俺はヒーローなんかじゃない

ここクマ

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俺は君のヒーローだ。

15 芽が出て伸びるside伊藤智也[s]

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好きな事。

人に愛される事。

嫌いな事。

背中を追いかける事。


僕の一番底にあるのはこの2つ。


『運命って信じる?』

自分が投げた言葉に笑いが込み上げる。

「は、はっ!おっかしぃ~」

(運命なんてあってたまるかよ。)

そんなものがあったなら自分はこの世に居なかっただろう。

運命がない事の証明は簡単だ。

僕が産まれたんだから。


「あ~、無駄なこと考えたな。」


無意識に、首元に手が伸びる。

「……逢いたいなぁ。」

口からこぼれた言葉に頭を抱えた。

(違うだろ。逢いたくなんて無いはずた。)

『智也』

声が頭を走って心を包み込む。

『智也、大丈夫だ。お前は1人じゃ無い。』

(うん。僕は1人じゃ無い。)

『俺がいる。ずっと、一緒にいてやる。』

(あぁ……)

『だって』

(……だって……そうだよな。)

『智也は、大切な友達だろう?』

(あぁ……友達だ。)

心が痛む理由を僕は見えないように隠している。

ポタポタ溢れる液体と一緒にこの気持ちが消えてしまえばいいのに。

働かない頭で携帯をいじる。

心が痛い。体が冷たい。何も考えたく無い。

(誰か、誰でもいいから。僕を見つけて。)


リリリリリ

発信ボタンを押す直前に携帯画面に映る名前。

「んで、お前なんだよ。」

声が聞きたい。

でも、聞いてしまったら今日の僕はどうやって生きればいい?誰に生かされればいい?

(お前がお前じゃなければよかったのに。)

そう思うのに、君の声を聞きたい心を否定できずに電話に出た。

「……太狼。こんな夜中に何の用。」

『あ、智也。その、少し気になって。』

今日1日で気になること。導き出される答えは1人だと思った。

(……優翔の事だな。)

「気になるって、何が?」

『あ、いや……お前、俺が店出る時、なんか辛そうだったから。』

「…………は?」

(辛そう?誰が?)

『いや、勘違いならいいんだけど……。でも、気になったから。』

(こういうとこだよ……。)

 太狼は、こういう優しい欠片みたいなのが集まってできたような人だ。だから、時々困る。いっそ、突き放してくれた方が楽なのに。

「別に僕は辛く無いよ。それより、テンテンわかってる?」

 僕がどんなに突き放してもお前は僕を離そうとしないから。苦しくて仕方がないんだ。

『え?』

「こんな夜中に電話なんてして……。僕がもし、誰かとの最中だったら何かに利用されちゃってるよ?」

『あっつい……よ、る……?…………っ!おっま!なん、は?!』

「あはは……慌てちゃって、かっわいいー。そうだよ、あっつい夜。テンテン知ってるでしょ?僕が昔っから色々やってること。」

『色々って……お、俺は……』

 テンテンとは学生時代からよくつるんでいた。
 テンテンは真面目で誠実。反面、僕は外面こそイイ子だったけど、裏で隠れて沢山遊んでた。それもまぁ、色々な方面に幅広く。

「あれ?知らなかったっけ?僕、テンテンに何回も見られてると思うんでけど。例えば……そう!高1の時の同じクラスの天宮。」

『…っ……』

「あとは……2組の中林。それと、4組の榊さん。あと……」

『……やめろ。智也。俺が、悪かった。』

 泣きそうな声でテンテンが言う。

「べつに謝らなくていいのに。うん。むしろ、してくれて良かったかも。」

(あー、僕って最低だなぁ~)

 ベットにわざと膝立ちになって想像する。

「ほら、例えば今僕がこうやってテンテンと話してる間、僕の下で必死に声と快感を押し殺してる子がいるとするでしょ。口に手を抑えて真っ赤な顔で目を潤ませて。」

 もっと、欲しい。けど、誰かに聞かれてしまう。首を振りながら、それでも体は動かして。僕は、その子に意地悪しながら電話を長引かせる。

「ね、とっても楽しそうでしょ?」

 ふふっと笑いながら聞くと、テンテンは軽蔑したような声を出した。

『最低だ。』

(うん。それでいい。もっと、僕を嫌いになれ。)

「うん。そうだよ。」

 最低だ。
 僕の想像してる人を聞いたら君はもっとそう思うだろう。

『……でも、お前が大丈夫そうでよかった。』

「…………あぁ、そう。」

 どうやっても、君は僕を許すから。

 どうしても、僕はそれを壊したい。

(もう、許さないでよ……。)

「あ、そういえば、優翔と近所に住んでるんだよね。優翔って、テンテンといる時ってどんな感じなの?」

『っ、ま…優翔の事なんてなんで急に聞くんだ。』

 テンテンが動揺したのが電話越しに伝わった。

(あ、やっぱり。優翔は使えそうだな。)

「なんでって、優翔可愛いから。」

『俺の近所の子を変な目で見るなよ。』

「ははっ…近所の子、ね。わかってるって。可愛いなぁって思っただけ。」

(テンテン、嘘下手だなぁ……。優翔の家に行けば近所じゃないってすぐわかるのに。)

『……それなら、いいんだ。』

「うん。あ、もう遅いから、じゃあね。」

 電話を切ってベットの上に横になる。

(テンテンに嫌われるには、どうすればいいかなぁ……。……早く、嫌いになってくれないかなぁ。)
 

ボロボロになった心の破片を縫い付ける人。

その人さえいなければ、僕はもうボロボロにならずに済むんだから。

僕はもうボロボロでいいんだから。
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