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第3章 とまどい? ときめき? ルームシェア

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「えーと、ひとつお聞きしたいことが」
「何?」
「芹澤さんの毎日のスケジュールってどんな感じですか?」

「朝は9時前に出社で、帰りは日によるけど、だいたい10時前後かな。忙しいときは日付が変わってからということもあるよ」

「休日は?」
「うーん。基本、土日は休みだけど、顧客の都合で休日出勤もしょっちゅうだな」

「そうすると、たぶん、ほぼすれ違いの生活になりますよね、わたしたち」
「ああ、そうだね」

「あの……わたしは、芹澤さんの〝恋人〟を演じなければいけない訳ですよね」
「そうだね」

「だとすると、多少は時間を共有しておいたほうが、よりリアルな感じが出ると思うんですけど」

 芹澤さんはくすっと笑った。
「いや、ずいぶん、やる気になってくれたみたいだね」
「はい。一度やると決めたら、徹底的に攻略したい性格なので」
「それは頼もしい」

 うーん、手っ取り早く時間を共有するには……そうだ、食事だ!

「芹澤さん、朝食はいつもどうされてますか?」
「朝は食べないことが多いよ。テイクアウトのコーヒーをデスクで飲むぐらい」
「朝ごはんは大切ですよ。そうしたら朝食、わたしに担当させていただけませんか? 夜は時間を合わせるのが難しいでしょうから」

「料理、できるの?」
「たいしたもんは作れませんけど、朝食ぐらいなら」
「そうか。じゃあ、お願いしようかな」

「じゃあ、明日、材料をそろえておくので明後日からということで。洋食、和食どちらがいいですか?」
「家にいたころは和食だったけど、パンも好きだよ」
「では、その日の気分に合わせて作ります」
「うん、楽しみにしてるよ」

 サニーヒルズには高級スーパーがあるので、そこの食材を使って料理するのは楽しそう。

 それに、毎日決まったことをするほうが、生活に張り合いができるし。

「さて、そろそろお開きにしようか。きみは明日からのハードスケジュールのために体調を整えておかないといけないし」
「そうですね。ワインごちそうさまでした」

 立ち去ろうとしたとき、芹澤さんに「エリカさん」と呼び止められた。
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