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第8章 英雄の育成
第384話 勘違い?
変なドチンピラさんを成敗したら、突然少年が飛び出してきて、僕に師匠になってほしいとお願いしてきた。
なんだこの展開は?
「ボクは……いえボクたちは、強い人を探していたんです。お願いですから、ボクたちの師匠になってください」
少年は両手を地に着けたまま、何度も必死に頭を下げている。
恐らく年齢は14、5歳ほどで髪は水色、前ツバのある帽子を目深く被り、紺色の半袖シャツにグレーの短パン姿の出で立ちだ。
身長は156㎝くらいと小柄であり、胸元には青いペンダントも着けていて、その華奢な身体と大きな瞳から、スカートだったら少女と見間違われてもおかしくないほどである。
というか顔立ちも整ってるし、美少女と言ってもいい。
うっ……フラウたちにシャルフ王と僕の仲を疑われたのがちょっとトラウマになってて、少年のことを美形と思っちゃうのがなんだか微妙な気分だ。
そんな趣味なんてないのに……。
「ね、ねえキミ、話を聞きたいからちょっと顔を上げて。師匠というのはいったいどういうことなのかな?」
「はい、実は……」
少年から詳しい話を聞いてみると、彼はいま英雄養成学院というところに通っている生徒とのこと。
そこは英雄となれるような冒険者を育成する学院で、講師によって行われる授業のほか、『メンターパートナー』という冒険者に弟子入りする制度があるんだとか。
優秀な冒険者を師匠としてつけることにより、授業以外でも独自で鍛錬して、能力を大きく伸ばすのが目的のようだ。
冒険者版の家庭教師ってところなのかな?
旅の途中で出会った冒険者たちが『学院』って言ってたけど、ひょっとしてこのことかも。
こんな制度のある学校は僕も初めて聞いたが、そもそもこの英雄養成学院ができたのがつい3年ほど前で、魔王復活に対抗するために急遽設立したんだそうだ。
だから、通常の学校よりも育成に大きく力を入れている。
そしてこの少年――サイファという名前らしいけど、学院では落ちこぼれで、しかも冒険者の知り合いもいないので、なかなか師匠となってくれる人が見つからなかったらしい。
正確には、何人かは師匠――つまり『メンターパートナー』を承諾してくれたようだけど、後日突然キャンセルされてしまったんだとか。
今日もあちこちで弟子入りを頼んだけど断られ、仕方なくトボトボと歩いていたら、さっきの場面に遭遇したとのこと。
そして僕の強さを見て、衝動的に飛び出してしまったらしい。
その気持ちに応えてあげたいけど……。
「あのねサイファ君、僕たちは旅行者なんだ。だから、もうすぐこのファーブラを離れちゃうんだよ。申し訳ないけどキミの師匠になってあげることは……」
「ここにいる間だけでも、いえ、せめて明日だけでもお願いします!」
「ええっ!? 明日だけやってもしょうがないんじゃ……」
「そんなことないです! 実は弟子入りの期限が明日までで、それまでに師匠となってもらえるパートナーを見つけられなかったら退学になっちゃうんです」
「そ、そうなの!?」
それはちょっと可哀想だな。
「なので、1日だけでいいからボクたちグループの師匠になってください。明日さえ切り抜けたら、あとは自分たちでなんとかします」
「あれ、いまグループって言った?」
「はい、1人の冒険者に最大4人まで弟子入りできますので、ボクの仲間2人も一緒に弟子入りさせていただけたら助かります」
そういやさっき、ボクたちの師匠になってと言ってたっけ。
うーん……よく分からないけど、1日だけなら人助けと思って協力してあげてもいいかな。
「分かったよ。僕でよかったら……」
「ちょっと待ってユー……ヒロ!」
なんだ?
