒すると、親の力はほぼ失われてしまう。
このガイルウ王も、かつては強大な召喚能力を持っていたが、娘であるサクヤが完全に覚醒したため、今ではその力は失われている。
ただ、気配を感知する能力だけは、まだ誰にも劣らぬほど鋭かった。
「危険な存在だ……我が軍の全力をもって迎え撃て! 『超魔導加速雷砲』の使用も許可する」
「はっ、仰せのままに!」
『超魔導加速雷砲』とは、魔導国イオがかねてから開発していた超破壊砲で、魔力を利用して高速で巨大金属球を撃ち出す魔導機である。
理論上では、あのディフェーザの守護神『憤怒の魔神』ですら、容易く破壊できるほどの威力を持つ。
あまりに危険なため、よほどのことがない限り使用するつもりはなかったが、ガイルウ王は今がそのときと判断したのだ。
まさか、『超魔導加速雷砲』を使うほどの相手が来るとは……射出の衝撃波で周辺にも大きな被害が出るため、ヘンデレックは王都民を緊急避難させることに。
マグナよ、魔導兵団よ、準備が整うまでなんとか持ち堪えてくれ……!
ヘンデレックは神に祈りを捧げた。
◇◇◇
「なんてヤツらだ、我らの攻撃魔法をこれだけ喰らいながら、まるでダメージを受けた様子がない!」
「人間ではないのか!?」
魔導国イオ王都中央の大通りを、王城に向かってまっすぐ歩き続ける侵入者たち。
そこに真っ先に駆け付けたイオの先発隊が、各々強力な攻撃魔法をもって迎え撃ったが、侵入者たちに効いた様子はなかった。
足止めすらできない状態に魔道士たちは動揺するが、そこへマグナたち本隊が到着する。
「よし、みんな配置に着いたな、即発動させるぞ! 『奪われし者の地獄』っ!」
マグナの号令に合わせ、数百人の魔道士たちが同時に結界魔法を放つ。
これは大勢の魔導兵団が一丸となって完成させる『複合連結魔法』で、かつてユーリたちも喰らったことのあるイオの秘奥義だ。
この結界内では敵の能力は大幅に制限されるうえ、逃げることすら許されない。
これでもうこの侵入者たちは無力だ……そう一安心した魔道士たちに、予想もしてなかった絶望が襲い掛かる。
「『超越者の加護』を持つ我らに、このような結界など……目障りだな!」
中肉中背の男が右手を振るうと、魔力を放出していた魔道士たちが弾き飛ばされ、それによって結界が解除されてしまったのだ。
「『奪われし者の地獄』を喰らいながら、こんな力が出せるのか!? まるでユーリみたいじゃないか!」
ベルニカ姉妹の姉マグナは、秘奥義の結界が通用しないことに驚く。
侵入者の正体――それは、『亜天使』となった『帝国神命十二騎士』だった。
中肉中背の男が序列9位のホビアルで、小太りの老人が序列10位のサンシオン、筋骨隆々の巨漢が序列11位のフエルサ、細身の長身が序列12位のレント――この4人が、皇帝の命を受けてイオ侵略にやって来たのである。
天使の細胞を移植した『亜天使』には『超越者の加護』という能力が備わっており、結界魔法や状態異常攻撃などを全て無効にすることができた。
なので、イオの結界魔法がいかに強力といえども、彼らには少しも影響がなかったのだ。
「お前たちはいったい何者だ!? 何故このイオに来た! 目的を言えっ!」
周りの魔道士を一歩後ろに下げたあと、マグナが前に進み出て、謎の侵入者たちに問い掛ける。
「我らは誇り高きグランディス帝国の神命12騎士だ。皇帝陛下の勅命により、我ら4人がこの魔導国イオをもらい受けに来た」
