わたしのヤンデレ吸引力が強すぎる件

こいなだ陽日

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後日談

後日談その1「新妻の悩み」(1)

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※本編終了後のお話なので色々とネタバレしております。未読のかたはご注意ください。
※本作は掲載許可を頂いておりますが、編集様の目は通っていません。個人的に書いたお話となります。
※ラブシーンのある回につきまして、本番有りだと★、本番なしだと☆マークがついております。
※後日談その1は全4話、後日談その2は全2話になります。合計6話分を短期で連載します。


後日談その1【新妻の悩み】(1)

(どうしよう、困ったわ……)

 湯浴みを終えたメーシャは、青ざめながら濡れた体を拭く。お風呂上がりはさっぱりして気持ちよくなれるはずなのに、ひどく気落ちしてしまった。

 今、メーシャはアルフレッドの離宮にいる。普段は王族祭司の補佐として全国を飛び回っているものの、アルフレッドが管轄する祭りがない時には、この離宮で仕事をすることになっていた。
 祭りに赴かなくても、暇になるわけではない。アルフレッドには祭司以外にも王族としての仕事が山積みであり、それを補佐するメーシャも毎日沢山の業務をこなさなければならなかった。

 今日も朝から晩まで、めいいっぱい仕事だ。メーシャの仕事は終わったが、アルフレッドはまだやらなければならない仕事が残っているようである。王族の仕事は特別なので、補佐にも見せられないものがあるらしく、メーシャは先に自室に戻ることになった。

 もともとアルフレッドの部屋だったその場所は、今では夫婦四人の部屋となっている。部屋といっても庶民の一軒家くらいの面積があるので、四人で使ってもまだ広い。
 仕事を終えたメーシャが部屋に戻ってくると、そこには医官のユスターも騎士のギグフラムもいなかった。今日はメーシャが一番早かったようだ。

 その日は蒸し暑くて、肌がしっとりと汗ばんでいる。すぐにでも体を綺麗にしたくて、メーシャは先に一人で湯浴みをすることにした。

 アルフレッドたち三人と婚約している間も、結婚したあとも、なにかにつけて一緒に入浴していた。本当は一人で入浴したいのだが、必ず誰かが浴室までついてくるのだ。彼らはメーシャの体を丁寧に洗ってくれるけれど、一人でゆっくりしたい時もある。
 今、夫たちはいない。すぐに汗を流したいし、たまには落ち着いて湯船につかりたいので、これはいい機会だとメーシャは思った。

 王族専用の浴場は部屋続きになっていた。いつでも温かい湯が張られていて、メーシャは一人でのびのびと堪能する。

 ――しかし、体を洗っている時に、メーシャは自分の体のとある変化に気付いてしまった。いつも体を洗われているから、自分では気付けずにいたのだ。

(なにこれ? おかしいわよね……?)

 それを発見した時はかなり動揺した。もしかして、なにか悪い菌が体に入ってしまったのかもしれない。今まで聞いたことのない症状だし、命に関わるようなものだったらどうしようかと、不安が押し寄せてくる。

 それでも、メーシャの夫の中には医官であるユスターがいる。彼はとても優秀だし、王族しか閲覧できない医学書を沢山読んでいた。もし悪い病気に冒されていても、いつかメーシャの顔の怪我を治そうとしてくれた時のように、彼なら特別な治療法を知っているかもしれない。

(不安だけど、ユスターに相談してみましょう……)

 せっかく一人での湯浴みだったのに、楽しむこともできなくて気が沈んでしまう。体を拭き終わり着替え終わった後、不安を抱きながらユスターの帰りを待つことにした。

 
   ◆  ◆  ◆  ◆

 
 最初に部屋に戻ってきたのはアルフレッドだった。

「お疲れ様です、アルフレッド様」

 不安を押し殺して、笑顔を浮かべながら出迎えると、彼は片眉を上げる。

「メーシャ、どうした。なにかあったのか?」

 彼は一目でメーシャの様子がおかしいことに気付いたらしい。

「……! わかるのですか?」
「君は僕の最愛の人だ。そんなことくらい、すぐにわかるさ。……顔色が悪いな。一体どうした? 話してみなさい」
「少し、体の調子がおかしいみたいで……」
「熱は? どこか痛むか? それとも、気分が悪いのか?」

 彼が心配した様子でメーシャの額に手を当ててくる。
 そこにユスターとギグフラムが戻ってきた。

「ただいま帰りました」
「今日は俺たちが最後だったのか……と、メーシャ、どうした?」

 ユスターが剣呑な表情を浮かべながら早足で近寄ってくる。彼もまた、メーシャの様子がおかしいことに気付いたようだ。

「メーシャの調子が悪いみたいだ」
「なんだと?」

 ユスターはメーシャの手首を掴むと脈を測り始めた。

「症状は? いつから調子が悪いのか、具体的に述べろ」

 彼は険しい表情を浮かべながら問いかけてくる。アルフレッドやギグフラムもまた、心配そうにメーシャを見ていた。
 三人の夫の視線がメーシャに集まる。

 ――だからこそ、メーシャは自分の体に起きていることを言えなくなってしまった。

 皆の前で言えるような症状ではないのだ。頬が赤く染まる。

「その、皆の前では言いづらくて……」
「わかった。おい、アルフレッド。すぐに客間を用意させろ。そこで診察する」
「承知。だが、メーシャが心配だ。できれば、僕も立ち会いたい」
「駄目だ。俺たちの前では言い辛いことらしい。症状を正直に話してもらわなければ支障が出るし、もし感染症を煩っていたらどうするつもりだ? 第三王子のお前は今すぐメーシャから離れろ」
「……っ」

 ユスターの言うことは正論だ。第三王子という立場上、感染症の恐れがあるのなら容易には近づけない。アルフレッドはしぶしぶと後方に下がる。

 もっとも、ユスターとて王族であるが、医官である彼はアルフレッドだけではなくメーシャの主治医でもある。だから、彼だけがメーシャの側に立っていられた。
 心配しているのにメーシャに近づけないアルフレッドが悔しそうに言う。

「客間を手配しよう。他に必要なものは?」
「診察しなければわからない。だが、人払いはしてくれ。脈も正常だし顔色もいつも通り、目に充血も黄疸も見られない。とはいえ、きちんとした診察をしなければ感染症の恐れも捨てきれない。なにかあれば、呼び鈴を鳴らす」

 仕事道具から布を取りだしたユスターは自らの口元を覆い、手袋を身につける。
 きりっと釣り上がった眼差しは真剣だけれど、その奥にメーシャを心配する色も灯っていて、こんな状況なのにメーシャの胸は騒いでしまった。
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