生産スキルで国作り! 領民0の土地を押し付けられた俺、最強国家を作り上げる

未来人A

文字の大きさ
32 / 68
連載

第82話 賢者

しおりを挟む
 俺は依頼を受ける。

 まず試験用ダンジョンで作成した、低級ホムンクルスたちに薬草集めなどの、素材を集める系の依頼を任せる。

 薬草を集める依頼と、プラムの実という危険地域に生えている、香水の材料になる実を集める依頼があるので、それを受けた。
 この二つはどちらも締め切りが、三十日後で割と余裕でやれる。

 そして、もう一つ自分で行う依頼は、賢者シューシュの護衛だ。

 依頼が書かれた紙を受付に渡した。

「薬草とプラムの実は集めた後は、依頼人ではなく俺に持ってくるんだ。依頼人へは俺が届ける。報酬も前払いで貰っているから、渡した時点で払ってやるから安心しろ。護衛に関しては、依頼紙に依頼人がいる場所が書いてあるから、そこに向かえ。詳しい話は直接聞くんだな」
「分かりました」

 説明を聞いた後、俺は低級ホムンクルスに命令して、集めに行かせた。
 集め終わったら、冒険者ギルドに行ってそこで俺が戻ってくるまで待機してもらう。

 拠点から連れてきた中級ホムンクルスは、連絡用なので俺の近くに置いておく。

 俺は賢者シューシュの場所を確認しながら向かった。

 フラメリウムの南西にポツンと一軒家があるようだが、そこに賢者シューシュはいるようだ。距離は三キロくらいか。

 俺は、ベルフェ、レヴィ、中級ホムンクルスと共に、賢者シューシュの住む家へと向かった。


 〇


「あった。ここか」

 レンガ造りの家を発見した。

 それほど大きな家ではない。

 しかし、なぜわざわざ町の外れに住んでいるのだろうか。

 俺は玄関に向かい、誰かいるのか声をかけてみる。

「冒険者なんですけど、依頼を見てきましたー」

 大声で言ってみたが反応が無い。

 留守なのだろうか?

 寝てるだけなのかもしれないし、俺は扉をノックしてもう一度声をかける。

「いませんかー!?」

 すると、

「うるさい! 我の眠りを邪魔するのは誰だ!」

 中から高い女性の声が聞こえてきた。

「依頼を見てきたんですけど、冒険者です!」
「冒険者ぁ……あーそういえば……」

 家の中から足音が聞こえて、扉が開いた。

 ボサボサの白い髪で、目の下にくまがある不健康そうな印象の女性が出てきた。
 少し汚れている白いガウンを羽織っている。

「入れ」

 そう促されたので、俺たちは家の中に入った。

「あなたがシューシュさんですか?」
「そうだ。我が賢者シューシュ・トレンスだ」
「俺はゼンジです。後ろの、えーと、大きいのがベルフェで、小さいのがレヴィです」
「あまり強そうじゃない奴らが来たな。まあ、アイアンランクだしこんなもんか」

 俺とベルフェと、レヴィを見て女はそう言った。

 見た目だけなら、俺は目つきの悪い体格の悪い男だし、ベルフェはやる気なさそうだし、レヴィは子供にしか見えないし、強そうには見えない。

「……って……それ、ホムンクルスではないか! しかも中級!」

 連れてきた中級ホムンクルスに、シューシュの興味が注がれる。

「これ、お前が作ったのか?」
「はい」
「何と。優れた錬金術師のようだな。興味があるぞ。解剖していいか?」
「え? だ、駄目ですよ!」

 いきなりメスを取り出して、とんでもないことを言いだした。
 通信用はこいつ一体しかいないので、解剖させるわけにはいかない。

「じゃあ、構造を教えてくれ。どうやって作った」
「構造?」

 生産スキルで作ったので、構造なんて知っているわけがない。
 俺は正直に答える。

「知りません」
「おい、ゼンジと言ったか。我は決して悪用したり、商用したりするつもりで、聞いているわけではない。純粋に知識を得たいから聞いているのだ」
「あの、本当に知らないんです」
「そんな訳があるか! 自分で作っておいて構造を知らんわけが無いだろう!」

 ごもっともな意見であるが、スキルを使って作ったんだからな。
 ここは正直にスキルを使ったと説明するか。

「知らないのは本当です。俺はスキ……」
「いいか。世の中には知識という者を資産のように扱い、秘密にして利用する輩が大勢いる。だがそれは明確に間違っている行動だ。なぜならば知識というものは、ほかの知識と合わさりあい、新しい知識を生み出していく。知識の共有こそが世界を発展させる最善の方法であるのだ」

 俺が説明しようとすると、マシンガンのように早口で説得してきたので、こちらから話すタイミングがなかった。

「それはごもっともかもしれませんが、俺は知らないんです。だって、これはスキルで……」
「っち……強欲な奴だ。もうよい」

 この女、人の話を最後まで聞くという事を知らないらしいな。
 なんか何言っても、届きそうにないので説明は諦めた。

「それで強欲な冒険者よ。我が出した依頼の詳細を聞きに来たのだな?」
「はいそうです。あとその呼び方やめてください」
「我は見ての通り賢者である。ここより西にルーシアス遺跡という場所があるのだが、そこに行きたい」

 見ての通り賢者、ってのは正直分からない。
 遺跡に行くというのは知っていたが、なぜ行くのだろうか。どんな遺跡なのだろうか。俺は尋ねる。

「ルーシアス遺跡ってどんな場所なんですか? なぜ行くんですか?」
「アンデット系のモンスターがかなりいる場所だ。元々は我と同じ賢者の研究施設であったようだ。知識を得るには最適の場所であろう」

 なんかありそうだから、調査するってことか。

「ところで賢者って魔法とか使えるイメージなんですが、護衛が必要なんですか?」
「魔法? 魔法は魔法が使えるものが使うもので、賢者が使うものではないぞ。我は使えん」
「そうなんですか。じゃあ、賢者って何なんですか?」
「そんなことも知らんのか貴様は。賢者とは、知識が豊富であると認められたものが入れる、賢者ギルドに所属している者の事を言う。賢者ギルドでは先ほど我が言った、知識の共有が頻繁に行われる」

 凄い魔法使いの事だと思っていたが、どっちかというと学者のような立場の人みたいだな。まあ、賢者が魔法使うって完全にゲームで得たイメージなんで、本来の意味に近いかもしれない。賢い者で賢者だからな。

「賢者ギルドへの貢献が認められると、多額の金が貰えるようになる。我は金のために賢者になったのではないが、それでも金がなければ、研究も実験も出来んからな。ちょうど遺跡の話を聞いたので、いい機会だと思いなけなしの金を使って冒険者ギルドへ依頼を出したのだ」

 大体事情は呑み込めた。

 まあ、俺のやることは遺跡で護衛ってのには変わりないけど、アンデット系のモンスターってのが気になるな。
 攻撃が効くのかな? そもそも俺幽霊とか苦手なんですけど。
 ここまで来た以上、断るわけにもいかないので、何とかするしかないか。

「依頼ですが、頑張って遂行します。いつ出発しますか?」
「準備はすでに完了している。ついてこい」
「今から行くんですか?」
「問題があるか?」
「いえ、今から行っても大丈夫です」

 俺の方もある程度準備は出来ているから、今から行っても構いはしないけど、ちょっと驚いたな。

 シューシュは部屋に置いてあった、ボロボロのリュックを背負う。

「では行くぞ。遺跡まで案内するからついてこい」

 俺たちはシューシュの案内で、遺跡まで向かった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。