苺の誘惑 ～御曹司副社長の甘い計略～

第７章 パーティー、そして

５

「どう？」

　別室にいた芹澤さんが、試着室のドアをノックした。

「どうぞ、お入りください。とてもお似合いですよ」とメゾンの女性。

「もう、待ちきれなくて、うわ……」
　芹澤さんはわたしを上から下まで、じっくり眺めてから、満足そうにうなずいた。

「もう、そんなにじろじろ見ないでください」
「世界一綺麗だよ、エリカ……本当に」

　メゾンの女性が、微笑みながらこっちを見ている。

　愛情表現がストレートなのはとっても嬉しいのだけれど、他の人がいるときはもう少し控えめにしてくれたほうが……
　でも、贅沢すぎる悩みだよな、それは。

「このまま外に出て、みんなに見せびらかしたいな。彼女がぼくの恋人だ。羨ましいだろって」
「本当。わたしも羨ましいですよ。あまりにもお幸せそうで」
　
　メゾンの女性の言葉に宗太さんは「ええ。その幸せな花嫁のための、とびっきりのウェディング・ドレスのことで相談に乗っていただきたいんですが」とまったく悪びれずに答えた。

「まあ、ありがとうございます。では、あちらの部屋に参りましょうか」


　打ち合わせを終え、車に乗り込むとすぐ、彼は腰を浮かせて顔を寄せ、唇を重ねた。

「さっきからずっと、こうしたくてたまらなかったよ……」

「宗太さん……あっ」

　もう一度、唇が重なった。
　今度はいっそう深く。
　息がつけなくて、いったん唇を離すと、また彼の手で捕まえられて。
　

　そのままかなり長い間、わたしたちは、その場で口づけを交わし合っていた。

＊＊＊

　そして、パーティーの日がやってきた。

　会場は国際会議場としても使われる、2,000平米の大宴会場。

　前日に、宗太さんと一緒に会場を見にいき、あまりの広さと豪華さに驚いた。
　招待客も千人を超えるらしい。

　あの会場を思い浮かべると、逃げ出してしまいたいような恐れを感じる。
　でも、この日のために、２カ月以上、努力を重ねてきた。
　宗太さんのパートナーとしてふさわしい女性になるために。

　そう。
　彼は、生涯の伴侶としてわたしを選んでくれたんだ。

　その誇りをよりどころに、今日一日を乗り越えないと。