「帝国12騎士……? あの皇帝親衛隊か! いつかやってくるとは思っていたが、こんなに堂々と攻め入ってくるとは……!」
マグナはグランディス帝国が侵略しに来た可能性を考えないわけではなかったが、あまりにも常識外れな行動のため、思考から除外していた。
配下の兵を連れず、4人だけで来るのも普通ではない。
それに、強すぎる! 『帝国神命十二騎士』の噂は聞いてはいたが、これほど超人的な力があったとは……。
しかし、いくら強いとはいえ、相手が人間ならば充分勝ち目はある。
何せ、マグナはユーリたちと一緒に、数々の怪物たちを目の当たりにしたのだ。
アレに比べたら、人間が行う侵略などまだまだ絶望までには及ばない……と、自分を奮い立たせる。
「このオレは12騎士序列9位のホビアルという。一応今回の任務の指揮を預かっている。イオが素直に降伏するというなら、我らは何もしないことを約束しよう。だが、抵抗するというなら、従う気になるまでこの王都を破壊する」
「たった4人で来てずいぶん強気だな。この魔導国イオの力を見くびるなよ……魔導兵団っ、守護騎士の力をコイツらに思い知らせてやれっ!」
「お任せを! 天よりそそぐ聖なる光よ、守護騎士となりて我らを護りたまえっ、『栄光の守護天使』っ!」
魔導兵団たちが揃って詠唱を唱えると、眩しく輝く『光の騎士』が10体現れた。
これは魔力によって騎士を作りだし、それに戦わせることができる光魔法だ。
通常でもかなり強い騎士だが、イオの『複合連結魔法』によって、人間では到底勝つことができないほどに強化されている。
その無敵の騎士が10体、いっせいに『帝国神命十二騎士』たちに襲い掛かった。
「フン、『亜天使』のオレたち相手に、『守護天使』などとは笑わせる。もう少しオレたちの力を見せつけなくちゃならねーようだな」
そう言って腰の剣を抜いたのは、序列12位のレントだった。
彼は12騎士の中で一番の素早さがあり、そのスピードで一瞬のうちに10体の『光の騎士』を斬り捨てた。
そして、しつこく詠唱を続ける魔道士たちを、まとめて薙ぎ払いまくる。
なんとか死人は出なかったようだが、骨を砕かれたり身体の一部を斬り落とされたりと、魔導兵団には重傷者が続出する有り様だった。
「ぐあああああっ」
「み、みんな大丈夫かっ!? 魔導兵団が作り出した守護騎士たちが、まさかたった1人にやられるなんて……! それにこの速さは異常だ!」
マグナは、まるで視認できないレントの動きに驚愕する。
光の騎士でも倒せないのなら、もはや通常の攻撃は何一つ通用しないだろう。
ならば、強力な魔法で大ダメージを狙うしかない!
「魔導兵団、アタシにバフを掛けて、そして魔力を貸してくれ! 覚えたての超魔法でコイツらを叩きのめしてやる!」
その言葉により、魔導兵団はあらゆる強化魔法をマグナに放ち、そして各々の魔力もマグナへと集める。
制御可能ギリギリまで魔力を溜めたあと、マグナは称号の力を解放した。
「逆巻けっ『魔女の狂宴』! そして喰らえっ『大空埋め尽くす光剣の暴雨』っ!」
最大まで『魔力増幅』された状態で、自身の最強の魔法を撃ち放つ。
上空には巨大な光の剣がおびただしいほど大量に出現し、それがいっせいに侵入者4人へと襲い掛かった。
大きく追尾するため、このタイミングで発動すれば躱されるはずがない。
まさに必殺の一撃!
そう確信しながら敵の動きを見ると、12騎士たちはその場から微動だにしなかった。
絶望に足がすくんだか? いや、そんなヤツらではないはず!?
