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第三章 溢れる想い、深まる苦悩
七
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幼いころから姉に隠しごとはできなかった。
そして桜子が沈んでいると、いつもそっと手を差し伸べてくれる姉だった。
話すべきか少しためらった。
でも結局、今、苦しい恋をしているのだと、梅子にすべてを打ち明けた。
「一緒にいるときは良いのだけれど、別れると、これきり会えなくなるのではないかと、いつもその不安に苛まれてしまって」
「そうだったのね。なんとか力になってあげたいけれど……難しいわね」
姉は申し訳なさそうな声でそう言うと、ため息をついた。
「でも桜子、あまり深く悩まないで。つらい時はいつでも相談してちょうだい。といって、名案があるわけではないけれど」
「いいえ。お話を訊いていただけただけで少し気持ちが晴れましたわ。ごめんなさい、お姉様、御気分の悪いときに、こんな話をして」
姉は「大丈夫よ」と首を振り、それから少し思案していた。そして……
「その……天音さんは英語がおできになるのよね」
「ええ、父の翻訳の手伝いもしているようなの」
「それなら、もしかしたら力になってあげられるかもしれない」
「えっ?」
「忠明さん、貿易の仕事を始める準備をしているところでね。その天音さんを通訳として雇うことができれば……」
もし、天音が通訳として雇われて、その事業が成功を収めれば、彼の立場も今とはまったく変わることになる。
そう思うだけでもずいぶん、桜子の心は慰められた。
「ね、今すぐという訳にはいかないけれど、まったく希望のない話ではないわ」
「お姉様」
そのとき、廊下を急ぐ足音が聞こえてきた。
「梅子! 大丈夫か」
姉の夫、忠明が慌てた様子で入ってきた。
「ああ、あなた……一週間ほど安静にしていれば問題ないそうです」
姉の言葉に、忠明ははーっと大きく息をついた。
「良かった……梅子にもしものことがあったらと思って、気が気でなかったよ」
そして桜子が沈んでいると、いつもそっと手を差し伸べてくれる姉だった。
話すべきか少しためらった。
でも結局、今、苦しい恋をしているのだと、梅子にすべてを打ち明けた。
「一緒にいるときは良いのだけれど、別れると、これきり会えなくなるのではないかと、いつもその不安に苛まれてしまって」
「そうだったのね。なんとか力になってあげたいけれど……難しいわね」
姉は申し訳なさそうな声でそう言うと、ため息をついた。
「でも桜子、あまり深く悩まないで。つらい時はいつでも相談してちょうだい。といって、名案があるわけではないけれど」
「いいえ。お話を訊いていただけただけで少し気持ちが晴れましたわ。ごめんなさい、お姉様、御気分の悪いときに、こんな話をして」
姉は「大丈夫よ」と首を振り、それから少し思案していた。そして……
「その……天音さんは英語がおできになるのよね」
「ええ、父の翻訳の手伝いもしているようなの」
「それなら、もしかしたら力になってあげられるかもしれない」
「えっ?」
「忠明さん、貿易の仕事を始める準備をしているところでね。その天音さんを通訳として雇うことができれば……」
もし、天音が通訳として雇われて、その事業が成功を収めれば、彼の立場も今とはまったく変わることになる。
そう思うだけでもずいぶん、桜子の心は慰められた。
「ね、今すぐという訳にはいかないけれど、まったく希望のない話ではないわ」
「お姉様」
そのとき、廊下を急ぐ足音が聞こえてきた。
「梅子! 大丈夫か」
姉の夫、忠明が慌てた様子で入ってきた。
「ああ、あなた……一週間ほど安静にしていれば問題ないそうです」
姉の言葉に、忠明ははーっと大きく息をついた。
「良かった……梅子にもしものことがあったらと思って、気が気でなかったよ」
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