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せめて働いている人たちに食べてもらいたい
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「聖女様……、本当に申し訳ございません。私には構わず、どうか聖女様が食べてください」
「大丈夫だからアメリが食べて。聖なる力を発動しなくなってから調子が良いみたいだし」
むしろ逆である。
私は御者のアメリに心配させたくないために嘘をついた。
そうでも言わないと御者は遠慮して食べ物に手をつけようとしないと思ったからだ。
「聖女様がいなくなった先の未来が不安でしかありません……」
「私も、仲良くしてくれていた人たちを置いて出てきてしまったことは申し訳なく思うよ……」
「いえ、皆わかってくれると思いますよ。あのドケチで分からず屋の国王になってからというもの、国が混乱だらけですから! たとえどこへ行かれたとしても、聖女様のことを悪く思っている者などいないはずです」
アメリの優しい言葉を聞き、私は幾分か気持ち的に救われた。
「ありがとう」
「むしろ聖女様の恵みがなければ今頃私も馬も野垂れ死んでいたでしょう。感謝をするのは私のほうですから。しかし、本当に大丈夫なのですか? もう五日も食べていませんよね……?」
「えぇ。聖なる力を使っていないから、その分食べなくても良いみたい」
嘘である。
いくら聖女だからと言っても私は人間だ。
食べなきゃ死ぬ。
だが、全くなにも食べていないわけではない。
馬の休憩中、私はその辺を散策しがてら食べられそうな雑草や天然のキノコをむしり取って食べていた。
木の登って木のみを採取することもあった。
毒キノコや毒入り雑草の可能性もあるが、今までの知識を活かしてなんとか回避している。
飢え死にするよりはマシだ。
仮に毒にかかっても、私は我慢強さだけは自信があるため、アメリたちには腹痛その他もろもろを隠し通すつもりだった。
幸い毒の感覚は今のところないため、選別の運が良いのだろう。
順調に進んでいるため、既にホワイトラブリー王国の領域には入っているはずだ。
王都到着までは、予定どおりあと二日くらいだろう。
到着してしまえば、御者の帰りの食料を手に入れることもできるだろうし、もう少しの辛抱だ。
「聖女様……。実は、このまま私もホワイトラブリー王国に移民しようかと考えていまして……」
「でも、アメリにも家族や友人がいるでしょう?」
アメリとは、馬車で共にして随分と仲良くさせてもらっている。
もちろんホワイトラブリー王国の返事次第だが、友達が一緒に同じ国にいてくれるのは心強い。
だが、すぐに「おいでよおいで」とは言えなかった。
「いえ、私は元々孤児院で育ったので家族はいません。それに、社畜のような過労はもうこりごりなので……」
「アメリも過労させられていたんだ」
「はい。ですから、今こうやって長旅をしていられる間は仕事とはいっても天国ですね」
一日中馬の操縦をした上に、馬の世話をしたりしていてものすごく大変な仕事だとは思う。
それでも天国と言ってしまうあたりが、ブラークメリル王国の、特に王宮関連の仕事が過酷なのかがよくわかる。
「でも、この馬だってずっと借りてたらどれだけ請求されてしまうか……」
「いえ、この馬は私が財産をはたいて最近購入した馬ですから問題ありません。それにロブリー陛下から小額の報酬を受け取るよりも、聖女様がいる国に避難した方が無難かと……」
「ホワイトラブリー王国の陛下に頼んでみよう! 私からもお願いするから」
「お手数おかけしてしまい申し訳ございません……」
アメリが泣きながら私の両手をグッと握ってきた。
話せばわかってくれる陛下だと良いな。
もう少しで王都に辿り着く。
それまでは一緒に飢え死にしないように頑張って乗り切ろう。
「大丈夫だからアメリが食べて。聖なる力を発動しなくなってから調子が良いみたいだし」
むしろ逆である。
私は御者のアメリに心配させたくないために嘘をついた。
そうでも言わないと御者は遠慮して食べ物に手をつけようとしないと思ったからだ。
「聖女様がいなくなった先の未来が不安でしかありません……」
「私も、仲良くしてくれていた人たちを置いて出てきてしまったことは申し訳なく思うよ……」
「いえ、皆わかってくれると思いますよ。あのドケチで分からず屋の国王になってからというもの、国が混乱だらけですから! たとえどこへ行かれたとしても、聖女様のことを悪く思っている者などいないはずです」
アメリの優しい言葉を聞き、私は幾分か気持ち的に救われた。
「ありがとう」
「むしろ聖女様の恵みがなければ今頃私も馬も野垂れ死んでいたでしょう。感謝をするのは私のほうですから。しかし、本当に大丈夫なのですか? もう五日も食べていませんよね……?」
「えぇ。聖なる力を使っていないから、その分食べなくても良いみたい」
嘘である。
いくら聖女だからと言っても私は人間だ。
食べなきゃ死ぬ。
だが、全くなにも食べていないわけではない。
馬の休憩中、私はその辺を散策しがてら食べられそうな雑草や天然のキノコをむしり取って食べていた。
木の登って木のみを採取することもあった。
毒キノコや毒入り雑草の可能性もあるが、今までの知識を活かしてなんとか回避している。
飢え死にするよりはマシだ。
仮に毒にかかっても、私は我慢強さだけは自信があるため、アメリたちには腹痛その他もろもろを隠し通すつもりだった。
幸い毒の感覚は今のところないため、選別の運が良いのだろう。
順調に進んでいるため、既にホワイトラブリー王国の領域には入っているはずだ。
王都到着までは、予定どおりあと二日くらいだろう。
到着してしまえば、御者の帰りの食料を手に入れることもできるだろうし、もう少しの辛抱だ。
「聖女様……。実は、このまま私もホワイトラブリー王国に移民しようかと考えていまして……」
「でも、アメリにも家族や友人がいるでしょう?」
アメリとは、馬車で共にして随分と仲良くさせてもらっている。
もちろんホワイトラブリー王国の返事次第だが、友達が一緒に同じ国にいてくれるのは心強い。
だが、すぐに「おいでよおいで」とは言えなかった。
「いえ、私は元々孤児院で育ったので家族はいません。それに、社畜のような過労はもうこりごりなので……」
「アメリも過労させられていたんだ」
「はい。ですから、今こうやって長旅をしていられる間は仕事とはいっても天国ですね」
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それでも天国と言ってしまうあたりが、ブラークメリル王国の、特に王宮関連の仕事が過酷なのかがよくわかる。
「でも、この馬だってずっと借りてたらどれだけ請求されてしまうか……」
「いえ、この馬は私が財産をはたいて最近購入した馬ですから問題ありません。それにロブリー陛下から小額の報酬を受け取るよりも、聖女様がいる国に避難した方が無難かと……」
「ホワイトラブリー王国の陛下に頼んでみよう! 私からもお願いするから」
「お手数おかけしてしまい申し訳ございません……」
アメリが泣きながら私の両手をグッと握ってきた。
話せばわかってくれる陛下だと良いな。
もう少しで王都に辿り着く。
それまでは一緒に飢え死にしないように頑張って乗り切ろう。
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