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46 レムの戦意喪失
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「やあシェリル。いつもながら綺麗だ」
「ロッ……じゃない、ポップスさんですね! こんな大規模な会場でフラフラしてて良いのですか?」
変装バージョンのロック殿下が私たちのブースにやってきた。周りのお客さんたちは、彼をロック殿下だとは思っていないようだ。
「実は毎年このイベントは参加しているのだ。楽しい祭りには何がなんでも参加すると決めている」
ロック殿下は王都がとても好きなようで、イベントに限らず常に街を出歩いている。
美味しい店やちょっとしたスポットにも詳しい。
そういうところもとても好きなのだ。
今まで黙りこんで呆然としていたガルカたちが変装しているロック殿下に気がついた。
「あ! 服を三着買っていった男!」
「なんでそんな人がシェリルのブースにいるのよ!」
これは流石に注意した方がいいのかもしれない。知らないとはいえ、王子殿下に対して無礼をしそうで怖い。
「ふむ、説明が必要なのか? 私はシェリルのデザインした服の大ファンなのだよ。ここに来ないはずがない」
「なぜだ……レムが作ったデザイン服を三着買っていったではないか。そんなお前がシェリルのファンだと……!?」
「私は服が大好きでね。たとえ駄作でも一着は買うようにしている」
「「なっ!?」」
ロック殿下、遠回しに物凄くディスってる……。
「ちなみに三着買った理由は、一着は駄作部門の保存用。残り二着は囚人に着せて恥ずかしがらめさせ外を歩かせるためである」
「はぁ!? 私の作った服が恥ずかしいですって!?」
「それよりも囚人に着せるって……お前は警備兵なのか!?」
「違う。だが、いずれ君たちとはまた会うことになるだろう。その時は容赦はしないぞ」
普段は温厚なロック殿下が、ちょっと怖い口調になっている。
「くそう……たかが警備兵のくせに偉そうに……。レム! 俺は客呼びをする。あんな奴らに負けるはずがない! まだ宣伝をしていなかったから売れていないだけだ! 逆転させるぞ!」
「ガルカ、お願いね……」
レムはすでに落ち込んでいるように見えた。
流石に自分でデザインした服をあれ程までに言われたらショックだろう。しかも買ってくれた相手だし。
あまり深入りはせずに私たちの任務をこなしていった。
それにしても隣にロック殿下がいると緊張してしまう。
見た目は変装バージョンのポップスさんではあるが、今となってはどっちの姿でもドキドキしてしまうのだ。
「流石シェリルのデザインした服だな。全部完売してしまうとは……」
「……当たり前。シェリル様のデザイン、今となっては国中から注目を浴びている」
少し照れてしまった。
予想以上の売れ方を自らが直接販売したことで、とても嬉しかったのだから。
「ところでシェリル……すっかり忘れていたのだが、今日限定販売の服ってまだ工場にいけばあるだろうか?」
「い……いえ、これはイベント用の服だったので、もうないかと……」
「なんだって!?」
ロック殿下がしゃがみ込んでしまった。
「なんということだ……私はシェリルのデザインした服をコンプリートする予定だったのに……これでは」
婚約者がファンでいてくれるのは嬉しい。
ここはなんとかしてあげたいと思ってしまう。
「追加で販売できるようにお願いしてみましょうか」
「そんなことが許されるのか……?」
「はい。そもそも以前、初めてお会いしたときに作ったデザインも一着だけ作って愛用してくださっているじゃないですか。同じように致します」
「なんと! それは嬉しい! ではわがままを言うとだな、飾り用、自分で着る用、服が破けたりした場合の予備用、予備用の予備、更にその予備として五着はほしい」
そんなに破損しやすい生地ではないのだが。
しかも今回の限定商品は極寒地帯で着るような服である。
ロック殿下はいつそんなに着る機会があるのだろうか……。
「ロッ……じゃない、ポップスさんですね! こんな大規模な会場でフラフラしてて良いのですか?」
変装バージョンのロック殿下が私たちのブースにやってきた。周りのお客さんたちは、彼をロック殿下だとは思っていないようだ。
「実は毎年このイベントは参加しているのだ。楽しい祭りには何がなんでも参加すると決めている」
ロック殿下は王都がとても好きなようで、イベントに限らず常に街を出歩いている。
美味しい店やちょっとしたスポットにも詳しい。
そういうところもとても好きなのだ。
今まで黙りこんで呆然としていたガルカたちが変装しているロック殿下に気がついた。
「あ! 服を三着買っていった男!」
「なんでそんな人がシェリルのブースにいるのよ!」
これは流石に注意した方がいいのかもしれない。知らないとはいえ、王子殿下に対して無礼をしそうで怖い。
「ふむ、説明が必要なのか? 私はシェリルのデザインした服の大ファンなのだよ。ここに来ないはずがない」
「なぜだ……レムが作ったデザイン服を三着買っていったではないか。そんなお前がシェリルのファンだと……!?」
「私は服が大好きでね。たとえ駄作でも一着は買うようにしている」
「「なっ!?」」
ロック殿下、遠回しに物凄くディスってる……。
「ちなみに三着買った理由は、一着は駄作部門の保存用。残り二着は囚人に着せて恥ずかしがらめさせ外を歩かせるためである」
「はぁ!? 私の作った服が恥ずかしいですって!?」
「それよりも囚人に着せるって……お前は警備兵なのか!?」
「違う。だが、いずれ君たちとはまた会うことになるだろう。その時は容赦はしないぞ」
普段は温厚なロック殿下が、ちょっと怖い口調になっている。
「くそう……たかが警備兵のくせに偉そうに……。レム! 俺は客呼びをする。あんな奴らに負けるはずがない! まだ宣伝をしていなかったから売れていないだけだ! 逆転させるぞ!」
「ガルカ、お願いね……」
レムはすでに落ち込んでいるように見えた。
流石に自分でデザインした服をあれ程までに言われたらショックだろう。しかも買ってくれた相手だし。
あまり深入りはせずに私たちの任務をこなしていった。
それにしても隣にロック殿下がいると緊張してしまう。
見た目は変装バージョンのポップスさんではあるが、今となってはどっちの姿でもドキドキしてしまうのだ。
「流石シェリルのデザインした服だな。全部完売してしまうとは……」
「……当たり前。シェリル様のデザイン、今となっては国中から注目を浴びている」
少し照れてしまった。
予想以上の売れ方を自らが直接販売したことで、とても嬉しかったのだから。
「ところでシェリル……すっかり忘れていたのだが、今日限定販売の服ってまだ工場にいけばあるだろうか?」
「い……いえ、これはイベント用の服だったので、もうないかと……」
「なんだって!?」
ロック殿下がしゃがみ込んでしまった。
「なんということだ……私はシェリルのデザインした服をコンプリートする予定だったのに……これでは」
婚約者がファンでいてくれるのは嬉しい。
ここはなんとかしてあげたいと思ってしまう。
「追加で販売できるようにお願いしてみましょうか」
「そんなことが許されるのか……?」
「はい。そもそも以前、初めてお会いしたときに作ったデザインも一着だけ作って愛用してくださっているじゃないですか。同じように致します」
「なんと! それは嬉しい! ではわがままを言うとだな、飾り用、自分で着る用、服が破けたりした場合の予備用、予備用の予備、更にその予備として五着はほしい」
そんなに破損しやすい生地ではないのだが。
しかも今回の限定商品は極寒地帯で着るような服である。
ロック殿下はいつそんなに着る機会があるのだろうか……。
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