74 / 74
第三章
VSドブルネ伯爵
しおりを挟む
想像していたよりも、ドブルネ伯爵は何がなんだかわからないようで、信じられないといった表情をしている。
「そんなに驚かなくても。警備が甘すぎなんですよ」
「信じられん……ありえないことだ! 魔眼も使えぬ状況では力ずくで脱出も不可能なはずだ……。まさか! 他の捕らえた者は」
「あぁ、逃しましたよ。俺の転移魔眼で!」
「な⁉︎」
ドブルネ伯爵は、そうとうに悔しがっている顔を浮かべていた。
「おのれ……せっかくの金になる木をよくも……」
「人身売買でもしていたのですか?」
「話す筋合いはない。貴様はここで私が消す!」
そういうと、ドブルネ伯爵の目の色が変化した。
「魔眼か」
「違う、これはそのような禍々しい力ではないわ! 一緒にするな。これは義眼だ」
「義眼か……。強制的に魔眼の力を手にする代わりに精神にダメージを負うリスクがあるからと法律で禁止されていたはずですが」
ドブルネ伯爵が時折見せた狂ったような発言や行動が理解できた。
カナリアが言っていたことも辻褄があう。
「伯爵、義眼を手に入れた代償に性格が狂ったんですね。これは重罪ですよ?」
「バカめ。私は義眼如きで我を失うようなことはしないわ!」
「だいたい犯罪者ってそう言うんですよね……」
伯爵はゲラゲラとバカ笑いをはじめた。
「それが貴様の最期のセリフとなることを後悔するが良い! 『転移‼︎』」
「は⁉︎」
俺は思わず口に出してしまった。
まさかとは思ったが、そのまさかだった。
伯爵の義眼は俺と全く同じ空間干渉を展開させ、素早く俺の背後に回ったのだ。
ナイフで俺の背中を突き刺そうとしたが、難なくかわした。
「バカな! 無詠唱で転移だと⁉︎」
「こんな至近距離ならわざわざ声に出さなくても魔眼くらい展開できますよ」
「だがありえん! 魔眼はこの屋敷内では私以外使えないはずだ」
伯爵は脂汗をダラダラと流しながらそうとうに焦っているようだ。
さっきまでの笑みは完全に消えている。
「くそう……『転移‼︎』」
また先ほどと同じように俺の背後に回って攻撃をしかけようとしてきた。
だが、俺は余裕でかわした。
「何故だ⁉︎ 義眼を駆使しているのに……貴様のような魔眼に負けてたまるか……」
「根本的に無理ですよ」
俺は無詠唱の魔眼で、あえてドブルネ伯爵と同じように背後に転移して軽く伯爵の背中を押した。
魔眼は鍛えることもできるが、義眼は他人の魔眼を取り入れたもの。
成長することは難しいと聞いたことがある。
実際に、伯爵の魔眼の性能は、毎日魔眼の訓練をしてきた俺と勝負するには無理があった。
「ぐふぅー⁉︎」
あっけなく吹っ飛び、壁に激突した。
マジックボックスからロープを取り出してグルグル巻きに縛り上げた。
「警備兵を常につけておくべきでしたね」
「く……」
『転移』
ドブルネ伯爵を連れて王都へ帰還した。
♢
「レイス‼︎ あんた、勝手に私たちを強制送還して……って、こいつ捕まえたんだ……」
「悪かった。だが、魔眼が使えない環境下ではフィリムたちが危険になっては俺が困るからな……。特にこの男はイヤらしそうな考えを持っていたし」
「もうっ!」
フィリムは顔を赤くしながらそっぽを向いた。
「く……捕まってたまるか! 転移!」
ドブルネ伯爵は義眼を発動しようと頑張っていたが、詠唱だけが虚しく王宮に響いた。
「な……、なぜ発動できぬ?」
「そりゃあ義眼が使えるってわかっていればロープに力が使えないようにする付与をつけておくでしょう?」
「だが、私が義眼を使えるなどとわからなかったはず!」
「いや、魔眼の方々を救出する目的で来たんですよ。もしも悪人がいたら捕まえなきゃいけないんで! それくらい準備するのが当然でしょう?」
「くそう……くそう……」
悔しそうな表情をしながら、ドブルネ伯爵は王宮の牢獄へ連れていかれた。
「レイス様……カナリアから全て聞きました。我々を救出してくださるためにこのような危険な目にあってまで……」
「いえいえ、カナリアが困っていたから助けに行っただけのことですよ。そんなに気にしないでください。それよりも、みなさんこれからどうする予定ですか?」
「フィリム様から話は伺っております。我々全員、レイス様の元につき、一緒に魔眼の偏見をなくす同盟に入りたいと思っています」
「全員ですか⁉︎」
「もちろんです! レイス様たちは命の恩人でもあり、感謝だけでは足りないほどの恩があります!」
そこまで言われるとは予想外だった。
何人かスカウトできればいいと思っていたのだが、全員が仕えてくれるとは嬉しいことだ。
「すでにヨハネスの許可も出ているわよ」
「そうか。カナリアも良かったですね!」
「はい! レイス様たちのおかげで再会できました。これからは一緒に国に仕えていく所存です」
ヨハネスの心眼鑑定で確認しているようで、全員悪意ある者はいないことはわかった。
カナリアのおかげで、一気に魔眼部隊を結成することに成功し、本格的な国務に入れそうだ。
