不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

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有効生物ヴァレン 2

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 ミゼアスはヴァレンを連れて自室に戻ってきた。
 ヴァレンを座らせて、温かいお茶を淹れてやる。
 ずっと無言のまま俯いていたヴァレンは、お茶を一口含んで息を吐き出した。

「ごめんなさい、ミゼアス兄さん……」

 ぼそり、とヴァレンが口を開く。

「僕は構わないよ。それよりも、何か嫌なことでもされたのかい? 何があったのか、僕に話してくれないかな」

 ミゼアスは優しく声をかける。
 考えてみれば、ヴァレンは客を取ること自体を嫌がっているようには思えない。だとすれば、客に何か嫌なことをされた可能性が高いだろう。
 この店の客層はかなり良い。店に出たての子に対しては、相当に甘くもある。上手くできなくても、怒るようなことはない。失敗も含めて初々しさを楽しむくらい、余裕のある客ばかりだ。

 それなのに、ヴァレンを泣かせるくらいひどい客がいたというのだろうか。
 もし、そうだとすれば、その客には制裁を与えてやらねばならない。五花の権限をもって、可愛い弟分を泣かせた罪を償わせよう。

「……美味しくなかったんです」

「はい?」

 考えをめぐらせていたミゼアスは、ヴァレンの言葉が理解できずに間抜けな声を漏らす。
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