6 / 10
6 縁談の返事
しおりを挟む
あれからあっという間に七日が過ぎ、ギャレット殿下に報告する日が来てしまった。
私の決意は固い。
覚悟を決めて再びギャレット殿下の応接室へと入った。
「答えは決まったかい?」
「はい」
「よし、ひとまず座りたまえ」
前回と同じように椅子へと腰掛ける。
だが、何故か殿下は私の真横に座るのだ。
そして私の肩へ腕をかけてくる。
「あの……これは一体?」
「答えは出ているのだろう? ならば問題ないだろ?」
「いえ。本日はお断りにきました」
「はぁああああああああああ!?」
耳元で、でかい声だして騒がないでほしい。
一瞬素がでてしまい、思いっきり迷惑な表情をしてしまった。
逃げるように一度立ち上がる。
「申し訳ございません。大変名誉なことだとは存じております。しかしながら、私の気持ちは今も別の人のところにあります。愛する方が他にいる状態で殿下と結婚するのは失礼にあたるかと」
「そんなことは問題ない。折角なのでハッキリと言っておくが欲しいのはヒマリの身体なのだ」
この王子、平気でとんでもないことを言い出した……。
「王族の子孫も産まれ、ファールド家の地位も上がるぞ。私が満足したらあとは他の男とくっつくなり好きにしても良い。これほど楽な結婚はないだろう? 私としても合意の上で関係を持てる。お互いウィンウィンの関係だろ」
団長が言っていたとおり、ギャロット殿下はゲスなようだ。
こんな男とは絶対に結婚してなるものか。
「それに、お前の愛する者はレン騎士爵だろう?」
「なぜそのことを知っているのですか?」
「私は調べればなんでもわかるのだよ。特に気になった女の情報ならばな。良いことを教えてやろうか。私にヒマリを譲るのならば騎士爵としての地位は存続させ、ジェイムス家の問題も全て解決してやろうと言ったら素直に従ったのだよ。まったく、そんな軽率な男を好きでいられるとはな……」
「そんなバカな!」
レンがそんなことを言うなんて絶対にありえない。
ジェイムス家は借金が多額にあるため、レンが働いてなんとかしようとしている。
今まで何度も甘い誘惑で借金返済するような声がかかっていたが、レンは頑なに断り続けてきた。
昔からずっと、そういう真っ直ぐな男だから好きなのだ。
「ヒマリよ、簡単に女を捨てるような男は忘れるのだ。私は沢山の女を抱くし愛するが、捨てるようなことはしないと誓おう」
「でも私は……」
殿下のこんな言葉に惑わされてたまるものか。
他の男のところへ行ってもいいと平気で言うような男が、捨てるようなことはしないとよく言えたもんだ。
それに、レンはそんな酷いことをする人じゃない。
そう思ってはいるが、何度も同じような言葉をずっと言ってくる殿下の言葉を聞いていたら、どっちなのだろうかと若干惑わされてしまっている。
「ジェイムス家の借金をレン騎士爵が一人で解決しようとしていたのだろう? これはヒマリと結婚するためのおまけのようなものだ。そもそもは、ファールド家の地位を上げようとお前の両親に言ったら泣いて喜んでおったわ」
「お父様とお母様が!?」
「あぁ。だが婚約者がいたのだろう? その者ともすぐに引き離すと言ってくれたのもお前の親だ」
ギャレット殿下の話を聞いているだけで、本当は殿下の言っていることが全て本当のことなのかもしれないと思うようになってしまっている。
私の両親は地位とお金にうるさい人たちだ。
殿下か使いの者からそのように聞かされたら私とレンの関係を引き離そうとする可能性は十分に考えられる。
「さぁ、わかったら大人しく私の元へ抱きついてこい」
「それは……お断りします」
レン以外の男に抱きつくなど死んでもゴメンだ。
私の決意は固い。
覚悟を決めて再びギャレット殿下の応接室へと入った。
「答えは決まったかい?」
「はい」
「よし、ひとまず座りたまえ」
前回と同じように椅子へと腰掛ける。
だが、何故か殿下は私の真横に座るのだ。
そして私の肩へ腕をかけてくる。
「あの……これは一体?」
「答えは出ているのだろう? ならば問題ないだろ?」
「いえ。本日はお断りにきました」
「はぁああああああああああ!?」
耳元で、でかい声だして騒がないでほしい。
一瞬素がでてしまい、思いっきり迷惑な表情をしてしまった。
逃げるように一度立ち上がる。
「申し訳ございません。大変名誉なことだとは存じております。しかしながら、私の気持ちは今も別の人のところにあります。愛する方が他にいる状態で殿下と結婚するのは失礼にあたるかと」
「そんなことは問題ない。折角なのでハッキリと言っておくが欲しいのはヒマリの身体なのだ」
この王子、平気でとんでもないことを言い出した……。
「王族の子孫も産まれ、ファールド家の地位も上がるぞ。私が満足したらあとは他の男とくっつくなり好きにしても良い。これほど楽な結婚はないだろう? 私としても合意の上で関係を持てる。お互いウィンウィンの関係だろ」
団長が言っていたとおり、ギャロット殿下はゲスなようだ。
こんな男とは絶対に結婚してなるものか。
「それに、お前の愛する者はレン騎士爵だろう?」
「なぜそのことを知っているのですか?」