マグナはイヤな予感を振り払おうとするが、その不安は的中してしまう。
「おお、こりゃあ人間が撃つ魔法としちゃあかなり上出来な部類だ。耐えきれる生物はそうはいねえだろーな」
「ふむ、だが我らには効かぬな。名高いイオの魔導兵団といえどもこの程度か」
「ヒヒ、神の一族となった儂らが強すぎるだけじゃろう」
「これなら、オレ様1人でも充分だったぜ」
マグナの最強魔法を、4人の侵入者は日光浴でもするかのように、気持ち良さげに受けきったのだ。
「ありえない……これは人間の強さじゃない」
マグナは茫然と立ち尽くす。
イオの軍事力なら、たかが数人の人間程度、どんなヤツが来ようとも撃退できる――そう自信があったが、自分の考えが甘かったことを認識する。
強力なデバフ結界も、無敵の光の騎士も、自分の最大の魔法も効かないとなると、次の手が思い浮かばない。
もしもエーアストの神徒――超強力なスキルを持つ彼らが居れば、まだまだ打つ手は尽きなかったと思うが、あいにくイオには来ていなかった。
魔導国イオはエーアストから1番遠い位置にあるので、まだここまで活動の足が届いていなかったのだ。
こんなとき、あのユーリがいれば……。
マグナは、どんな怪物相手にも怯まなかった無敵の少年を思い浮かべる。
彼ならば、きっとこの4人も……。
いや、たとえユーリとて、4対1では分が悪く思える。
それほどの力を、彼ら『帝国神命十二騎士』から感じていた。
***********************************
この世界の簡単なマップを作りました。
目次の一番上に掲載しましたので、各国の位置確認などに使ってくださいませ。
もし気になる方は、『書籍未収録① 究極の称号編』を読んでいただければ幸いです。
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この世界イストリアの西――ユーリの国テンプルムから見て北西に位置する魔導国イオ。
その名の通り魔法がひときわ発展した国であり、魔導の研究においては、他の追随をまったく許さないほどである。
国民の多くが多種多様な魔法を使いこなし、それによって豊かな生活環境が保たれていた。
そして、高位の才能を持つ者たちで形成された魔導部隊の力は世界でも群を抜き、その軍事力は帝国に次ぐと言われている。
そのイオに、いきなり危機が訪れた。
「たっ、大変ですヘンデレック様っ! 謎の男4人が、王都正門を破壊してこの王城に迫っておりますっ!」
「な、なんだとっ!?」
魔導国イオ宰相ヘンデレックとその場に同席していた大臣たちは、定例会議中に飛び込んできた兵士の言葉に驚く。
「『魔導雷陣』は発動しなかったのか!?」
「そ、それが、門番の制止を振り切った時点で作動させたらしいのですが、報告では、その侵入者たちはものともせずに突破してきたとか」
世界一の魔導力を誇るイオでは、王都の入場門に強力な『侵入者撃退用魔導機』が設置してある。
『魔導雷陣』がそれで、命令に従わない侵入者を焼き尽くす効果があった。
その威力はSランク魔道士数十人分にも匹敵するはずだが、それを無傷で通り抜けたというのか!?
ヘンデレックは、かつてない緊急事態が起こったことを感じた。
同様に、それを察知した女性2人が椅子から立ち上がる。
「まさか……魔王軍の悪魔じゃないのかっ!? シェナは急いでサクヤ様に連絡してくれ! アタシは魔導兵団と一緒に侵入者を迎え撃ってくる! ヘンデレックはガイルウ国王陛下へ報告を頼む!」
「分かったわ姉さん、気を付けて!」
「む、承知した。では城の防衛は頼むぞ、マグナ!」
「任せとけっ!」
魔導国イオ出身の『ナンバーズ』――かつてユーリと共に迷宮に挑戦したベルニカ姉妹が、この事態に迅速に対応する。
ヘンデレックは、以前世界を我が物にしようとしたギュンターの次の宰相だ。
まだ40半ばと若いながらも、優れた判断力を持ち、そして人望も厚い。
そのヘンデレックが、イオ国王ガイルウ・クオジーンへと報告を急ぐ。
「陛下っ、何者かが我が王都へ侵入してきました! まだ確認されておりませんが、恐らく魔王軍の可能性が高いかと……」
「分かっておる。だが、来たのは悪魔ではない」
ヘンデレックが王の部屋に入ると、国王ガイルウはすでに異変には気付いていたようだった。
そして侵入者の正体についても、悪魔とは違う存在であることを察していた。
「魔王軍ではないと!? で、では、いったい誰が……?」
「分からぬ。ただ、これは悪魔の気配ではない。魔族や魔物でもなく、ましてや人間でもない。まったく新たな未知の存在だ」
イオの王族は、代々特殊な能力を受け継いでいく。
ただし、子が生まれると親の力は徐々に弱くなり、その受け継いだ子の能力が完全に覚醒すると、親の力はほぼ失われてしまう。
このガイルウ王も、かつては強大な召喚能力を持っていたが、娘であるサクヤが完全に覚醒したため、今ではその力は失われている。
ただ、気配を感知する能力だけは、まだ誰にも劣らぬほど鋭かった。
「危険な存在だ……我が軍の全力をもって迎え撃て! 『超魔導加速雷砲』の使用も許可する」
「はっ、仰せのままに!」
『超魔導加速雷砲』とは、魔導国イオがかねてから開発していた超破壊砲で、魔力を利用して高速で巨大金属球を撃ち出す魔導機である。
理論上では、あのディフェーザの守護神『憤怒の魔神』ですら、容易く破壊できるほどの威力を持つ。
あまりに危険なため、よほどのことがない限り使用するつもりはなかったが、ガイルウ王は今がそのときと判断したのだ。
まさか、『超魔導加速雷砲』を使うほどの相手が来るとは……射出の衝撃波で周辺にも大きな被害が出るため、ヘンデレックは王都民を緊急避難させることに。
マグナよ、魔導兵団よ、準備が整うまでなんとか持ち堪えてくれ……!
