35 / 68
連載
第85話 アンデッド
しおりを挟む
もう一度言うが、俺はアンデットというか、お化けとか幽霊の類は苦手だ。
こういうゾンビなんか特に苦手である。
だから、びっくりしすぎて、声も上げる間もなく腰を抜かしても、おかしくはないのだ。
「マスター!」
「ゼンジ様!」
俺が腰を抜かしている間、レヴィとベルフェが前に出てきて、ゾンビどもを退治していく。
物凄くあっさりと倒していった。強さ自体はゴブリンとあんまり変わらないようだ。こんなにビビる必要なかったようだな……
「ふん、腰を抜かすとは。情けないな」
後ろからシューシュが俺を罵倒する。
確かに今の俺は情けないが……
シューシュも俺と同じく腰を抜かして、ブルブル震えながらへたりこんでいた。
「シューシュさんには言われたくないのですが」
「こ、これはリビングデッドどもにビビったのではない。貴様の情けなさに驚いて、腰を抜かしたのだ」
「あまりにも無理がある言い訳だ!」
そのあと、何とか立ち上がる。
シューシュは立ち上がるのに、少し時間がかかった。
改めてゾンビを見てみると、正直グロい。
ベルフェとレヴィが再起不能にしたことで、よりグロい姿になっている。
てか、よく考えたらこれ人間の死体なんじゃないか?
ゴブリンの死体なら平気になってきたが、人間は……
か、考えないようにしよう。
このゾンビは人間の死体が動いているのではなく、単にこういう生物なんだ。きっとそうだ。
先ほどまで腰を抜かしていたシューシュが、ゾンビの死体……残骸と言った方がいいか、に近付いていった。
そして、興味深そうに観察を始める。
「リビングデッド……やはり話は本当だったか。ゼンジ、リビングデッドが出来る要因を知っているか?」
リビングデッドって確かゾンビと似たような、動く死体のことを言うんだったよな。
「知りませんけど。あの怖いんじゃないんですか?」
「動かないなら怯える必要は……我は最初から怯えてなどいない」
めちゃくちゃ強がっている。
「リビングデッドが発生する要因は、主に二つだ。闇魔法による魔法、それか屍術師という、錬金術師から派生した、屍を弄り動かす術を使う連中の仕業だ。自然発生は絶対にしない」
「アナホムが作ったんですか?」
「だろうな。このリビングデッドを見る限り、魔法を使った痕跡はない。となれば、屍術によるものと考えて間違いないだろう。アナホムは屍術を研究して、人間を生き返らせようとしたのだろうな」
「となると、ここの遺跡にある知識は屍術に関するものなのでしょうか?」
屍術の知識ってのが、どのくらい価値があるものだろうか? 一般人にはあんまり役に立ちそうにないが。
「屍術の知識でも必要と言えば必要だ。屍術師のように後ろ暗い研究をしている奴らは、外部に情報を漏らさんからな。ただ出来ればほかの知識も欲しいな。最終的に屍術に到達しただけで、しれ以前に色んな研究をしていたかもしれんし、屍術に関する研究結果だけがあるとは限らんだろう」
シューシュは冷静に分析した。
「あの、ところでこの死体は、元は生きていた人間だったのでしょうか?」
「何を当たり前のこと聞いてる」
やっぱそうなんだな……
なるべく視界には入れないようにしておこう。直視したら吐いてしまうかもしれん。
しかし、シューシュは平然と見てるが、よく見れるな。
平穏な日本と、異世界ではグロに対する耐性が、全く違うのだろうか。それとも、死体の解剖をしたことがあったりするのだろうか。
すると突然、動かなくなったと思われたリビングデッドの残骸が、がたがたと動き始めた。
「ひゃあああ!!」
可愛い悲鳴を上げて、シューシュは後退して、俺にしがみついてきた。