「私は調べればなんでもわかるのだよ。特に気になった女の情報ならばな。良いことを教えてやろうか。私にヒマリを譲るのならば騎士爵としての地位は存続させ、ジェイムス家の問題も全て解決してやろうと言ったら素直に従ったのだよ。まったく、そんな軽率な男を好きでいられるとはな……」
「そんなバカな!」
レンがそんなことを言うなんて絶対にありえない。
ジェイムス家は借金が多額にあるため、レンが働いてなんとかしようとしている。
今まで何度も甘い誘惑で借金返済するような声がかかっていたが、レンは頑なに断り続けてきた。
昔からずっと、そういう真っ直ぐな男だから好きなのだ。
「ヒマリよ、簡単に女を捨てるような男は忘れるのだ。私は沢山の女を抱くし愛するが、捨てるようなことはしないと誓おう」
「でも私は……」
殿下のこんな言葉に惑わされてたまるものか。
他の男のところへ行ってもいいと平気で言うような男が、捨てるようなことはしないとよく言えたもんだ。
それに、レンはそんな酷いことをする人じゃない。
そう思ってはいるが、何度も同じような言葉をずっと言ってくる殿下の言葉を聞いていたら、どっちなのだろうかと若干惑わされてしまっている。
「ジェイムス家の借金をレン騎士爵が一人で解決しようとしていたのだろう? これはヒマリと結婚するためのおまけのようなものだ。そもそもは、ファールド家の地位を上げようとお前の両親に言ったら泣いて喜んでおったわ」
「お父様とお母様が!?」
「あぁ。だが婚約者がいたのだろう? その者ともすぐに引き離すと言ってくれたのもお前の親だ」
ギャレット殿下の話を聞いているだけで、本当は殿下の言っていることが全て本当のことなのかもしれないと思うようになってしまっている。
私の両親は地位とお金にうるさい人たちだ。
殿下か使いの者からそのように聞かされたら私とレンの関係を引き離そうとする可能性は十分に考えられる。
「さぁ、わかったら大人しく私の元へ抱きついてこい」
「それは……お断りします」
レン以外の男に抱きつくなど死んでもゴメンだ。
78
あなたにおすすめの小説
あの子を好きな旦那様
はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」
目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。
※小説家になろうサイト様に掲載してあります。
白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
瀬月 ゆな
恋愛
ロゼリエッタは三歳年上の婚約者クロードに恋をしている。
だけど、その恋は決して叶わないものだと知っていた。
異性に対する愛情じゃないのだとしても、妹のような存在に対する感情なのだとしても、いつかは結婚して幸せな家庭を築ける。それだけを心の支えにしていたある日、クロードから一方的に婚約の解消を告げられてしまう。
失意に沈むロゼリエッタに、クロードが隣国で行方知れずになったと兄が告げる。
けれど賓客として訪れた隣国の王太子に付き従う仮面の騎士は過去も姿形も捨てて、別人として振る舞うクロードだった。
愛していると言えなかった騎士と、愛してくれているのか聞けなかった令嬢の、すれ違う初恋の物語。
他サイト様でも公開しております。
イラスト 灰梅 由雪(https://twitter.com/haiumeyoshiyuki)様
呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました
しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。
そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。
そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。
全身包帯で覆われ、顔も見えない。
所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。
「なぜこのようなことに…」
愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。
同名キャラで複数の話を書いています。
作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。
この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。
皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。
短めの話なのですが、重めな愛です。
お楽しみいただければと思います。
小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
あなたが幸せになるために
月山 歩
恋愛
幼馴染の二人は、お互いに好きだが、王子と平民のため身分差により結婚できない。王子の結婚が迫ると、オーレリアは大好きな王子が、自分のために不貞を働く姿も見たくないから、最後に二人で食事を共にすると姿を消した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる