俺はヒーローなんかじゃない

ここクマ

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俺は君のヒーローだ。

20 パワーアップの時間。

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子どもの頃に憧れたヒーローは、いつも誰かのために戦っていた。誰かの為に、ボロボロになってでも諦めないで戦っていた。





俺だって本当は・・・。




朝。いつもの朝だ。

だけど、俺はいつもより早く家を出た。

いつもいる虎の姿はもちろんない。


『真木ちゃん。』

ニコニコ笑う虎が頭をよぎった。

(……ごめん。虎……。)



終わらないといけない。

終わらせないといけない。


(俺は、変わらないと駄目なんだ。)


今は、ヒーローでいうパワーアップの時期なんだ。

無駄なものを削ぎ落として、新たな力を手に入れる。

だって、俺にはそれしか道が無いのだから。




教室の扉を開けるとまだ誰も居なくて少しほっとした。

(よかった。これでもう少し1人で居られる。)

時間が必要だった。虎の事を考えると溢れる感情に切り替えろと、頭に何度も言い聞かせるために。

(きっと、好き。これは、好きだ。でも、本当に?)

自分に問いかけて、間違いを探す。

(虎に触れたい。虎を独り占めにしたい。でも、虎は俺じゃ駄目だ。)

虎の隣で幸せそうに笑う人。それは、俺じゃ無い。

俺じゃ、駄目だった。

(だから、俺が隣にいる為には・・・)

「優翔?」

上から声が降ってきて、視線をあげる。

「幸太。」

「あー、と、原ちゃんは?」

「・・・さぁ。」

「さぁって・・・、いや、いつも一緒に居るじゃん。」

「それなら、お前もそうだろう。」

「いや、そうだけど、そうじゃ無いじゃん。」

幸太は、やけに虎の事を聞いてそわそわしていた。

(虎が居たら居たで口喧嘩ばかりしているのに、なんなんだ?)

そんな事を思っていると、廊下から男女の声が聞こえた。会話は聞き取れなかったが、聞き覚えのある声だった。

「原ちゃんだ。」

幸太は、廊下の方を向き、扉をに向かって行った。

「原ちゃー、ん?・・・んんん?」

俺は、察しがついて窓の外に目を逸らした。

外は、うんざりするくらい明るかった。


「はぁ?!彼女!?」

しばらくして、幸太の叫び声が響いた。

「ねぇ!優翔!原ちゃんのやつ彼女できたって!」

(そんなの、知ってるよ。)

仕方なく、ドアの方に視線を向ける。

「あ!真木ちゃん!酷いよ!なんで先に行っちゃったの!!」

虎が、彼女を置いて俺の方へ来る。

(あぁ、やっぱり先に来てよかった。虎の彼女と一緒に登校なんて無理だった。)

「悪い。学校に忘れ物があって早く来たかったんだ。そんなことより、彼女待たせてるぞ。」

「そんなことじゃないよ。大事なことだよ。」

ドアの前で待ってる子と目があった。

(あー、駄目だ。俺は、駄目だ。)

嫌なものが溢れそうだった。

「虎。恋人は大切にしないと駄目だ。だから、今は俺じゃない。」

(頼むから俺を1番みたいに、俺以外どうでも良いみたいにしないでくれ。)

「・・・真木ちゃん。わか、った。」

虎が、少し驚いたみたいに俺を見てからあの子の所へ行った。


リロリロ、リロリロ

携帯が鳴った。

(・・・智也さん?)

メッセージだったらしく開いてみた。

[来週の水曜日、デートしませんか?]

(なんで、敬語なんだ?でも、デート?)

少し疑問を抱いたが、虎の楽しそうな声が耳に入って打ち消された。

『好きな人なんて、僕が忘れさせてあげる。』

智也さんの言葉が頭に流れた。

[俺でよければ、お願いします。]

俺は、自然とそう返信していた。

虎の話し声はまだ止まらない。

この声を、いつか微笑ましく聞くことができるだろうか。

この声を聞いて、苦しくならない日がくるのだろうか。


「優翔。」

幸太が、俺の頭をポンと触った。

「なんだ。」

「寂しい?」

幸太は、虎の方を少しみた。

「・・・寂しくない。」

ズキリと胸が痛んだ。

(この痛みに耐えれば、良いだけだ。)

「本当に?」

「あぁ、虎が幸せならそれでいい。」

でも、本当は・・・その幸せを作るのが俺でありたかった。

「ふーん。でも、原ちゃんの方はなんか寂しそうだね。」

幸太の言葉に虎を見ると丁度あの子に手を振ってこっちに来る時だった。

(寂しそうか?)

虎はニコニコしながら席に戻ってきた。


また、心臓が痛んだ。

(大丈夫。痛いだけだ。)

「真木ちゃん。」

「どうした?」

そう呼ばれた声に、俺は笑顔で応えた。

(大丈夫。俺はちゃんとお前のヒーローになるから。)
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