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本編1 『幼少期』

第1話 前世の私。『五十嵐 苺花』

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「んん……」


(なんだろ?……起きたいのに起きられない……目も開けられない……手や足の感覚もない……まさか……死んだ??
え…てか、ここ何処??死後の世界とか??)


「苺花よ…何があったん?(あ、名前は覚えてる)え~っと確かあの時は…」

この時、視覚も聴覚も失っていたため、周りに神々しい光がある事も、美麗な焦る声等も聞こえていなく、自分の事を必死に思い出していた。




『五十嵐 苺花』 24歳 化粧品会社の開発部門研究員として働き始めたばかりの乙女であるが、定時で自宅へ帰り自炊して趣味のゲームや漫画を堪能し、ぐっすり睡眠しゆったり出勤する……そんな生活をしてたのは入社して半年までだった。

仕事が増えるにつれ、先輩からのパワハラ残業&強制飲み会が増え、自宅に帰るのも儘ならず、寝不足によるストレスや食生活の乱れで身体は悲鳴をあげていた。
仕舞いにはホストに嵌った先輩が金策のため私の個人情報を悪用し借金をし、連日訪れる借金取りとの攻防で心も身体もボロボロだった。

警察や、弁護士に相談しようと思っても全く時間が無く、仕事の隙間時間を使ってチマチマとチャットで弁護士さんに相談するのが関の山。

やっとの事で仕事に目処がついたので、花金&週末休を使って弁護士事務所に赴き、解決の糸口を掴むため行動を起こそうと、ガチガチに凝り固まった肩を解すように両腕を高く掲げ、栄養剤をグイッと飲み、白衣をバサッと脱ぎ捨て、携帯や筆記具、持ち帰り書類等、急いで鞄に詰め込み「飲み会に誘われる前に会社を出なきゃ!」と慌てて帰り支度をしながらも、同僚の立夏ちゃんの優しさに癒されていた。


「やっと定時に上がれる!!今日は清水先生の所に直接伺ってこの『成りすまし詐欺事件』の話を進めなきゃ!!」


「あー、本当にやっと定時に帰れるねぇ。苺花、1人で抱え込まないでね、私に出来ることはあまり無いかもだけど、一緒に考える事は出来るから相談しなよ」


「うわぁん。立夏ちゃんありがとう!話し聞いてくれるだけでも嬉しいよ。さっさとこんな地獄から抜け出して平穏な日常に戻りたい……。
雲隠れした美羽先輩を見つけ出してギャフンと言わせてやるわ!『やられたら、やり返す!倍返しだ!』だよ!」


「ふふふ。苺花のモットーね。私も美羽先輩は本当に許せない。社会のゴミよねぇ。34歳にもなってホスト狂いのゆる穴女って、誰得よ。狙われてるホストが可哀想だわぁ。金があってもあのボンレスハムだけは嫌だわぁ。
夢見るのは自由だけど、他人に迷惑掛けてまで狂わないで欲しいわよねぇ。
だから、私もSNSで情報拡散して探してるんだけど未だ見付かってないのよねぇ……」


「ホスト狂いでも、ボンレスでも、そこに幸せを感じてるなら良いと思うよ。ただ、他人に迷惑掛けるのだけはダメよね!絶対被害者は私だけじゃない筈よ!
だから私の為に他の被害者の為に『美羽先輩』探してるんだけどねぇ…はぁ…とりあえず弁護士先生の所に行ってくるよ。また月曜日にね!行ってきます」


「全く…苺花は良い子ね。なんかあったら連絡しなさいよぉ。気を付けてねぇ」


バタバタと研究室を出て、エレベーターホールで清水先生にメッセージを記入しながら到着するのを待っていたら、ホール右側にある非常階段の扉が『ギギー』と音を立てて静かに開かれた。
それと同時にエレベーターが到着し、

「五十嵐 苺花!」というドスの効いた声音で自分の名前を叫ぶ黒服の男が1人と、「待てコラ!」と怒鳴り腕を掴もうとする男2人に「きゃぁあ!人殺しー!」と「ドラマの撮影かよ!」と叫びながら飛び乗り、捕まる寸前にエレベーターのドアが閉まり1人中でグチグチと文句を言っていた。