ヘンデレックは神に祈りを捧げた。
◇◇◇
「なんてヤツらだ、我らの攻撃魔法をこれだけ喰らいながら、まるでダメージを受けた様子がない!」
「人間ではないのか!?」
魔導国イオ王都中央の大通りを、王城に向かってまっすぐ歩き続ける侵入者たち。
そこに真っ先に駆け付けたイオの先発隊が、各々強力な攻撃魔法をもって迎え撃ったが、侵入者たちに効いた様子はなかった。
足止めすらできない状態に魔道士たちは動揺するが、そこへマグナたち本隊が到着する。
「よし、みんな配置に着いたな、即発動させるぞ! 『奪われし者の地獄』っ!」
マグナの号令に合わせ、数百人の魔道士たちが同時に結界魔法を放つ。
これは大勢の魔導兵団が一丸となって完成させる『複合連結魔法』で、かつてユーリたちも喰らったことのあるイオの秘奥義だ。
この結界内では敵の能力は大幅に制限されるうえ、逃げることすら許されない。
これでもうこの侵入者たちは無力だ……そう一安心した魔道士たちに、予想もしてなかった絶望が襲い掛かる。
「『超越者の加護』を持つ我らに、このような結界など……目障りだな!」
中肉中背の男が右手を振るうと、魔力を放出していた魔道士たちが弾き飛ばされ、それによって結界が解除されてしまったのだ。
「『奪われし者の地獄』を喰らいながら、こんな力が出せるのか!? まるでユーリみたいじゃないか!」
ベルニカ姉妹の姉マグナは、秘奥義の結界が通用しないことに驚く。
侵入者の正体――それは、『亜天使』となった『帝国神命十二騎士』だった。
中肉中背の男が序列9位のホビアルで、小太りの老人が序列10位のサンシオン、筋骨隆々の巨漢が序列11位のフエルサ、細身の長身が序列12位のレント――この4人が、皇帝の命を受けてイオ侵略にやって来たのである。
天使の細胞を移植した『亜天使』には『超越者の加護』という能力が備わっており、結界魔法や状態異常攻撃などを全て無効にすることができた。
なので、イオの結界魔法がいかに強力といえども、彼らには少しも影響がなかったのだ。
「お前たちはいったい何者だ!? 何故このイオに来た! 目的を言えっ!」
周りの魔道士を一歩後ろに下げたあと、マグナが前に進み出て、謎の侵入者たちに問い掛ける。
「我らは誇り高きグランディス帝国の神命12騎士だ。皇帝陛下の勅命により、我ら4人がこの魔導国イオをもらい受けに来た」
「帝国12騎士……? あの皇帝親衛隊か! いつかやってくるとは思っていたが、こんなに堂々と攻め入ってくるとは……!」
マグナはグランディス帝国が侵略しに来た可能性を考えないわけではなかったが、あまりにも常識外れな行動のため、思考から除外していた。
配下の兵を連れず、4人だけで来るのも普通ではない。
それに、強すぎる! 『帝国神命十二騎士』の噂は聞いてはいたが、これほど超人的な力があったとは……。
しかし、いくら強いとはいえ、相手が人間ならば充分勝ち目はある。
何せ、マグナはユーリたちと一緒に、数々の怪物たちを目の当たりにしたのだ。
アレに比べたら、人間が行う侵略などまだまだ絶望までには及ばない……と、自分を奮い立たせる。
「このオレは12騎士序列9位のホビアルという。一応今回の任務の指揮を預かっている。イオが素直に降伏するというなら、我らは何もしないことを約束しよう。だが、抵抗するというなら、従う気になるまでこの王都を破壊する」
「たった4人で来てずいぶん強気だな。この魔導国イオの力を見くびるなよ……魔導兵団っ、守護騎士の力をコイツらに思い知らせてやれっ!」
「お任せを! 天よりそそぐ聖なる光よ、守護騎士となりて我らを護りたまえっ、『栄光の守護天使』っ!」
魔導兵団たちが揃って詠唱を唱えると、眩しく輝く『光の騎士』が10体現れた。
これは魔力によって騎士を作りだし、それに戦わせることができる光魔法だ。
通常でもかなり強い騎士だが、イオの『複合連結魔法』によって、人間では到底勝つことができないほどに強化されている。
