スカーレットオーク

はぎわら歓

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第三部

10 相談

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 新人に今日の仕事の説明をしていると、直樹は柚香の視線が熱く注がれているのを感じた。
 先日、自宅へ招待した帰りの車の中での会話を思い出す。

 『大友さんの奥さんって地元の人じゃないんですよね。どこで知り合ったんですか?』
 『岡山のバーでね。ナンパされたんだ』
 『えー。奥さんからですかあ。大胆なんだー』
 『まあね』
 『いいですねえ。私も大友さんみたいな人ナンパしたーい』
 『今年の新人たちなかなか良さそうじゃない?歳も近いし』
 『えー。もうちょっと大人っぽい人がいいなあ』

  あまり親切にすると女性に勘違いを促してしまった若い頃とは違うだろうと思い、何の警戒もしていなかったが、緋紗の心配と柚香の熱い視線で直樹は少し自重しなければと思った。
たいていの女は付き合えば女性としての関心の薄さを理解し、ただの親切だったと分かって去っていくのだが、そういう訳にもいかなかった。(うーん。しばらく放置でいいか)
 出来るだけ他の組合員と差なく接し、個人的な会話をほどほどに避けるようにした。
そうやって一ヶ月が過ぎたが、相変わらず柚香は直樹を熱っぽく見つめている。


  中学生になった優樹は孝太と同じ中学でしかも孝太について同じサッカー部に入った。
 今日は練習試合でまだ試合には出してもらえないがレギュラーの孝太を一生懸命応援している。
 「孝太なかなかうまいね」
 「優樹もすぐレギュラーになれそうだろ」

  送りついでに来ていた直樹と颯介は試合を少し観戦しながら話した。
 「あのさ。この前のあれ。さすがだったよ」
 「なんだよ。あれって」
 「沢田君のことさ」
 「ん?ああ。なんだ確認でもしたのか?」
 「本人に聞いた」
 「お、お前。相変わらず直球野郎だな」
  颯介は吹き出した。
 直樹はしれっとして言う。
 「早期解決が一番だしね。まあ、そっちはいいんだけど、ちょっと困ったことがあってさ」
 「なんだよ。また女か」
 「またって……。まあそうだよ」
 「任せろ」
  直樹は新しく入った林業組合員の柚香の話をした。

 「あー。そりゃ心配だな。お前が動かないのはわかってるけど。相手の出方がなあ。今時分、既婚なんて障害じゃないからな」
  直樹はため息をついた。
 「この仕事って結構きついから遊ぶ余裕ってないんだよな。合コンとか行きそうにないし。職場の男もイマイチだってさ」
 「うーん……」
  颯介は少し首をかしげてうなった後、「あ!閃いた!」と目を輝かせる。
 「なに?」
 「これはいいぞ」
  颯介は勿体つけた。

 「早く教えろよ」
 「よく聞けよー」
 「うん」
 「ピアニストと林業女子をくっつける!」
 「え。沢田君と浅井さんをか」
  直樹には今一つピンと来なかった。
 「今度ペンションに誘って会わせてみろよ。お前と緋紗ちゃん両方の心配がなくなるだろ。俺も見てやるから」
  颯介は半分野次馬だが直樹もなんだかいい考えに思えてきた。(確かに沢田君なら落ち着いてるし、歳もそんなに離れてないな)

 「ちょっと考えてみるよ」
 「おう。ディナーならいつでもいいぞ」
 「じゃ、ちょっと帰ってくる」
 「またな」
  直樹はもう一度、孝太と優樹の様子を眺めてから帰宅した。
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