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第二章

やり場のない怒り ※クラウス視点

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 リディアにプレゼントしたネックレスは、彼女によく似合っていた。渡して以来、毎日着けてくれている。強引にプレゼントしたから少し戸惑っていたが、喜んでくれたようだ。

(リディアが少しでも喜んでくれたなら、それでいい。彼女にはもっと笑っていてほしい)

 彼女には、あんな派手なネックレスは似合わない。
 彼女の服装に不釣り合いな主張の強いネックレスは、おそらく王族から貰ったものだ。罪滅ぼしか、手切れ金代わりだったのだろう。

 リディアには聖女だった頃のことは忘れて、穏やかに暮らしてほしい。そう願わずにはいられない。
 だから、新しいネックレスをプレゼントしたんだ。

(どうか彼女が嫌な記憶をネックレスとともにしまい込んで、自分の生活を取り戻せますように……)

 


 彼女と出会えたのは、本当に偶然だった。森で薬草を採取した帰り、いつもの発作が起こったのだ。

(マズイな……今日持ってきた薬はさっき飲みきってしまった)

 父さんからは薬を多めに持っていけと言われていたのに、荷物になるのが嫌で少ししか持ってきていなかった。

 立っていられなくなり、うずくまっていたところに彼女が現れたのだ。
 その時は意識がぼんやりとしていて、彼女が天使に見えた。

(あぁ、もうすぐ死ぬのか……。天使が迎えに来てくれるなら悪くない)

 そう思っていたのに、彼女は僕の発作を止めるだけでなく、原因である痣まで消し去ってしまった。

 彼女がいなければ死んでいたかもしれない。まさに命の恩人だ。





 リディアが森の方角から来たことも、力のこともを隠したがるのも、あまり気にならなかった。誰にでも秘密があるものだ。最初は深入りするつもりもなかった。

 だが僕ら一族の話を知っていたとなれば、話は別だ。森の妖精たちが彼女を受け入れたのも興味深い。彼女は一体何者なんだ?

 話している最中、常に申し訳なさそうな彼女は、とても悪人には見えなかった。
 まさかゴーシュラン王国の聖女だったとは……。聖女ともなれば、納得がいく。

(だが……父さんの推測が正しければ、聖女の力とは、何と危険なものなんだ!)

 ゴーシュラン王国は、その事実を知っていて利用しているのか? 寿命を削って国を守らせるだなんて、そんな非道なこと……!

 たが王国の非道さは、そんなものではなかった。
 罪を着せて追放だと?今まで国のために尽くしていた聖女に対してなんという仕打ちだ!

 リディアの話を聞いたとき、怒りで我を忘れそうだった。

「クラウス、そのこぶしを緩めてください。貴方がそこまで怒ってくださるのは嬉しいですが、手が痛くなってしまいますよ」

(こんなにも心優しいリディアに罪を着せたのは、一体誰なんだ?)

 彼女には言わなかったが、絶対に見つけ出してやると心に決めた。
 


 
 リディアの話には、父さんも少し考え込んでいた。隣国の王族争いに関わることかもしれない。今回の件について、背後関係が気になるのだろう。

「クラウス、彼女はまた危険に晒される可能性が高い。彼女に罪を被せた人物は、彼女に死んでほしかったようだしな。彼女がお前を助けたように、今度は我々が彼女を助けよう。彼女と出会えたのは運命かもしれないな……」

「もちろんです。リディアことは絶対に守ります」

 父さんの言うように、運命なのだろう。絶対に彼女を助けると心に誓った。
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