その無敵の騎士が10体、いっせいに『帝国神命十二騎士』たちに襲い掛かった。
「フン、『亜天使』のオレたち相手に、『守護天使』などとは笑わせる。もう少しオレたちの力を見せつけなくちゃならねーようだな」
そう言って腰の剣を抜いたのは、序列12位のレントだった。
彼は12騎士の中で一番の素早さがあり、そのスピードで一瞬のうちに10体の『光の騎士』を斬り捨てた。
そして、しつこく詠唱を続ける魔道士たちを、まとめて薙ぎ払いまくる。
なんとか死人は出なかったようだが、骨を砕かれたり身体の一部を斬り落とされたりと、魔導兵団には重傷者が続出する有り様だった。
「ぐあああああっ」
「み、みんな大丈夫かっ!? 魔導兵団が作り出した守護騎士たちが、まさかたった1人にやられるなんて……! それにこの速さは異常だ!」
マグナは、まるで視認できないレントの動きに驚愕する。
光の騎士でも倒せないのなら、もはや通常の攻撃は何一つ通用しないだろう。
ならば、強力な魔法で大ダメージを狙うしかない!
「魔導兵団、アタシにバフを掛けて、そして魔力を貸してくれ! 覚えたての超魔法でコイツらを叩きのめしてやる!」
その言葉により、魔導兵団はあらゆる強化魔法をマグナに放ち、そして各々の魔力もマグナへと集める。
制御可能ギリギリまで魔力を溜めたあと、マグナは称号の力を解放した。
「逆巻けっ『魔女の狂宴』! そして喰らえっ『大空埋め尽くす光剣の暴雨』っ!」
最大まで『魔力増幅』された状態で、自身の最強の魔法を撃ち放つ。
上空には巨大な光の剣がおびただしいほど大量に出現し、それがいっせいに侵入者4人へと襲い掛かった。
大きく追尾するため、このタイミングで発動すれば躱されるはずがない。
まさに必殺の一撃!
そう確信しながら敵の動きを見ると、12騎士たちはその場から微動だにしなかった。
絶望に足がすくんだか? いや、そんなヤツらではないはず!?
マグナはイヤな予感を振り払おうとするが、その不安は的中してしまう。
「おお、こりゃあ人間が撃つ魔法としちゃあかなり上出来な部類だ。耐えきれる生物はそうはいねえだろーな」
「ふむ、だが我らには効かぬな。名高いイオの魔導兵団といえどもこの程度か」
「ヒヒ、神の一族となった儂らが強すぎるだけじゃろう」
「これなら、オレ様1人でも充分だったぜ」
マグナの最強魔法を、4人の侵入者は日光浴でもするかのように、気持ち良さげに受けきったのだ。
「ありえない……これは人間の強さじゃない」
マグナは茫然と立ち尽くす。
イオの軍事力なら、たかが数人の人間程度、どんなヤツが来ようとも撃退できる――そう自信があったが、自分の考えが甘かったことを認識する。
強力なデバフ結界も、無敵の光の騎士も、自分の最大の魔法も効かないとなると、次の手が思い浮かばない。
もしもエーアストの神徒――超強力なスキルを持つ彼らが居れば、まだまだ打つ手は尽きなかったと思うが、あいにくイオには来ていなかった。
魔導国イオはエーアストから1番遠い位置にあるので、まだここまで活動の足が届いていなかったのだ。
こんなとき、あのユーリがいれば……。
マグナは、どんな怪物相手にも怯まなかった無敵の少年を思い浮かべる。
彼ならば、きっとこの4人も……。
いや、たとえユーリとて、4対1では分が悪く思える。
それほどの力を、彼ら『帝国神命十二騎士』から感じていた。
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この世界の簡単なマップを作りました。
目次の一番上に掲載しましたので、各国の位置確認などに使ってくださいませ。
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「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。