成り行きを黙って見守っていたメジェールがズイと前に出て、僕の返事に待ったをかける。
「サイファ、アンタのいうことは分かった。でも1つだけ確認しておきたいのよね。そのアンタのグループ構成だけど、異性はいるの?」
メジェールの言葉に合わせるように、ほかのみんなも前に出てサイファ君を取り囲む。
その異様な迫力に、思わずサイファ君がたじろいでいる。
「え、ええっ!? そ、その、異性はいませんが……」
「ホントね?」
「は、はい、ウソじゃないです」
「……本当のようですわ」
「よし、なら許可するわ」
メジェールたちってば、そんなことでいたいけな少年を脅さなくても……。
ま、みんなの許可も出たし、これで安心して力になってあげられる。
「それで、師匠になっていただく報酬ですが……実はボクたち、全然お金がないんです」
「ああ、そんなことなんて気にしなくていいよ」
凄い真面目な子だな。まあ確かに、冒険者はただ働きなんてしないけど。
それで今まで断られたりキャンセルされたりしたのかもしれないな。
「で、でも、ご旅行の邪魔しちゃって申し訳なくて……金銭とは別の何かでお礼しますので、それで許してください」
「ああ、それなら身体で払えばいいんデスよ!」
フラウの突然の爆弾発言に、みんながサァーッとドン引く。
身体で払うって……まあ色々と解釈はあるけど、こういうときはそういう意味を指す場合が多い。
もしそうだとしたら、さすがの僕でも絶句だぞ。いったいナニ考えてんだ!?
「フ……フラウ、アンタって子は……」
「どうしたんデスか皆さん、お金がなかったら、身体で払うのは当然デスよね?」
「フラウ、お前自分がナニ言ってるか分かってんのか?」
「えっ、ソロルさん、こんなの常識デスよ?」
あ~分かった、フラウは以前借金で首が回らなかったとき、身体で払えと言われてたんだけど、その意味を未だに勘違いしたままなんだ!
メジェールたちもそのことに気付く。
「はぁ~アンタそんなことも知らないで190年も生きてきたなんて、逆に奇跡ね」
「わらわですら知っておるというのに」
「フラウはダーリンと出会えてよかったな。でなければ、今ごろきっと地獄の生活してたぞ」
「な、なんですか皆さん、ワタシをバカにしてマセンか!?」
「フラウ、お前がどれほどアホなのか、あとでゆっくり教えてやるよ」
みんなから呆れられて、フラウは不満そうにちょっとほほを膨らませる。
あのときの自分がどれほど崖っぷちだったか知らないほうが幸せと思うけど、まあ真相を知る頃合いかもね。
ちなみに、サイファ君も意味が分からなかったようで、慌てふためくみんなを見てキョトンとしている。
「まったく、ただでさえヒロは手を出してこないのに、変な趣味に目覚めでもしたらたまったもんじゃないわよ」
そういうこと言うのはやめてください。
想像すると本当にへこむので。
「ということでサイファ君、僕でよかったら力になるよ。僕はヒロ、Sランク冒険者だ」
「ありがとうございますヒロさん。あとヒロさんは師匠ですので、ボクのことは『サイファ』と呼び捨てにしてください」
「分かったよサイファ。じゃあ明日はよろしく」
とりあえず、明日の待ち合わせを決めてサイファは去っていった。
考えてみれば、その学院にナンバー0の子供がいるかもしれないから、ちょうどよかったかも。
堂々と中に入れるからね。優秀な子供たちを一気に確認できるチャンスだ。
ちなみに、その夜フラウは久々に気絶したらしい。みんなから身体で払うということの意味を教えてもらったからだ。
自分が当時どれほど窮地に立たされていたのか、今にしてようやく理解したフラウだった……。
***********************************
本日、『無限のスキルゲッター』コミカライズが連載開始となりました!