リビングデッドの残骸は震えただけで、再び立ち上がって襲ってくるようなことはなかった。
「大丈夫のようですよ。しかし、意外と可愛い悲鳴を……」
「今のは我の悲鳴ではない! あとしがみついたのも、腰抜けの貴様が怯えていないか心配になったからだからな!」
相変わらず強がりまくっているが、なんか可愛く見えてきた。
「マスターにしがみつくな。しがみつくなら、ボケ女にしろ」
「は、はい……」
レヴィの迫力に押されて、シューシュは俺から離れてベルフェにしがみつきにいった。どうも、レヴィの事怖がってるみたいだな。
それから遺跡の中の探索を続ける。
リビングデッドは結構出てきた。
俺は何回か出てきたら、多少は慣れてきた。
それでも、出てくるときは心臓が飛び跳ねるくらい早く動くが、天使のマリオネットを使って戦闘に参加するくらいは出来る。
ちなみにシューシュは、まだ腰が抜けるようだ。
この人を守りながら進むのは、少々難易度が高いかもしれない。
遺跡を探索すると、ベッドがたくさんある部屋にたどり着いた。
「いったん休憩しよう……」
グロッキーな様子のシューシュがそう言った。
こんなところで寝れるのか気になるが、まあ、疲れているし休憩は必要だろう。
「そうしますか」
「決まりだ……」
シューシュは何の躊躇もなくベッドに寝ころがった。
抵抗感とかないようだな。
いつの間にかベルフェもベッドに寝ていびきをかきだした。こいつはベッドを見たら寝なきゃ気が済まないようだ。
俺は寝るのは抵抗があったので、座るだけにした。ベッドに腰を掛ける。
カラン。
座った瞬間、変な音が鳴り響いた。
何かを確認する。
骨だった。
たぶん人間の骨。
速攻で立ち上がって、別のベッドを探す。
今度は念入りに骨が無いと確認して、座った。
俺の隣にレヴィが当たり前のように腰を掛ける。
びっくりした……骸骨があるなんて……
ここどういう場所なんだろ。死体を置くところとか?
仮にそうなら、骸骨がなくともとんでもない場所に、座っていることになるが。
あまり深く考えないでおこう。
「何でしょうか? ゼンジ様に御用でしょうか」
いきなり中級ホムンクルスの声が聞こえた。
「私とお話ですか? 残念ながら私はホムンクルスですので、大したお話は出来ません。ご容赦ください」
……会話相手の声が聞こえないというか……え? てかまじで誰と話してんの?
シューシュとベルフェは寝てるし、レヴィは隣だよね。
嫌な予感を感じて、中級ホムンクルスのいる場所を見る。
そこには透けている、足のない女性の姿があった。
こういうゾンビなんか特に苦手である。
だから、びっくりしすぎて、声も上げる間もなく腰を抜かしても、おかしくはないのだ。
「マスター!」
「ゼンジ様!」
俺が腰を抜かしている間、レヴィとベルフェが前に出てきて、ゾンビどもを退治していく。
物凄くあっさりと倒していった。強さ自体はゴブリンとあんまり変わらないようだ。こんなにビビる必要なかったようだな……
「ふん、腰を抜かすとは。情けないな」
後ろからシューシュが俺を罵倒する。
確かに今の俺は情けないが……
シューシュも俺と同じく腰を抜かして、ブルブル震えながらへたりこんでいた。
「シューシュさんには言われたくないのですが」
「こ、これはリビングデッドどもにビビったのではない。貴様の情けなさに驚いて、腰を抜かしたのだ」
「あまりにも無理がある言い訳だ!」
そのあと、何とか立ち上がる。
シューシュは立ち上がるのに、少し時間がかかった。
改めてゾンビを見てみると、正直グロい。
ベルフェとレヴィが再起不能にしたことで、よりグロい姿になっている。
てか、よく考えたらこれ人間の死体なんじゃないか?
