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本編

第二会議室①

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騎士団本部。
その中央にある第二会議室では、『ナンバーズ』達の顔合わせと、『ガーディアンナイト』達によってロゼリアセルジュのナンバーを決める話し合いが始まっていた。

「セルジュ・プランドルです。遅れて申し訳ありません!」

第二会議室の中は、会議室と言うよりも談話室のようになっていた。ふかふかの赤い絨毯が敷かれていて、その上にアンティーク調のソファーや椅子がいくつもあり、バルトロなんかは完全にソファーに寝そべっている。ただ、一応立場的なものは各々意識しているのか、『ガーディアンナイト』達は左側のソファーや椅子に座っており、『ナンバーズ』達は右側のソファーや椅子に座っていた。そして何故だかテーブルは無い。第二会議室内は完全に不思議な謎の空間と化していた。

「ああ、いいですよ。どうせリアムがきちんと伝えていなかったのでしょう?貴方が気にする事ではありませんよ」
「ジェラルド。どうせリアムがって、その言い方は止めてくれないかな?私が変な奴だと、セルジュが誤解するだろう?」
「それ、本気で言ってます?」
「……どういう意味だい?」

ジェラルドとリアムのやり取りを聞きつつ、ロゼリアはなかなか顔が上げられなかった。休憩室から出る直前に、リアムが満タンになっている魔力タンクを渡してきたからだ。

『そういえば、これもグリードの書き置きと一緒に置いてあったよ。昇格試験で使ってた魔導具だよね?』
『?!』

魔力が満タンになっている。
いつもなら二十日掛かるのに、僅か数時間で満タンに。グリードがどれだけ規格外な魔力を持っているのか知ったと同時に、何があったのか分かってしまった。目が覚めた時、身体がフワフワ気持ち良かったのは、魔力回復と同じ事をされた余韻だったのだ。

(わ、私はまた醜態を晒してしまったのでは?!)

昨日、魔力回復をしてもらった時の、耐えきれない程の気持ち良さを思い出し、思わず顔が赤くなってしまう。アレを意識がない状態でされていたなんて、もし自分が何か変な事をしたり、言ったりしていたらと思うと恥ずかしくて死にそうだ。

(今はそんな場合じゃないのに……!)

そう己を必死に叱咤しつつ、何とか顔を上げて、会議室に集まっている面々に視線を向けた。

……………………
…………

なんと言うか、分かってはいたけれど。

眩しい。
何なのこの美麗集団は。
ノア以外は、全員乙女ゲームの攻略対象者だから、皆イケメンなのは分かってはいたけどさ。『ガーディアンナイト』や『ナンバーズ』になる為には、絶対にイケメンって事も必須項目に含まれてますよね??
眩しいわ。モブな私は目が潰れそうだよ。まぁ、イケメン耐性は既に獲得済みだけれども。

(でも、全員は揃ってない。ガーディアンナイトはジャック以外揃ってるけど、ナンバーズが三人しかいない。……お兄様は何処?)

私が周囲に視線を走らせていると、それに気付いたテオドールがニコニコとした笑顔で私に言った。

「セルジュ。オリバーなら、ここには居ないよ。今日の実力試験の試験官はオリバーだからね」
「試験官?」
「そう。昨日の試験官は僕とノアとバルトロだったけど、今日はオリバーなんだ」

昨日は三人だったのに、今日はお兄様一人だけなの??私が不思議に思って首を傾げていると、ジェラルドも不思議そうな顔をして、テオドールに問い掛けた。

「おや?テオドールはセルジュ君と知り合いなのですか?」
「はい。僕達の通っていた学校の後輩です」
「ああ、成程。では、テオドールやノア、オリバーとは既に面識があるのですね」

「はい」とにこやかに答えるテオドールと、やや俯いて「……そうです」と答えるノア。
私はやや焦ってしまって、「は、はい!テオドール先輩達には在学中からお世話になっています!」と慌てて返事をしてしまったが、ジェラルドはそんな私を見て、クスッと柔らかく微笑んでくれた。

