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そういやなんだっけ。
しおりを挟む「クロと喋りたい」
ぴたりと手を止め、俺は呟く。
「なんですかいきなり、それはあなたのお仕事でしょうに」
するとリィーンさんからは冷静な言葉が返ってきた。
「それはそうなんですが、猫語翻訳が全然上手くいかないので参ってるんです」
本当にどうしたらいいのか分からないんだよなあ。
人間の気持ちを読む魔法をもっと完璧にした上で、他国の言語違う人にも通じるようにしてから、猫語翻訳に挑戦するべきなのかもしれない。すげえめんどくさいな手順が。
まあ、クロの為なら頑張りますけどね。
頑張れば俺でギリギリ使えるくらいの魔法が出来ると思う。
実用化?
知らんよそんなん。
「いいから今は魔力を動かしてください、お嬢様のドレスが完成しないじゃないですか」
「分かってるんですが、飽きました」
さすがに一定の魔力出しながらずっと同じような動きだけしてたら飽きるよ。
他の事考えちゃうよ。疲れたよ。
「飽きないでください、そのドレスを着たお嬢様が見たいんでしょう?」
「なんだかもう、妄想で良いかなって思えてきました」
「思わないでください」
だって飽きたんだもん。
「そういうリィーンさんは私がめっちゃ頑張ってる中何をしてるんですか」
「もちろんお嬢様の御髪を整えているんです」
ドヤ顔で言ってる所悪いけど、あの。
「ブラシめっちゃ食われてますけど」
「きっと歯磨き用と間違えておられるんです」
いや歯ブラシそんなデカくないよね?
「めっちゃ噛んでませんか」
「食感が面白いのかもしれません」
確かにガシガシしてるけど、後で口の中血だらけにならないか心配……ってあれぇー。
「叩いて飛ばしてませんか」
「虫か何かいたのかもしれません」
うん、あのさ。
「そろそろ『髪を梳かそうとしたら嫌がられた挙句ブラシが猫じゃらしと間違えられた』という現実を認めませんか」
「どうしてこうなったの……!!」
崩れ落ちるように蹲るリィーンさんは、悲壮感に満ちていた。
オーバーリアクションだなぁ。
「ブラシはまだ早かったですねぇ」
「大人しく寝てたから行けると思ったのに……!!」
「ネコちゃんは気配に敏感ですからね」
壁にブラシが当たって、ガッ、とか音を立てながら跳ね返った後、それをクロが叩き飛ばしたり、カジカジしたりなんかそんな感じにエンドレスリピートしてる状態を微笑ましく眺める。
あァ~、クロちゃん可愛すぎなんじゃぁ~。
「……ところであのブラシは何の毛を使ってるんですか?」
「馬の毛です」
お馬さんの毛なら歯ブラシにもなるね。
「歯が綺麗になりそうですね」
「そうですわね……」
「……止めないんですか?」
「むしろどうやったら止まるんですの?」
あ、なるほど、そういえばこういう時どうすればいいのかとか分からんよね、お猫様の下僕界隈じゃないんだし。
「簡単ですよ、こう言えば良いんです。クロ! ちゅーるあるよ!」
「ぅぐるなぁん!?」
物凄く嬉しそうな顔と鳴き声で勢い良く俺を見るクロがめちゃくちゃ可愛いですありがとうございます。
「よーしよしよしよしよしよしよし、クロちゃんいい子だねぇー」
「なぅな! んなぁ! なぅんな!」
よっぽどちゅーるが食べたいのか、めちゃくちゃ可愛い声で喋ってくれます可愛い。
アピールと圧が凄いそして可愛い。
めちゃくちゃ叩いてくるけど可愛いので許す可愛い。
「よしよしよしよし、はいコレ、俺特製ちゅーるっぽいやつだよー」
さすがにあの素晴らしき猫ちゃん用アルミニウムパウチ(外装パック)は作れなかったので、お皿で失礼させて頂きます。
どうやって持ってたかっていうと、そこら辺は企業秘密なのでスルーでお願いします。
「ぅな……? うにゃあん!」
始めは不思議そうに見ていたが、匂いを一嗅ぎした瞬間嬉しそうに、なんかにゃぐにゃぐ言いながら食べ始めてくれました可愛い。
しかもブラシへの理不尽な暴力は無くなりましたよ、素晴らしいね。
だがしかし、リィーンさんは納得してくれなかったらしい。
「食べ物で釣るなんて卑怯です!!」
「そうは言っても、ネコちゃんとはそういうものなんですよ」
「くぅっ……!!」
悔しそうに表情を歪めながら打ちひしがれるリィーンさんを横目に、俺はクロの可愛すぎる姿をガン見していたのだった。
なんか忘れてる気がするけど、クロが可愛いのでOKです。
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