ゴブリンの死体なら平気になってきたが、人間は……
か、考えないようにしよう。
このゾンビは人間の死体が動いているのではなく、単にこういう生物なんだ。きっとそうだ。
先ほどまで腰を抜かしていたシューシュが、ゾンビの死体……残骸と言った方がいいか、に近付いていった。
そして、興味深そうに観察を始める。
「リビングデッド……やはり話は本当だったか。ゼンジ、リビングデッドが出来る要因を知っているか?」
リビングデッドって確かゾンビと似たような、動く死体のことを言うんだったよな。
「知りませんけど。あの怖いんじゃないんですか?」
「動かないなら怯える必要は……我は最初から怯えてなどいない」
めちゃくちゃ強がっている。
「リビングデッドが発生する要因は、主に二つだ。闇魔法による魔法、それか屍術師という、錬金術師から派生した、屍を弄り動かす術を使う連中の仕業だ。自然発生は絶対にしない」
「アナホムが作ったんですか?」
「だろうな。このリビングデッドを見る限り、魔法を使った痕跡はない。となれば、屍術によるものと考えて間違いないだろう。アナホムは屍術を研究して、人間を生き返らせようとしたのだろうな」
「となると、ここの遺跡にある知識は屍術に関するものなのでしょうか?」
屍術の知識ってのが、どのくらい価値があるものだろうか? 一般人にはあんまり役に立ちそうにないが。
「屍術の知識でも必要と言えば必要だ。屍術師のように後ろ暗い研究をしている奴らは、外部に情報を漏らさんからな。ただ出来ればほかの知識も欲しいな。最終的に屍術に到達しただけで、しれ以前に色んな研究をしていたかもしれんし、屍術に関する研究結果だけがあるとは限らんだろう」
シューシュは冷静に分析した。
「あの、ところでこの死体は、元は生きていた人間だったのでしょうか?」
「何を当たり前のこと聞いてる」
やっぱそうなんだな……
なるべく視界には入れないようにしておこう。直視したら吐いてしまうかもしれん。
しかし、シューシュは平然と見てるが、よく見れるな。
平穏な日本と、異世界ではグロに対する耐性が、全く違うのだろうか。それとも、死体の解剖をしたことがあったりするのだろうか。
すると突然、動かなくなったと思われたリビングデッドの残骸が、がたがたと動き始めた。
「ひゃあああ!!」
可愛い悲鳴を上げて、シューシュは後退して、俺にしがみついてきた。
リビングデッドの残骸は震えただけで、再び立ち上がって襲ってくるようなことはなかった。
「大丈夫のようですよ。しかし、意外と可愛い悲鳴を……」
「今のは我の悲鳴ではない! あとしがみついたのも、腰抜けの貴様が怯えていないか心配になったからだからな!」
相変わらず強がりまくっているが、なんか可愛く見えてきた。
「マスターにしがみつくな。しがみつくなら、ボケ女にしろ」
「は、はい……」
レヴィの迫力に押されて、シューシュは俺から離れてベルフェにしがみつきにいった。どうも、レヴィの事怖がってるみたいだな。
それから遺跡の中の探索を続ける。
リビングデッドは結構出てきた。
俺は何回か出てきたら、多少は慣れてきた。
それでも、出てくるときは心臓が飛び跳ねるくらい早く動くが、天使のマリオネットを使って戦闘に参加するくらいは出来る。
ちなみにシューシュは、まだ腰が抜けるようだ。
この人を守りながら進むのは、少々難易度が高いかもしれない。
遺跡を探索すると、ベッドがたくさんある部屋にたどり着いた。
「いったん休憩しよう……」
グロッキーな様子のシューシュがそう言った。
こんなところで寝れるのか気になるが、まあ、疲れているし休憩は必要だろう。
「そうしますか」
「決まりだ……」
シューシュは何の躊躇もなくベッドに寝ころがった。
抵抗感とかないようだな。
いつの間にかベルフェもベッドに寝ていびきをかきだした。こいつはベッドを見たら寝なきゃ気が済まないようだ。
俺は寝るのは抵抗があったので、座るだけにした。ベッドに腰を掛ける。
カラン。
座った瞬間、変な音が鳴り響いた。
何かを確認する。
骨だった。
たぶん人間の骨。
速攻で立ち上がって、別のベッドを探す。
今度は念入りに骨が無いと確認して、座った。
俺の隣にレヴィが当たり前のように腰を掛ける。
びっくりした……骸骨があるなんて……
ここどういう場所なんだろ。死体を置くところとか?
仮にそうなら、骸骨がなくともとんでもない場所に、座っていることになるが。
あまり深く考えないでおこう。
「何でしょうか? ゼンジ様に御用でしょうか」
いきなり中級ホムンクルスの声が聞こえた。
「私とお話ですか? 残念ながら私はホムンクルスですので、大したお話は出来ません。ご容赦ください」
……会話相手の声が聞こえないというか……え? てかまじで誰と話してんの?
シューシュとベルフェは寝てるし、レヴィは隣だよね。
嫌な予感を感じて、中級ホムンクルスのいる場所を見る。
そこには透けている、足のない女性の姿があった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8,084
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。