「そんなに驚かなくても。警備が甘すぎなんですよ」
「信じられん……ありえないことだ! 魔眼も使えぬ状況では力ずくで脱出も不可能なはずだ……。まさか! 他の捕らえた者は」
「あぁ、逃しましたよ。俺の転移魔眼で!」
「な⁉︎」
ドブルネ伯爵は、そうとうに悔しがっている顔を浮かべていた。
「おのれ……せっかくの金になる木をよくも……」
「人身売買でもしていたのですか?」
「話す筋合いはない。貴様はここで私が消す!」
そういうと、ドブルネ伯爵の目の色が変化した。
「魔眼か」
「違う、これはそのような禍々しい力ではないわ! 一緒にするな。これは義眼だ」
「義眼か……。強制的に魔眼の力を手にする代わりに精神にダメージを負うリスクがあるからと法律で禁止されていたはずですが」
ドブルネ伯爵が時折見せた狂ったような発言や行動が理解できた。
カナリアが言っていたことも辻褄があう。
「伯爵、義眼を手に入れた代償に性格が狂ったんですね。これは重罪ですよ?」
「バカめ。私は義眼如きで我を失うようなことはしないわ!」
「だいたい犯罪者ってそう言うんですよね……」
伯爵はゲラゲラとバカ笑いをはじめた。
「それが貴様の最期のセリフとなることを後悔するが良い! 『転移‼︎』」
「は⁉︎」
俺は思わず口に出してしまった。
まさかとは思ったが、そのまさかだった。
伯爵の義眼は俺と全く同じ空間干渉を展開させ、素早く俺の背後に回ったのだ。
ナイフで俺の背中を突き刺そうとしたが、難なくかわした。
「バカな! 無詠唱で転移だと⁉︎」
「こんな至近距離ならわざわざ声に出さなくても魔眼くらい展開できますよ」
「だがありえん! 魔眼はこの屋敷内では私以外使えないはずだ」
伯爵は脂汗をダラダラと流しながらそうとうに焦っているようだ。
さっきまでの笑みは完全に消えている。
「くそう……『転移‼︎』」
また先ほどと同じように俺の背後に回って攻撃をしかけようとしてきた。
だが、俺は余裕でかわした。
「何故だ⁉︎ 義眼を駆使しているのに……貴様のような魔眼に負けてたまるか……」
「根本的に無理ですよ」
俺は無詠唱の魔眼で、あえてドブルネ伯爵と同じように背後に転移して軽く伯爵の背中を押した。
魔眼は鍛えることもできるが、義眼は他人の魔眼を取り入れたもの。
成長することは難しいと聞いたことがある。
実際に、伯爵の魔眼の性能は、毎日魔眼の訓練をしてきた俺と勝負するには無理があった。
「ぐふぅー⁉︎」
あっけなく吹っ飛び、壁に激突した。
マジックボックスからロープを取り出してグルグル巻きに縛り上げた。
「警備兵を常につけておくべきでしたね」
「く……」
『転移』
ドブルネ伯爵を連れて王都へ帰還した。
♢
「レイス‼︎ あんた、勝手に私たちを強制送還して……って、こいつ捕まえたんだ……」
「悪かった。だが、魔眼が使えない環境下ではフィリムたちが危険になっては俺が困るからな……。特にこの男はイヤらしそうな考えを持っていたし」
「もうっ!」
フィリムは顔を赤くしながらそっぽを向いた。
「く……捕まってたまるか! 転移!」
ドブルネ伯爵は義眼を発動しようと頑張っていたが、詠唱だけが虚しく王宮に響いた。
「な……、なぜ発動できぬ?」
「そりゃあ義眼が使えるってわかっていればロープに力が使えないようにする付与をつけておくでしょう?」
「だが、私が義眼を使えるなどとわからなかったはず!」
「いや、魔眼の方々を救出する目的で来たんですよ。もしも悪人がいたら捕まえなきゃいけないんで! それくらい準備するのが当然でしょう?」
「くそう……くそう……」
悔しそうな表情をしながら、ドブルネ伯爵は王宮の牢獄へ連れていかれた。
「レイス様……カナリアから全て聞きました。我々を救出してくださるためにこのような危険な目にあってまで……」
「いえいえ、カナリアが困っていたから助けに行っただけのことですよ。そんなに気にしないでください。それよりも、みなさんこれからどうする予定ですか?」
「フィリム様から話は伺っております。我々全員、レイス様の元につき、一緒に魔眼の偏見をなくす同盟に入りたいと思っています」
「全員ですか⁉︎」
「もちろんです! レイス様たちは命の恩人でもあり、感謝だけでは足りないほどの恩があります!」
そこまで言われるとは予想外だった。
何人かスカウトできればいいと思っていたのだが、全員が仕えてくれるとは嬉しいことだ。
「すでにヨハネスの許可も出ているわよ」
「そうか。カナリアも良かったですね!」
「はい! レイス様たちのおかげで再会できました。これからは一緒に国に仕えていく所存です」
ヨハネスの心眼鑑定で確認しているようで、全員悪意ある者はいないことはわかった。
カナリアのおかげで、一気に魔眼部隊を結成することに成功し、本格的な国務に入れそうだ。
24
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる