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本編

ニールたんvs忠犬ヤミ公

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―――確かに、今日は家庭教師であるニールたんが家に来る日だ。だけど、授業は午後からだった筈。

しかし、ニールたんは今、私の部屋に居る。正確には、ついさっき姿を現した闇の精霊様?と思われる子犬と何故か睨み合っている。


「アリスお嬢様から匂袋を頼まれた時にもしやと思いましたが……やはり、精霊が現れていたのですね」


いや、ついさっき私が脅して、姿を現してくれたばかりなんですけど……


「アリスお嬢様はこの精霊に何かしらの迷惑行為をされているのでしょう?だから匂袋が必要だった。違いますか?」


違くないですけど……
ニールたん、今日は探偵か何かですか?


「ガルルル!!」

「私を威嚇するとは……しかし、力だけは強そうだ。とりあえず、アリスお嬢様から離れなさい」


……今、この真っ黒な毛色の子犬は、私の腕の中に居る。何でかと言うと、まぁやっぱり可愛いは正義って事だよね。ついつい抱っこしちゃいました。で、ちょうどそこにニールたんが来たって訳です。

私の腕の中に居る真っ黒な子犬は、ニールたんを無視して私の胸に顔を擦り寄せている。心なしかニールたんを見てドヤ顔をしているような?


「あ、アリスお嬢様に……!私の天使になんて事を?!この駄犬!!」

「ガルルル!!ワンワンッ!!」


誰が誰の天使だって?
というか、人の部屋で喧嘩すんなっ!!さっきから部屋の中で魔力っぽいものがぶつかり合ってるんですけど!!

それに知りたい事もあるし。
ニールたんに訊いてみようか?


「コドウェル先生様。この子はやはり精霊なのですか?」

「アリスお嬢様?!そんな堅苦しい呼び名はお止め下さい!私の事は、是非ニールたんと……!!」


大丈夫ー。心の中ではそう呼んでるから。


「いえいえ、そういう訳には参りません。お父様から聞きました。コドウェル先生様は大変優秀な魔法使いであると。それで、この子は精霊なのですか?」

「リトフォード卿、余計な事を!……はい、この駄け……ゴホンッ。この子犬は精霊で間違いないですね。見たところ、闇の精霊の上位……」

「上位?」

「いや、違う。この感じ……」


なにやら真剣な顔をしたニールたんは眉根を寄せて、かけていたモノクルをそっと外した。そして、モノクルの端についていた小さなネジのような物をカチリと回す。


「コドウェル先生様、それは?」

「私のモノクルは魔導具なのです。普段は相手の魔力量や属性を見たりするのですが、ここを回すと精霊や聖獣、魔物の等級等が見えるようになっているんです」


え?!何その便利アイテム!!
つーかスカ○ター?!


「まぁ本来は魔物討伐用なんですけどね。精霊や聖獣のものまで見えるとは、作った当初は想像もしていませんでしたが……」

「?!」


あれ?さらりと凄い事言わなかった?作った当初は、って……

私がじっと見つめると、ニールたんは少し目元を赤くして微笑んだ。


「アリスお嬢様は魔導具造りにご興味が?では、将来は私と組んで共に開発、を…………」


話していたニールたんの瞳が驚愕に染まった。ニールたんは「嘘だろ?」と小さく呟いてから、真っ黒な子犬を凝視する。


「最上位精霊?この駄犬が?……だが、それならば対話が成り立つ筈だ。貴殿は闇の最上位精霊なのか?」

「わん!!わんわん!!」

「……言葉は何となく理解しているようだが、話す事は出来ないか。魔力不足?いや、違うな。これは……」

「ニールたん?」

「アリスお嬢様。この子犬は闇の最上位精霊です。本来であれば高い知能を持ち、話す事も可能な筈ですが……どうやら何者かに『呪い』をかけられているようです」

「呪い……?」


私に呪いをかけている闇の精霊様自身が呪いにかかっていると?
それって制作スタッフが呪いをかけているのでは…………
よく分からないけど、闇の精霊様も被害者って事ね。本調子じゃないようだし、これじゃあ魅了の魔法を直ぐに解いてもらうのは難しいのかな?

というか、さっきうっかり先生様をニールたん呼びしちゃったんだけど大丈夫かな?気付いてなさそうだし、大丈夫だよね?


「最上位精霊に呪いをかけれる者等、そうはおりません。私の方でも調べてみましょう。ところでアリスお嬢様」

「?」

「もう一度呼んで下さい」

「え」

「もう一度『ニールたん』と呼んで下さい!!!」



大丈夫じゃなかったーーーーーーーーーーーー!!!
つーか鼻血出てるから!!!!!



* * *

                                                                                                                                 
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