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テル王子視点

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「王子殿下、お待ちしておりました。歓迎致します」
「ありがとね」

 僕は無害そうな笑顔で笑う。すると男も女も頬を染めて簡単に政治方面では見くびってくれる。都合のいい笑顔だ。上手くいく確証をえながらも横に刺してある剣に手を置く。

 案内されあの子の両親と兄弟がいるところに行く。楽しみだな。ルンルンでついて行くときらびやかな大きい応接間に通された。横に広いふかふかな椅子が二つ、右と左にそしてふかふかの普通の椅子が二つ、奥と手前にありあの子の両親と兄弟達が座っていた。

「王子殿下、よくいらっしゃいました。どうぞおすわりください」
「ありがとう!座らせてもらうよ」

 手前のふかふかの普通の椅子の方へと誘導される。
 表面上、形だけは敬っているもののふてぶてしく僕を舐めているのが表情から伺える。可愛く育ったあの子はまだ手に入らないのかな。楽しみだな。
 メイドがお茶やお茶菓子を持ってくるが僕を意識しているのが視線でわかってしまう。三流としかいいようがない。

「それで本題なんだけど僕は君の家のお嬢さんを妻に欲しいんだ。昔見た時に一目惚れしてしまってね。社交界とかに顔を出さないからガッカリしたよ」

 お芝居っぽく困り顔というのをしてみる。

「娘は病弱な為、社交界に出れなくて申し訳ございません。一目惚れですか...」

 あの子の父親である公爵当主は考える素振りをする。今、娘を婚約者として出すか予定通り殺すか損得を考えているのだろう。僕はあの子の事ならなんでも知っている。病弱なんかじゃなくて地下に閉じ込められていることも暴力を受けていることも。

 なぜ助けないかって?そんなの簡単だよ。その方が可愛いからさ。

「うん!とりあえず婚約だけでもどうかな?病弱なら会うのは先でもいいからさ。今日は書類に判を押してもらうためだけに来たからね」

 兄弟達は僕のことを所詮王族だと言う目で見ている。なんでも思い通りになると思っているガキだと。
 でもこの件は僕の思い通りになるよ。この判を押すことにメリットの方が多いからね。まず王家の親戚になれる。ここはあの子以外男ばっかで王家も男ばっかだからね。公爵家が出世する為には良い成績とって重要な役職につかなければならないがあの子の兄弟達は頭が悪い。出世が望めないと諦めていたところに出世話が来たら飛びつくよね?
 ただデメリットは魔法が使えないこと。それについては僕に何かしら適当な理由をつけて口外しないように問題ないから特にでかいデメリットにはなりえない。

 どうかなと笑顔を作ってみる。公爵当主は心に決めたような顔をした。良かった。決まったみたいだ。

「分かりました。婚約をお願い致します」
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