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第7章 自爆覚悟の告白の末……

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 ああ、部長だ……

 でも、実際に彼の姿を目にしたとたん、ぐわーっと後悔の波が襲ってきて、急に弱気が顔を出した。

 なんてことしてるんだろう。わたしは。
 ほぼ真夜中に男性の家を訪ねるなんて。

 本当、いまさらながら、自分の無節操さにあきれる。

「すみません。あの、こんな夜分に」
「入れ」

 シャワーを浴びたばかりなのか、部長の髪は少し湿っている。
 上下ともシンプルなダークグレーのスウェットというラフな姿の部長が、まるで別人みたいに思えて、さらに落ち着かない気持ちが募った。

「いえ、ここで。ただ一言、どうしてもお伝えしたいことがあるだけなので」

「いいから入れ。こんな時間にこんなところで話なんかしたら、近所に迷惑だ」

 あっ、たしかに。
「すみません。じゃあ」
 で、そのまま上がらずに玄関口で話そうと思ったけれど、部長はわたしを置いて、さっさと部屋に入っていってしまった。

 わたしはおそるおそるその後を追った。
 
  部屋に通じるドアを開けて中に入る。
 すっきりと片付いた部屋だった。

「そこに座っとけ」部長は奥のソファーを指し示した。
 わたしは、キッチンに向かおうとする部長を引き止めた。

「あの、本当にすぐ帰りますので。ただ、わたし、どうしても部長に直接、言いたいことが……」

 ここまで来ちゃったんだから、いまさら迷っても仕方ない。

 覚悟を決めて、わたしは部長の目の前に立った。

 そうして、彼の目を見つめて
「あの、自爆覚悟で言います。部長……わたし、あなたが」

 でも、その後の言葉は告げられなかった。
 
 部長が最後まで言わせてくれなかったから……

 わたしの言葉を遮るように彼はすっと手を伸ばし、わたしの頬を両手で包んだ。

 えっ?

 少しの間もあけず、彼の顔が間近に迫り、そのまま唇を奪われた。
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