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中編
わたしとルシオが出会ったのは、いまから12年ほど前だ。
ルシオはこの国の王子でありながら、いないものとして扱われてきた。
そんな彼を唯一気にかけ、大切にしていたのは彼の異母兄であり、第一王子のディランだった。
そのディランが原因不明の病に陥り、ルシオは、異母兄を助けたい一心で、わたしの住む森を訪れた。
本来なら森にはまじないがかけてあるから、わたしの元までは決してたどり着けない。
だというのに、幼い身体で異母兄を想う一途さが奇跡を起こした。
森の奥深くで自由気ままに過ごしていたわたしの元までたどり着いたルシオは、傷だらけで自分こそが死にそうになりながらディランの病を治す薬を求めた。
わたしは、人とかかわりたくなかったらこそ森の奥に隠れ住んでいたのだが、流石に幼子を、しかも満身創痍の子供を無視するのは気が引けて。
気まぐれも手伝って、わたしは第一王子ディランの未来を先視で『視』た。
病の原因が特定できると思ったからだ。
けれどそこで視た未来は病などではなく、毒殺を嘆くルシオの姿。
わたしは、ルシオに解毒剤を持たせ、即座にディランの元へと転移させた。
邪魔な見張りやらなにやらはわたしが眠らせ、ディランは命を取り留めた。
それからというもの、ルシオは毎日のように森へやってきては、わたしに魔法を教えてほしいとせがんだ。
ディランもまた、教師や使用人の目を盗んでは、ルシオと一緒にわたしのもとを訪れるようになった。
ルシオは人でも扱えるような簡単な初級魔法から、いつの間にか大魔法使いと呼ばれるような魔法を覚えるまでになっていた。
けれどディランは魔法の適性が薄く――わたしが気づいたときには、ルシオを妬むようになっていた。
ディランの瞳に灯る暗い光に気づき、未来を視たときにはもう遅かった。
何度視ても、ディランはルシオを殺し続けた。
あるときは戦場に送り、戦死に見せかけて。
あるときは、隣国で事故に見せかけて。
ディランがわたしを欲していることにも気づいたから、その手を取る未来を視てみてもだめだった。
嫉妬に狂ったディランが、結局はルシオを殺してしまうのだ。
毒殺他殺刺殺……ありとあらゆるルシオの死の未来を視続けて、わたしは気が狂いそうだった。
わたしに視えるのは、いま取れる選択肢を取った場合の未来だけ。
過去を変えることはできない。
三人で歩む未来がないか必死に探し続けて視続けて。
ふと、気づいたのだ。
『もしも、わたしがいない未来なら?』
その結果が、いまだ。
ルシオが愛するわたしをその手にかける。
それによって、ディランは自分がいかにルシオを大事に思っていたのか。
ルシオが自分を兄として慕ってくれていたか。
幼い頃に持っていた確かな家族愛が、嫉妬を上回り凌駕するのだ。
先が視えるといっても、先過ぎる未来はわたしには視えない。
けれどぼんやりと、その未来が幸せかどうかは色味でわかるのだ。
暗く不幸であるなら黒や灰色に。
明るく幸せであるなら光り輝く白に。
わたしを消した後の世界は、ルシオにとって優しく明るく輝いて、ほのかに桃色の光も混ざっていた。
桃色は、愛情。
ルシオは、わたしの消えた世界で、けれど確かに愛する人と幸せになる未来が待っているのだ。
わたしを手にかけたことは彼の心の傷となるだろうけれど、愛する人と幸せになれる未来がある。
そう確信できたから、わたしはこの計画を実行に移せた。
遺跡に隠して描いた魔法陣は、異世界へ飛ぶ魔法陣。
取り込んだ瘴気が身体に馴染むころには、わたしは異世界へと移動していることだろう。
わたしはルシオの幸福な未来を願いながら、眠りについた。
ルシオはこの国の王子でありながら、いないものとして扱われてきた。
そんな彼を唯一気にかけ、大切にしていたのは彼の異母兄であり、第一王子のディランだった。
そのディランが原因不明の病に陥り、ルシオは、異母兄を助けたい一心で、わたしの住む森を訪れた。
本来なら森にはまじないがかけてあるから、わたしの元までは決してたどり着けない。
だというのに、幼い身体で異母兄を想う一途さが奇跡を起こした。
森の奥深くで自由気ままに過ごしていたわたしの元までたどり着いたルシオは、傷だらけで自分こそが死にそうになりながらディランの病を治す薬を求めた。
わたしは、人とかかわりたくなかったらこそ森の奥に隠れ住んでいたのだが、流石に幼子を、しかも満身創痍の子供を無視するのは気が引けて。
気まぐれも手伝って、わたしは第一王子ディランの未来を先視で『視』た。
病の原因が特定できると思ったからだ。
けれどそこで視た未来は病などではなく、毒殺を嘆くルシオの姿。
わたしは、ルシオに解毒剤を持たせ、即座にディランの元へと転移させた。
邪魔な見張りやらなにやらはわたしが眠らせ、ディランは命を取り留めた。
それからというもの、ルシオは毎日のように森へやってきては、わたしに魔法を教えてほしいとせがんだ。
ディランもまた、教師や使用人の目を盗んでは、ルシオと一緒にわたしのもとを訪れるようになった。
ルシオは人でも扱えるような簡単な初級魔法から、いつの間にか大魔法使いと呼ばれるような魔法を覚えるまでになっていた。
けれどディランは魔法の適性が薄く――わたしが気づいたときには、ルシオを妬むようになっていた。
ディランの瞳に灯る暗い光に気づき、未来を視たときにはもう遅かった。
何度視ても、ディランはルシオを殺し続けた。
あるときは戦場に送り、戦死に見せかけて。
あるときは、隣国で事故に見せかけて。
ディランがわたしを欲していることにも気づいたから、その手を取る未来を視てみてもだめだった。
嫉妬に狂ったディランが、結局はルシオを殺してしまうのだ。
毒殺他殺刺殺……ありとあらゆるルシオの死の未来を視続けて、わたしは気が狂いそうだった。
わたしに視えるのは、いま取れる選択肢を取った場合の未来だけ。
過去を変えることはできない。
三人で歩む未来がないか必死に探し続けて視続けて。
ふと、気づいたのだ。
『もしも、わたしがいない未来なら?』
その結果が、いまだ。
ルシオが愛するわたしをその手にかける。
それによって、ディランは自分がいかにルシオを大事に思っていたのか。
ルシオが自分を兄として慕ってくれていたか。
幼い頃に持っていた確かな家族愛が、嫉妬を上回り凌駕するのだ。
先が視えるといっても、先過ぎる未来はわたしには視えない。
けれどぼんやりと、その未来が幸せかどうかは色味でわかるのだ。
暗く不幸であるなら黒や灰色に。
明るく幸せであるなら光り輝く白に。
わたしを消した後の世界は、ルシオにとって優しく明るく輝いて、ほのかに桃色の光も混ざっていた。
桃色は、愛情。
ルシオは、わたしの消えた世界で、けれど確かに愛する人と幸せになる未来が待っているのだ。
わたしを手にかけたことは彼の心の傷となるだろうけれど、愛する人と幸せになれる未来がある。
そう確信できたから、わたしはこの計画を実行に移せた。
遺跡に隠して描いた魔法陣は、異世界へ飛ぶ魔法陣。
取り込んだ瘴気が身体に馴染むころには、わたしは異世界へと移動していることだろう。
わたしはルシオの幸福な未来を願いながら、眠りについた。
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