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♡狭いけど、入った♡
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秋、香苗は自暴自棄になるのに飽きた。
「だって秋だから」
香苗は隣で眠る知らない男を1人部屋に置き去りにして、ホテルを出た。
朝日が眩しい。
黒いワンピースに赤いハイヒール、肩から提げたバッグにはスマホと煙草と、僅かばかりのお金が無造作に突っ込まれていた。
その僅かばかりのお金を路上で眠るホームレスの枕元に置き、代わりに立て掛けられていた段ボールを拝借した。段ボールの表面にはドラム式洗濯機と書いてある。道理で大きいわけだ。
渋谷も早朝は人が少ない。円山町の坂の上で段ボールを組み立て、中にスポリと入った。屋根を閉じると、そこは誰もいない自分だけの部屋。この大都会で唯一の、自分だけの空間。
「ちょっと、置いてくの、酷くない?」
声に覚えがあった。顔はあまり覚えていないけど。
「1人に、してくれる?」
「やだね」
男が屋根を開けながら言った。朝日がまた眩しい。
「俺も入れてよ」
そう言いながら男が足を挿入して来た。
「狭い、けど、入った…」
と同時に男はバランスを崩し、2人を入れた段ボールはゴロゴロと坂を転げ落ちていった。中で2人は激しく密着した。
「入れて」
香苗は転がりながら男に言った。
「え?」
「入れてよ」
天と地が激しく入れ替わる世界において、中心を見つける事のなんと難しいこと。
それでも。
「だって秋だから」
香苗は隣で眠る知らない男を1人部屋に置き去りにして、ホテルを出た。
朝日が眩しい。
黒いワンピースに赤いハイヒール、肩から提げたバッグにはスマホと煙草と、僅かばかりのお金が無造作に突っ込まれていた。
その僅かばかりのお金を路上で眠るホームレスの枕元に置き、代わりに立て掛けられていた段ボールを拝借した。段ボールの表面にはドラム式洗濯機と書いてある。道理で大きいわけだ。
渋谷も早朝は人が少ない。円山町の坂の上で段ボールを組み立て、中にスポリと入った。屋根を閉じると、そこは誰もいない自分だけの部屋。この大都会で唯一の、自分だけの空間。
「ちょっと、置いてくの、酷くない?」
声に覚えがあった。顔はあまり覚えていないけど。
「1人に、してくれる?」
「やだね」
男が屋根を開けながら言った。朝日がまた眩しい。
「俺も入れてよ」
そう言いながら男が足を挿入して来た。
「狭い、けど、入った…」
と同時に男はバランスを崩し、2人を入れた段ボールはゴロゴロと坂を転げ落ちていった。中で2人は激しく密着した。
「入れて」
香苗は転がりながら男に言った。
「え?」
「入れてよ」
天と地が激しく入れ替わる世界において、中心を見つける事のなんと難しいこと。
それでも。
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