「魔眼持ちは不気味だ!」と家を追い出されましたが新国王も魔眼持ちに決まったようです〜戻ってこいと言われても……もう王宮にいるから手遅れです〜

よどら文鳥

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第三章

VSドブルネ伯爵

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 想像していたよりも、ドブルネ伯爵は何がなんだかわからないようで、信じられないといった表情をしている。

「そんなに驚かなくても。警備が甘すぎなんですよ」
「信じられん……ありえないことだ! 魔眼も使えぬ状況では力ずくで脱出も不可能なはずだ……。まさか! 他の捕らえた者は」
「あぁ、逃しましたよ。俺の転移魔眼で!」
「な⁉︎」

 ドブルネ伯爵は、そうとうに悔しがっている顔を浮かべていた。

「おのれ……せっかくの金になる木をよくも……」
「人身売買でもしていたのですか?」
「話す筋合いはない。貴様はここで私が消す!」

 そういうと、ドブルネ伯爵の目の色が変化した。

「魔眼か」
「違う、これはそのような禍々しい力ではないわ! 一緒にするな。これは義眼だ」
「義眼か……。強制的に魔眼の力を手にする代わりに精神にダメージを負うリスクがあるからと法律で禁止されていたはずですが」

 ドブルネ伯爵が時折見せた狂ったような発言や行動が理解できた。
 カナリアが言っていたことも辻褄があう。

「伯爵、義眼を手に入れた代償に性格が狂ったんですね。これは重罪ですよ?」
「バカめ。私は義眼如きで我を失うようなことはしないわ!」
「だいたい犯罪者ってそう言うんですよね……」

 伯爵はゲラゲラとバカ笑いをはじめた。

「それが貴様の最期のセリフとなることを後悔するが良い! 『転移‼︎』」
「は⁉︎」

 俺は思わず口に出してしまった。
 まさかとは思ったが、そのまさかだった。
 伯爵の義眼は俺と全く同じ空間干渉を展開させ、素早く俺の背後に回ったのだ。
 ナイフで俺の背中を突き刺そうとしたが、難なくかわした。

「バカな! 無詠唱で転移だと⁉︎」
「こんな至近距離ならわざわざ声に出さなくても魔眼くらい展開できますよ」
「だがありえん! 魔眼はこの屋敷内では私以外使えないはずだ」

 伯爵は脂汗をダラダラと流しながらそうとうに焦っているようだ。
 さっきまでの笑みは完全に消えている。

「くそう……『転移‼︎』」

 また先ほどと同じように俺の背後に回って攻撃をしかけようとしてきた。
 だが、俺は余裕でかわした。

「何故だ⁉︎ 義眼を駆使しているのに……貴様のような魔眼に負けてたまるか……」
「根本的に無理ですよ」

 俺は無詠唱の魔眼で、あえてドブルネ伯爵と同じように背後に転移して軽く伯爵の背中を押した。
 魔眼は鍛えることもできるが、義眼は他人の魔眼を取り入れたもの。
 成長することは難しいと聞いたことがある。
 実際に、伯爵の魔眼の性能は、毎日魔眼の訓練をしてきた俺と勝負するには無理があった。

「ぐふぅー⁉︎」

 あっけなく吹っ飛び、壁に激突した。
 マジックボックスからロープを取り出してグルグル巻きに縛り上げた。

「警備兵を常につけておくべきでしたね」
「く……」
『転移』

 ドブルネ伯爵を連れて王都へ帰還した。

 ♢

「レイス‼︎ あんた、勝手に私たちを強制送還して……って、こいつ捕まえたんだ……」
「悪かった。だが、魔眼が使えない環境下ではフィリムたちが危険になっては俺が困るからな……。特にこの男はイヤらしそうな考えを持っていたし」
「もうっ!」

 フィリムは顔を赤くしながらそっぽを向いた。

「く……捕まってたまるか! 転移!」

 ドブルネ伯爵は義眼を発動しようと頑張っていたが、詠唱だけが虚しく王宮に響いた。

「な……、なぜ発動できぬ?」
「そりゃあ義眼が使えるってわかっていればロープに力が使えないようにする付与をつけておくでしょう?」
「だが、私が義眼を使えるなどとわからなかったはず!」
「いや、魔眼の方々を救出する目的で来たんですよ。もしも悪人がいたら捕まえなきゃいけないんで! それくらい準備するのが当然でしょう?」
「くそう……くそう……」

 悔しそうな表情をしながら、ドブルネ伯爵は王宮の牢獄へ連れていかれた。

「レイス様……カナリアから全て聞きました。我々を救出してくださるためにこのような危険な目にあってまで……」
「いえいえ、カナリアが困っていたから助けに行っただけのことですよ。そんなに気にしないでください。それよりも、みなさんこれからどうする予定ですか?」
「フィリム様から話は伺っております。我々全員、レイス様の元につき、一緒に魔眼の偏見をなくす同盟に入りたいと思っています」
「全員ですか⁉︎」
「もちろんです! レイス様たちは命の恩人でもあり、感謝だけでは足りないほどの恩があります!」

 そこまで言われるとは予想外だった。
 何人かスカウトできればいいと思っていたのだが、全員が仕えてくれるとは嬉しいことだ。

「すでにヨハネスの許可も出ているわよ」
「そうか。カナリアも良かったですね!」
「はい! レイス様たちのおかげで再会できました。これからは一緒に国に仕えていく所存です」

 ヨハネスの心眼鑑定で確認しているようで、全員悪意ある者はいないことはわかった。
 カナリアのおかげで、一気に魔眼部隊を結成することに成功し、本格的な国務に入れそうだ。
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