「最悪!会社まで来るなんて!私は借りて無いって言ってんのに!話し聞かないヤクザ崩れが!
ヤダもぉ本当…はぁ…。そのまま1階まで行くと絶対待ち伏せされてるよねぇ。2階…いや、3階?うぅ~ん…。
5階で降りて、社員食堂の厨房奥にある業務用エレベーターに乗せて貰おうかな?くっさいケド仕方ない…」


そうして計画通り5階で降り、食堂のおばちゃん『みっちゃん』に頼み込んで業務用エレベーターに乗せて貰って1階まで下った。

ソロソロっと周りを確認しながら裏口から通りに出て、会社から少し離れた場所にあるタクシー乗り場まで小走りで向かい、丁度止まってたので急いで乗り込もうとしたら、『ガシッ』と大きな手で肩を掴まれ、
「ヒッ!」という小さい悲鳴をあげ、『ビクッ』と身体を弛緩させ、『ギギギ…』と機械仕掛けの人形のようにゆっくり振り返り、頭1つ分上にある顔を仰ぎ見た。


「は、離して貰えます?な、何回も言ってますが、私がした借金じゃ有りません!同僚に個人情報を勝手に使われたんです!私を追わないで、『佐伯 美羽』って人を探して下さいよ!」


「五十嵐さん。もしそうだとしてもね、身分証明書の写しもあるし、借用書も契約書もあなたの名義になってるんですよ。だから返済義務も貴方にあるんです。利息だけでも毎月返済して頂けたら我々もこうして伺う事もないんです。そういう話しをする為に事務所まで来て頂きたいんですよ。わかります?」


「その『佐伯 美羽』さんて方、同一人物かわからないけど、俺達も別件で探してるんだよ。
だから、1度五十嵐さんが返済して、『佐伯 美羽』を探し出してから裁判して、損害賠償請求すれば上乗せで返ってくると思うからさ、そういう話しをするのに事務所まで来て欲しいんだよ。悪い事にはならないから」


(な・ん・で!!自分が使ったわけじゃないのに払わなきゃいけないのよ!少しの利息だって払いたくないわ!第一『美羽先輩』が見付からなかったらどうするのよ!払い損だわ!そんな事に大金使うなら、ゲームで課金するほうが全然いいわ!絶対に事務所なんか行かないんだから!)


「いやぁぁあ!離して~!殺されるぅう!誰か警察呼んでぇ!」

(いい感じにギャラリー居るわね。ふふっ。騒ぎの隙に逃げ出して清水先生の所に行きましょ)


「な!!」


苺花が叫んだことと、黒ずくめ3人集が苺花を囲んでる状況を、通行人が遠巻きに眺めながら写メを撮ったり電話したり、ヒソヒソとしながら訝しんで見詰めている様子に男達が焦ってアワアワしてる隙にサッと距離を取り、


(今のうちにタクシー乗っちゃおっ…え…)


「タクシーいない!!逃げやがった!!ハゲ親父ー!フサフサだったけど!」


そう。タクシーのおっちゃんは巻き込まれないように『パタン』とドアを閉め、ハイブリッドカーの成せる技、無音で静かにその場から走り去っていたのだった。
気づいたら時には『時既に遅し』状態で、タクシー乗り場で呆然と立ち竦むしか無かった。
それでも、(今コイツらに捕まる訳にはいかない!先生のところに急がないと!)そう鼓舞して車道に飛び出し反対側へと走り出した。


「「あ!五十嵐さん!危ない!!」」


この時、焦りすぎて車の往来を確認してなかったため、右側から迫る銀色の塊に気付かなかった。

気付いた時には目の前まで迫っており、『ブーブー』とけたたましく鳴るクラクションの音と、野次馬から聞こえる『きゃー!』と言う叫び声、野太い「避けろー!」という怒鳴り声がどこか遠くの方で聞こえ、運転手の驚愕に染まった顔を認識しながら、『ドンッ』という鈍い音が自分から聞こえたと同時に、幼少期から今までの過去の風景が蘇り、古いビデオカメラのフィルムのように脳裏を走り抜けた。


