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10【視点】ジューリーがいなくなった家
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「ちょっとー! ちょっとちょっとちょっとーーーー!! 私の服がきったないんですけど! お母様ったら洗濯してくれなかったのですか?」
「ちゃんとその服も洗ったわよ! 汚いわけないでしょう!」
「でも今までだったら、しっかりとシワだって取れてたし。それにこれ、なんか少し臭うし……」
「ちょっと貸しなさい。……。……!? 確かに臭うわね。これ、お父さんの靴下の臭いがするような気が……」
マーヤの母親であるミーンは慣れない洗濯に戸惑っていた。
今まではジューリーに全てを任せていたので、何年もの間家事をしてこなかったからである。
「お父様の足の臭さが充満した服なんて着れないわよ。ねぇお母様。もう一回洗ってくださらない?」
「そんなに言うならマーヤちゃんが自分でやりなさいよ」
マーヤは気まずい顔になる。
マーヤとて家の作業など一度もしたことがない。
洗濯のやり方すらわかっていないのだ。
「もう! ジューリー姉様だったらこんなの簡単にやってくれていたでしょう? 娘ができて母親ができないわけないでしょ?」
「だったら妹のマーヤちゃんだってできるはずよ。練習しなさい」
「うぅ……!」
ジューリーが家から出てしまったことで、アルファード家が早速トラブルだらけになっていた。
「ジューリーちゃんったら、せっかく今まで本当の母親のつもりで接してあげていたのに……。勝手に家を飛び出すなんてどういう教育をしたらああなっちゃうのかしらね!」
「ジューリー姉様ったら家出するのは勝手ですけど、そんなに長くは一人でいられないでしょ? どうせ泣いて帰ってくるわよ」
「帰ってきたら今までの二倍は働いてもらわないといけないわね! うちじゃ使用人を雇えるほどのお金はないんだから……」
「はぁ、早くジューリー姉様帰ってきてほしい……。まだザーレム様との結婚までは時間がかかりそうだし……」
洗濯はマーヤが自分でやることになった。
文句を言いながらも不器用なりに洗う。
だが、乾かす行為を全くわかっていなかったため、服を伸ばさず放置しベッドの上に放り投げていたため、更に服が臭くなってしまうことを後に知ることになる。
♢
「ミーンよ。今日の夕飯もパンだけか!?」
「仕方ないでしょう! ご飯なんてもう十年以上作ってないんですもの。文句があるならあなたが作ってくださらない?」
「ぐ……。くそう、ジューリーのバカめ。どこで道草しているのだ。家に住まわせてやっていたのだから働いて当然だと言うものを。勝手にいなくなりおって!」
「全部ジューリー姉様がいけないのよ!」
パンを頬張りながらジューリーに対しての愚痴だけを言い合っていた。
「ジューリーが出てからもう十日はたつだろう? まさか野たれ死んだか!?」
「そんなことはないはずですよ。もしジューリーちゃんがどこかで死んでしまっていたら、国から通達が来るはず!」
「でもジューリー姉様は急に飛び出て行ったんですよ。そんなに何日も食料があるわけでもないですし」
「……あいつ。どこかの家に逃げおったな! 卑怯な女め……!」
ニッシモの予想は当たっていた。
どこかの民衆の家に転がり込んで家事をする代わりにご飯を少しだけ食べさせてもらい寝床を確保していると思っていたのだ。
だが、自分の経営している商店の重要な取引先の大商人の元へ行っていることなど夢にも思わなかったのである。
この数日後、アルファード家の商店が大変な事態になることをニッシモは知らなかった。
「ちゃんとその服も洗ったわよ! 汚いわけないでしょう!」
「でも今までだったら、しっかりとシワだって取れてたし。それにこれ、なんか少し臭うし……」
「ちょっと貸しなさい。……。……!? 確かに臭うわね。これ、お父さんの靴下の臭いがするような気が……」
マーヤの母親であるミーンは慣れない洗濯に戸惑っていた。
今まではジューリーに全てを任せていたので、何年もの間家事をしてこなかったからである。
「お父様の足の臭さが充満した服なんて着れないわよ。ねぇお母様。もう一回洗ってくださらない?」
「そんなに言うならマーヤちゃんが自分でやりなさいよ」
マーヤは気まずい顔になる。
マーヤとて家の作業など一度もしたことがない。
洗濯のやり方すらわかっていないのだ。
「もう! ジューリー姉様だったらこんなの簡単にやってくれていたでしょう? 娘ができて母親ができないわけないでしょ?」
「だったら妹のマーヤちゃんだってできるはずよ。練習しなさい」
「うぅ……!」
ジューリーが家から出てしまったことで、アルファード家が早速トラブルだらけになっていた。
「ジューリーちゃんったら、せっかく今まで本当の母親のつもりで接してあげていたのに……。勝手に家を飛び出すなんてどういう教育をしたらああなっちゃうのかしらね!」
「ジューリー姉様ったら家出するのは勝手ですけど、そんなに長くは一人でいられないでしょ? どうせ泣いて帰ってくるわよ」
「帰ってきたら今までの二倍は働いてもらわないといけないわね! うちじゃ使用人を雇えるほどのお金はないんだから……」
「はぁ、早くジューリー姉様帰ってきてほしい……。まだザーレム様との結婚までは時間がかかりそうだし……」
洗濯はマーヤが自分でやることになった。
文句を言いながらも不器用なりに洗う。
だが、乾かす行為を全くわかっていなかったため、服を伸ばさず放置しベッドの上に放り投げていたため、更に服が臭くなってしまうことを後に知ることになる。
♢
「ミーンよ。今日の夕飯もパンだけか!?」
「仕方ないでしょう! ご飯なんてもう十年以上作ってないんですもの。文句があるならあなたが作ってくださらない?」
「ぐ……。くそう、ジューリーのバカめ。どこで道草しているのだ。家に住まわせてやっていたのだから働いて当然だと言うものを。勝手にいなくなりおって!」
「全部ジューリー姉様がいけないのよ!」
パンを頬張りながらジューリーに対しての愚痴だけを言い合っていた。
「ジューリーが出てからもう十日はたつだろう? まさか野たれ死んだか!?」
「そんなことはないはずですよ。もしジューリーちゃんがどこかで死んでしまっていたら、国から通達が来るはず!」
「でもジューリー姉様は急に飛び出て行ったんですよ。そんなに何日も食料があるわけでもないですし」
「……あいつ。どこかの家に逃げおったな! 卑怯な女め……!」
ニッシモの予想は当たっていた。
どこかの民衆の家に転がり込んで家事をする代わりにご飯を少しだけ食べさせてもらい寝床を確保していると思っていたのだ。
だが、自分の経営している商店の重要な取引先の大商人の元へ行っていることなど夢にも思わなかったのである。
この数日後、アルファード家の商店が大変な事態になることをニッシモは知らなかった。
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