文章では表現不足だった部分や分かりづらかったところが上手にまとまっていて、本当に楽しく読みやすく仕上がってます。
1話以降もすでに読ませていただいてるんですが、愛しいキャラたちがどんどん出てきますので、作者としても掲載が待ち遠しくてたまらないです。
海産物先生が描く可愛いキャラクターたちを是非ご堪能ください☆
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「ボクは……いえボクたちは、強い人を探していたんです。お願いですから、ボクたちの師匠になってください」
少年は両手を地に着けたまま、何度も必死に頭を下げている。
恐らく年齢は14、5歳ほどで髪は水色、前ツバのある帽子を目深く被り、紺色の半袖シャツにグレーの短パン姿の出で立ちだ。
身長は156㎝くらいと小柄であり、胸元には青いペンダントも着けていて、その華奢な身体と大きな瞳から、スカートだったら少女と見間違われてもおかしくないほどである。
というか顔立ちも整ってるし、美少女と言ってもいい。
うっ……フラウたちにシャルフ王と僕の仲を疑われたのがちょっとトラウマになってて、少年のことを美形と思っちゃうのがなんだか微妙な気分だ。
そんな趣味なんてないのに……。
「ね、ねえキミ、話を聞きたいからちょっと顔を上げて。師匠というのはいったいどういうことなのかな?」
「はい、実は……」
少年から詳しい話を聞いてみると、彼はいま英雄養成学院というところに通っている生徒とのこと。
そこは英雄となれるような冒険者を育成する学院で、講師によって行われる授業のほか、『メンターパートナー』という冒険者に弟子入りする制度があるんだとか。
優秀な冒険者を師匠としてつけることにより、授業以外でも独自で鍛錬して、能力を大きく伸ばすのが目的のようだ。
冒険者版の家庭教師ってところなのかな?
旅の途中で出会った冒険者たちが『学院』って言ってたけど、ひょっとしてこのことかも。
こんな制度のある学校は僕も初めて聞いたが、そもそもこの英雄養成学院ができたのがつい3年ほど前で、魔王復活に対抗するために急遽設立したんだそうだ。
だから、通常の学校よりも育成に大きく力を入れている。
そしてこの少年――サイファという名前らしいけど、学院では落ちこぼれで、しかも冒険者の知り合いもいないので、なかなか師匠となってくれる人が見つからなかったらしい。
正確には、何人かは師匠――つまり『メンターパートナー』を承諾してくれたようだけど、後日突然キャンセルされてしまったんだとか。
今日もあちこちで弟子入りを頼んだけど断られ、仕方なくトボトボと歩いていたら、さっきの場面に遭遇したとのこと。
そして僕の強さを見て、衝動的に飛び出してしまったらしい。
その気持ちに応えてあげたいけど……。
「あのねサイファ君、僕たちは旅行者なんだ。だから、もうすぐこのファーブラを離れちゃうんだよ。申し訳ないけどキミの師匠になってあげることは……」
「ここにいる間だけでも、いえ、せめて明日だけでもお願いします!」
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「そんなことないです! 実は弟子入りの期限が明日までで、それまでに師匠となってもらえるパートナーを見つけられなかったら退学になっちゃうんです」
「そ、そうなの!?」
それはちょっと可哀想だな。
「なので、1日だけでいいからボクたちグループの師匠になってください。明日さえ切り抜けたら、あとは自分たちでなんとかします」
「あれ、いまグループって言った?」
「はい、1人の冒険者に最大4人まで弟子入りできますので、ボクの仲間2人も一緒に弟子入りさせていただけたら助かります」
そういやさっき、ボクたちの師匠になってと言ってたっけ。
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「分かったよ。僕でよかったら……」
「ちょっと待ってユー……ヒロ!」
なんだ?
成り行きを黙って見守っていたメジェールがズイと前に出て、僕の返事に待ったをかける。
「サイファ、アンタのいうことは分かった。でも1つだけ確認しておきたいのよね。そのアンタのグループ構成だけど、異性はいるの?」
メジェールの言葉に合わせるように、ほかのみんなも前に出てサイファ君を取り囲む。
その異様な迫力に、思わずサイファ君がたじろいでいる。
「え、ええっ!? そ、その、異性はいませんが……」
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「は、はい、ウソじゃないです」
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「ああ、そんなことなんて気にしなくていいよ」
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あのときの自分がどれほど崖っぷちだったか知らないほうが幸せと思うけど、まあ真相を知る頃合いかもね。
ちなみに、サイファ君も意味が分からなかったようで、慌てふためくみんなを見てキョトンとしている。
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「ということでサイファ君、僕でよかったら力になるよ。僕はヒロ、Sランク冒険者だ」
「ありがとうございますヒロさん。あとヒロさんは師匠ですので、ボクのことは『サイファ』と呼び捨てにしてください」
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自分が当時どれほど窮地に立たされていたのか、今にしてようやく理解したフラウだった……。
***********************************
本日、『無限のスキルゲッター』コミカライズが連載開始となりました!
文章では表現不足だった部分や分かりづらかったところが上手にまとまっていて、本当に楽しく読みやすく仕上がってます。
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