(これが『シネマティックレコード』『走馬灯』ってやつかな。享年24か……短かったな……)


そう心で呟きながら、『グシャッ』という音を最後に、『五十嵐 苺花』の人生が幕を閉じた。



五十嵐 苺花 享年24歳。その人生は辛く厳しいものだった。母親はネグレクト。彼女が3歳の頃に失踪。父親は五十嵐不動産の社長。
だが父には本妻がおり、跡取り息子と箱入り娘がいたのである。そう…母は社長の愛人で、苺花は婚外子なのだ。

父が、接待で行ったクラブの若く綺麗なホステス(苺花の母)に入れあげ、通い詰め、口説き、愛人として囲った。
マンションを与え、ブランド品を与え、逃すものかと貢ぎ、流れる季節の中で麗華(苺花の母)が愛娘『苺花』を産み落とした。

麗華は娘の誕生に喜んだ、もちろん父も。幸せだった。確かにその時分、暖かい家庭はあったのだ。
だが、苺花は認知されなかった。いや、出来なかったが正解かな。
大企業グループの社長の隠し子など、世間にバレるわけにはいかなかった。
だから、父親のわからない子供として、母子家庭として届け出るしか無かった。

それでも、
「愛する人の子を得られたのはこれ以上ない幸せ」だと。「偶に会いに来てくれて、愛してくれるだけで、私も苺花も幸せよ」
そう言って綺麗な笑顔で微笑んだ麗華に父も、
「私も君や苺花が居るだけで幸せだ。愛してるよ麗華、苺花」
「長男に後を継がせたら、離婚して君達の元へ来る。その時まで待っててくれ」
そう言って出来もしない約束をして麗華と苺花を置いて海外出張へと旅立ってしまった。
それでも、その言葉が嬉しくて、たとえ叶わなくても良いと…そう思って1人で育てようと麗華は決意した。

だが、そのタイミングを見計らうように五十嵐グループの会長、苺花にしたら祖父が数人の部下と共に2人の前に現れ、手切れ金と共にマンションから出てくように言われた。
最初は抵抗したのだが、権力を使って脅され抵抗虚しく地元から遠く離れた地へ追い立てられてしまった。

当時、苺花は2歳と半月になったばかり。手の掛かる子供を、精神的に追い詰められたまま子育てするには一苦労。
あんなに可愛いと、天使だと思っていた娘が段々と憎くなり、


「あんたなんて居なければ!」「産まなければ良かったわ!」「私の人生返してよ!」


苺花が泣く度にそう言いながら叩いたり蹴ったりと虐待をするようになった。完全な八つ当たりである。2歳の幼児にする行いじゃない。
でも、それだけ精神的に追い詰められていたのだろうなと、成長してから思ったものだ。

しかし、そのうち夜中に出掛けて家にも偶にしか帰らなくなった。お腹が空いても何も無い。2歳半の小さな幼児は泣く事しかできず只々母の帰りを待っていた。

空腹で倒れ、泣き疲れて寝ていたある日、上機嫌で帰宅したと思ったら、苺花に一応水分を与え、(お母さん…やっと帰って来てくれた…お腹空いたよ…ギュッてして…)意識朦朧とする中、少しの希望を持ち心の中で訴えたが、そんな希望は早々に打ち砕かれた。

なんと麗華は苺花のガリガリな両手両足を縛り、口にガムテを貼って押し入れに閉じ込めたのだ。

そして「貴方を産んでから私は不幸になってしまったわ。産まなければ良かったのよ。そのまま天に召されなさい。その方が私も貴方も幸せになれるわ。さよなら苺花。そこで大人しくしてたらそのうち天使が迎えに来るわ。私は貴方という枷を捨てて自由になるわ。」