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、セルジュ君」

ジェラルドのふわりとした銀の髪が、窓から差し込んでくる陽の光を浴びてキラキラと輝いている。アイスブルーの瞳も、雪のように白い肌も、とても綺麗で。優雅に足を組んでいる姿が、とても様になっていて、私はついつい見惚れてしまった。

(綺麗な人。……ゲーム画面で見るより、断然綺麗。睫毛も銀色でキラキラしてる)

「申し遅れました。私の名はジェラルド・アダリー。ガーディアンナイトの【クィーン】の称号をいただいています。それで、私の隣に居る厳ついおじさんが……」
「俺がスペード王国騎士団団長のレオン・オルブライトだ。称号は【キング】。団長でもレオンでも、好きに呼べ。……それと、俺はまだ30だ。おじさんではない」

【キング】の称号を持つ、スペード王国騎士団団長のレオンはワイルド系のイケメンだ。黒い制服がめちゃくちゃ似合っている。見た目は厳つくて強面だけど、硬派な感じで格好いい。身長も一番大きいし、身体もガッチリしている。ツンツンした短い髪型の黒髪で、瞳は金色だ。

『おじさんではない』と言うレオンの反論に、ジェラルドが片眉を寄せて意地悪く笑った。

「レオン、セルジュ君は14歳なんですよ?倍も違えばおじさんでしょう」
「俺がおじさんならば、お前もおじさんという事になるぞ」
「残念ながら、私はまだお兄さんです。さて、もう知ってると思いますが、セルジュ君を呼びに行ったのが【ジョーカー】のリアムです」
「はい」
「セルジュ。私の自己紹介も聞きたいかい?」
「いえ、大丈夫です」
「大丈夫?遠慮しなくてもいいのに」

いえ、本当に大丈夫です。
心の底から遠慮なんてしていませんから。

「リアム相手に大した度胸ですね。セルジュ君はなかなかに面白い。ああ、それと、この仏頂面が…………………………あれ?」
「俺もセルジュとは面識がある。テオドール達と同じで、セルジュは俺の後輩でもあるからな。自己紹介は必要ない。そうだろう?」
「そ、そうですね。グリード……先輩」
「セルジュ」
「はい。……グリード」

恥ずかしくて、ただでさえグリードの顔を直視出来ないのに、なんで?

(どうして、そんな顔をするの??)

セルジュと話すグリードを見て、ジェラルドは目を丸くして驚いた。リアムと、相変わらずのグリード嫌いなテオドールは面白くなさそうな顔をしているが、レオンはイマイチ状況が掴めておらず、よく分かっていない。ノアだけは少し不安げな顔をしていた。

「グリードがあんな顔をするなんて。……セルジュ君は一体どんな子なのでしょうね」

ジェラルドがそう呟くと、それまで静かだったナンバーズ側の席に着いているバルトロが、徐に口を開いた。

「……今日の実力試験はいつ頃終わるのでしょうか?」
「バルトロ?」
「僕は早くオリバーと鍛練の続きがしたいのです。彼があんなに面白い男だとは思わなかった。セルジュ君のナンバーは、No.2でいいでしょう?」
「No.2だと?」

バルトロの言葉を聞いて、グリードとテオドールが眉間にシワを寄せる。No.2は特異枠。つまり、実力が他のナンバーズ達より劣っていても、特殊な力等を所持していれば特異枠としてナンバーズになれる。
ジェラルドは何かを考えるような顔をしつつ、バルトロに問い掛けた。

「……何故No.2なのですか?」
「セルジュ君は、弱いとは言いませんが強くもないでしょう?確かに判断力も悪くないし、あの硬さには驚きましたが、硬いだけでは面白くありません」
「それは試験官が貴方だったからでしょう?それに、昨日は貴方もセルジュ君を面白いと気に入っていたではありませんか」
「確かに昨日は面白いと思いました。けれど、僕は今日、もっと全然硬い、僕の攻撃を通さない程の硬さを保ちながら、僕を攻撃してくる者と出会ってしまったのです!!」

頭を抱えながら、やや興奮気味にそう口走るバルトロをよく見てみると、身体中に擦り傷や痣が出来ていた。どうやら治癒師の元へ行ってないらしい。

「嗚呼!!早く鍛練の続きがしたい……っ!!」


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