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悩みから数年後 2
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ヴァレンもミゼアスも、声を発した見習いを見る。その子は唇を尖らせて不満げな様子だった。
「ヴァレン兄さんは、ミゼアス兄さんと手を繋いでいたんですか?」
「え? ああ、うん」
鋭い口調で詰問され、ヴァレンは戸惑いがちに頷いた。
「ずるいです! 僕たちはミゼアス兄さんと手を繋いで買い物になんて、行ったことがありません」
「……そういえば、そうです。ずるいです」
「僕たちだって、ミゼアス兄さんと手を繋ぎたいです! 繋いでください!」
見習い三人が口々に抗議してくる。
「……僕の手は三本もないよ」
呆れたようにミゼアスが呟く。
「じゃあ、順番で! 二人ずつなら大丈夫ですよね」
「うん……」
見習いたちの気迫に、ミゼアスもやや引き気味だ。
「よし、順番を決めよう」
「現在の貸し借り状況は?」
「えっと、確か……」
見習いたちは三人で何やら話し合いを始めた。よくわからないが、とりあえず平和的に取り決めをしているようだ。放っておいてもよいだろう。
「……あー、大変ですね」
ヴァレンは苦笑してミゼアスに声をかける。
「……きみのときは、きみにかかりっきりだったからね。でも、あのときのほうが大変だったよ」
ミゼアスも苦笑して答える。
「それは申し訳ありません。それにしても、今は見習いの子たちと手を繋いでいないんですね」
「そうだね。きみは特別だったからね」
意味ありげに笑うミゼアス。
「それってどういう意味か、聞いてもいいですか?」
ヴァレンが尋ねると、ミゼアスが遠い目をして宙を仰いだ。
「……今の子たちは、突然消えて猫と一緒に鳥を捕まえようとしていたり、海が呼んでいると駆け出していってわけのわからない生き物を捕まえてきたりしないからね」
疲れたような声でミゼアスは言葉を紡ぐ。
まずいな、と思ってヴァレンは視線をそらした。
「きみと手を繋いでいたのは、逃走防止のためだよ。お腹が空けば帰ってくるとはいえ、あまり野放しにしていられなかったからね……」
「ヴァレン兄さんは、ミゼアス兄さんと手を繋いでいたんですか?」
「え? ああ、うん」
鋭い口調で詰問され、ヴァレンは戸惑いがちに頷いた。
「ずるいです! 僕たちはミゼアス兄さんと手を繋いで買い物になんて、行ったことがありません」
「……そういえば、そうです。ずるいです」
「僕たちだって、ミゼアス兄さんと手を繋ぎたいです! 繋いでください!」
見習い三人が口々に抗議してくる。
「……僕の手は三本もないよ」
呆れたようにミゼアスが呟く。
「じゃあ、順番で! 二人ずつなら大丈夫ですよね」
「うん……」
見習いたちの気迫に、ミゼアスもやや引き気味だ。
「よし、順番を決めよう」
「現在の貸し借り状況は?」
「えっと、確か……」
見習いたちは三人で何やら話し合いを始めた。よくわからないが、とりあえず平和的に取り決めをしているようだ。放っておいてもよいだろう。
「……あー、大変ですね」
ヴァレンは苦笑してミゼアスに声をかける。
「……きみのときは、きみにかかりっきりだったからね。でも、あのときのほうが大変だったよ」
ミゼアスも苦笑して答える。
「それは申し訳ありません。それにしても、今は見習いの子たちと手を繋いでいないんですね」
「そうだね。きみは特別だったからね」
意味ありげに笑うミゼアス。
「それってどういう意味か、聞いてもいいですか?」
ヴァレンが尋ねると、ミゼアスが遠い目をして宙を仰いだ。
「……今の子たちは、突然消えて猫と一緒に鳥を捕まえようとしていたり、海が呼んでいると駆け出していってわけのわからない生き物を捕まえてきたりしないからね」
疲れたような声でミゼアスは言葉を紡ぐ。
まずいな、と思ってヴァレンは視線をそらした。
「きみと手を繋いでいたのは、逃走防止のためだよ。お腹が空けば帰ってくるとはいえ、あまり野放しにしていられなかったからね……」
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