そう言って、苺花3歳の誕生日に『放棄宣言』という最悪なプレゼントを送り、失踪してしまった。育児放棄、幼児虐待、このまま放置され衰弱死すれば、母は立派な犯罪者だ。笑える。
絶対警察に追われて自由になんてなれないし、私だって産まれてこなきゃ良かったよ。思い出しては何度もそう思ったものだ。

あの時『捨てられた』そう理解しても、涙も出なかった。泣いても仕方ない。このまま死ぬのかと幼いながらにも悟り、力なく意識を手放した。

その2日後、家賃滞納で痺れを切らした大家さんがスペアキーで部屋に入り、襖の隙間から除く黒い毛を目に収め、首を傾げながら「何だありゃ。カツラか?人形か?」そう呟きそっと戸をスライドさせて、目に飛び込んできた光景に絶句しながらも、警察と病院に連絡を入れ、苺花を救出した。

そう、死ななかった。天使は迎えに来なかった。苺花はギリギリで助かったのだ。
でも大人になるにつれ、環境が悪すぎて、「あの時死ねば良かった…」と何度も思ったものだ。

命を取り留めた苺花が目を覚ましたのは病院のベッドの上、救出劇から1週間後であった。

次の日には児童相談所が苺花を引き取りに来て、施設で過ごす事になったのだが、心が壊れてしまった苺花は喋らない、泣かない、笑わない、目は虚ろ、他の子達はそんな苺花が怖くて近寄らなかったし、喋り掛けもしながった。

そんな空虚な日々が淡々と過ぎていき、事件から3年経ちピカピカのランドセルを背負って、「明日から新1年生…か」そう独りごちてから、手元にある本に目線を向け、ゆっくりと読んでいく。

普通の6歳といえば、まだ字は習いたてだし漢字だって読めない筈なのに、苺花は辞書を引きながら読んでしまうし、1度目を通したら内容を全て把握してしまう。
外に出て走ればどの子よりも体力や持久力があり、化け物並に運動神経が良かった。

容姿だってそう。癖のないサラツヤヘアーに二重のぱっちりお目目、スっと通った鼻筋にうるうるの唇。
そのまま成長すれば間違いなく絶世の美女だろう。6歳の今だって美幼女なのだ。
まさに眉目秀麗、才色兼備とは苺花のことをいうのだろうと思う。施設の先生や近所の大人は口を揃えて「天才」「神童」「麒麟児」と持て囃す。

当の本人は無表情、無感情なのだが、チヤホヤされてるのが気に食わない子はやはり出てくるわけで、理不尽に容赦なく暴力を振るわれた。
まぁ、母が強烈だったので子供の暴力など怖くもなく平然としていたのだけど、それが更に逆鱗に触れ入学式直前まで虐められ続けた。


(施設では先生もいたし、そこまで過激じゃなかったけど、学校へ行くようになったらパワーアップするんじゃないかなぁ…はぁ面倒臭い。嫌いなら放っとけばいいのに…なんで無駄に絡むかなぁ。しかも女子ばっかり)


図書室の窓から青空を見上げ、心の中で呟き盛大な溜め息を吐き出したところで、施設長に呼ばれた。
ノックをして応接室へ入ると、スラッと背の高い優しそうな男の人がいた。
なんだが懐かしいような、胸が暖かくなる感じがして不思議に思いつつも向かいのソファに座った。


「苺花、コチラの方は五十嵐 燿さん。五十嵐グループの社長さんです。貴方を引き取りたいと養子にしたいとのことです。」


施設長の言葉に目を見張って驚いた。


「え…社長さん…養子ですか…初めまして『如月 苺花』です。えっと…何故わたしなんですか?」


言葉の意味は理解出来ても、状況が理解出来ず、頭の中はクエスチョンでいっぱいだった。だから、しどろもどろになりながらも理由が知りたくて、質問した。


「初めまして、苺花ちゃん。実は産まれたばかりの頃に遊んだ事があるんだよ。君のお母さんと知り合いでね、久々に会おうと思ってアチコチ探した結果、麗華さんは見付からなかったんだけど、苺花ちゃんがココに居るのを突き止めて会いに来たんだ。
それで、施設長の話しを聞いてね是非とも養子として引き取りたいとお願いしたんだ。
どうかな?この地から離れる事にはなるんだけど、私には12歳になる息子と10歳の娘がいるんだ。養子になれば苺花ちゃんの義兄と義姉になる。
妻は1年前病気で逝ってしまって居ないのだが、母代わりのお手伝いさんがいるから大丈夫。安心して暮らせるよ。だからどうかな?私の娘にならないかい?」


