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第46話 無慈悲な一撃
「イ、イザベラ。とても……美しいよ。でも、君にはそんな重い鎖は……似合わない」
ギルバートが、震える声で言った。
(……ん? この子、何を言っているの?)
イザベラは一瞬「は?」という顔をした。最高の気分で自分の美しさを自慢したかったのに、見当違いの言葉が返ってきたからだ。
「イザベラ。僕はもう、待てないんだ」
ギルバートは周囲の目を気にすることなく、ズイッと彼女に近づくとその白い手を取った。
「ちょ、ちょっと、ギルバート!? こんなところで、何をしているの!?」
「君の心は僕のところにある。それを、今ここで証明してほしい! あんな男ではなく、僕の手を取って、一緒にここから逃げると言ってくれ!」
ギルバートの悲痛な叫びに、周囲の貴族たちが「なんだなんだ」とざわめき始めた。
イザベラの顔色が一気に青ざめる。
彼女はギルバートとスリルのある火遊びを楽しんでいただけで、こんな公衆の面前で不倫を暴露されることなど微塵も望んでいなかったのだ。
「や、やめなさい! 手を離して! 誰か見ているわ!」
「見せつければいい! 僕たちの愛は、誰にも隠す必要なんてないんだ! ねえ、イザベラ、僕を愛していると言ってくれ! 君を愛しているのは、クライドなんかじゃない、僕なんだと!」
ギルバートの必死の懇願。
「ああ、なんてロマンチックなの!」
それを少し離れた場所から見ていた擁護派のララたちは、両手で頬を押さえ涙ぐんですらいた。完全に現実が見えていない。
しかし、当のイザベラにとっては、これは悪夢以外の何物でもなかった。
「離してってば!!」
「イザベラ、愛しているんだ!」
「やめなさい!! この……馬鹿野郎!!」
パシィィィッ!!
静まり返りつつあった大広間に、鋭い破裂音が響き渡った。イザベラが、ギルバートの頬を思い切り平手打ちしたのだ。
「……え?」
ギルバートは、頬を押さえながら呆然とイザベラを見つめた。擁護派のララたちも、予想外の展開に息を呑んで硬直している。
「気安く触らないでちょうだい! アークライト公爵夫人である私に向かって、なんて『無礼な態度』なの! 身の程を弁えなさい! あなたのようなただの学生と、私が愛し合っているですって!? 冗談も休み休み言いなさい!」
イザベラは、完璧に計算された怒れる貞淑な妻の演技を打ち込んできた。
自分の身を守るためなら、昨日まで愛を囁いていた男でも平気で切り捨てる。それが、彼女の恐るべき生存本能だった。
「イ……イザ、ベラ……? 嘘だろ……? 君は、僕に……」
「黙りなさい! 少し優しくしてあげたからって、『勘違い』しないでちょうだい! 私には、愛する夫がいるのよ!」
彼女の冷たい言葉が、ギルバートの胸に深く突き刺さる。
『お姉様が愛しているのは、義兄様だけですわ』
アリーナが温室で言っていた言葉が、ギルバートの脳内でリフレインする。
ギルバートが、震える声で言った。
(……ん? この子、何を言っているの?)
イザベラは一瞬「は?」という顔をした。最高の気分で自分の美しさを自慢したかったのに、見当違いの言葉が返ってきたからだ。
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「や、やめなさい! 手を離して! 誰か見ているわ!」
「見せつければいい! 僕たちの愛は、誰にも隠す必要なんてないんだ! ねえ、イザベラ、僕を愛していると言ってくれ! 君を愛しているのは、クライドなんかじゃない、僕なんだと!」
ギルバートの必死の懇願。
「ああ、なんてロマンチックなの!」
それを少し離れた場所から見ていた擁護派のララたちは、両手で頬を押さえ涙ぐんですらいた。完全に現実が見えていない。
しかし、当のイザベラにとっては、これは悪夢以外の何物でもなかった。
「離してってば!!」
「イザベラ、愛しているんだ!」
「やめなさい!! この……馬鹿野郎!!」
パシィィィッ!!
静まり返りつつあった大広間に、鋭い破裂音が響き渡った。イザベラが、ギルバートの頬を思い切り平手打ちしたのだ。
「……え?」
ギルバートは、頬を押さえながら呆然とイザベラを見つめた。擁護派のララたちも、予想外の展開に息を呑んで硬直している。
「気安く触らないでちょうだい! アークライト公爵夫人である私に向かって、なんて『無礼な態度』なの! 身の程を弁えなさい! あなたのようなただの学生と、私が愛し合っているですって!? 冗談も休み休み言いなさい!」
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