養子…義兄や義姉、母代わりのお手伝いさんには全く興味ないけど、この地から離れられる。あのクソガキ共に会わなくて済む。大企業の社長の家なら確実に安全だろう。それに…この人は大丈夫な気がする。母とどんな関係かわからないけど…でも、この人の胸に縋り付きたくて、二つ返事で「はい!」と満面の笑みで応えた。

『如月 苺花』改め『五十嵐 苺花』になると決めた日、母に捨てられたあの日からちっとも動かなかった表情筋が、心が、久々に動いた。

ただ、養父に引き取られ、五十嵐邸に住むようになったのは良いが、苺花は何かに呪われてるのか?と思うほど不幸の連続だった。
まぁ、人付き合いが苦手で他人が信用出来なかったのも原因なので、身から出た錆なのかもしれないが、女難の相があるのか??と思うほど、女性とのトラブルが耐えなかった。

義姉となった『美亜』は勿論の事、家政婦長、お手伝いさん、社長の秘書には散々嫌われ、養父や義兄が居ない所で陰険な嫌がらせをされ、学校へ行けば上級生に呼び出されイジメを受ける。
それは、中学生になっても高校生になっても続き、大学生になり、一人暮らしを始める頃に一時期だけピタッと無くなり、漸く安心したのも束の間、大学へ通うようになって初めて心許せる友達が出来たと思ったら、裏切られた。原因は『美亜』だった。

「どんだけ執着すんの!!」と思わず叫んだのだが、小・中・高と続いた数々の嫌がらせは、義姉『美亜』が裏で手を引いていたのだ。

『美亜』は自分より何もかも優れている『苺花』が憎かったのだ。頭脳然り、運動神経然り、容姿然り。スタイル然り。そして、養父や義兄の溺愛ぶりが妬ましかった。
だから、妬みと僻みを一方的に『苺花』にぶつけた。自分では手を出さず、権力を使って周りを操り、金を握らせて。

そんな義姉『美亜』が『苺花』への執着を辞めたのは、大学卒業間際。義姉が結婚する事になった時だった。

「やっと解放されたぁー!」と晴れ晴れとした気持ちで大学を卒業し、某有名化粧品メーカーの開発部門に就職したのだが、やっぱり『苺花』は女難の相があるのだろう。

卒業間際に仲良くなった『立夏』以外からは、妬みや僻みを理不尽に向けられ、仕事の押し付けや、毎日のように残業させられ、研究成果の横取りや、飲み会と称して連れ出されては無理やり飲まされ…
ボロボロになった頃に極めつけの『ホスト狂い美羽』の借金の、身に覚えのない名義人…。そして無慈悲な取り立て……


「はぁ…私の人生波乱万丈すぎて笑えるわぁ。自叙伝でも書こうかな…くっそ野郎ー!私が何したって言うのよ!今までの嫌がらせなんて可愛いもんよ!心を無にして適当にあしらっとけば良いんだから!
で・も!借金の取り立ては無いわぁ。相手素人じゃないし、ヤクザでしょ!?300万くらい札束ビンタして返済出来るけどさ!絶対しないから!見てなさいよ負けないんだから!『やられたら、やり返す!』絶対に!」


そう『立夏』に宣言して、やっとの事で時間を作り、これからって時に、何も出来ぬまま24歳で呆気なく人生に幕を降ろしてしまった。

虚しい人生だった。なんの為に産まれてきたのか。最初から最後まで不運の連続だった。
こんな事ならマジで『自叙伝』書いとくんだったと後悔してこの世を去った。

『五十嵐 苺花』享年24。晴れ渡る空、グレーの道路を真っ赤に染め、一度目の人生に幕を降ろした。
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