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俺は君のヒーローだ。
32 行かないでside智也[s]
しおりを挟む大切に仕舞おうと思った。
特別だから。
君だけは、特別だから。
「なー、トモ女紹介してくれよ」
はっと、目の前の景色に思う。
(これは夢だ。)
「嫌だよ。自分で探しなよ。」
そう言うと、目の前の景色が変わる。
(あぁ、そうかここには台本があるのか。)
漠然と夢の中でそう感じた。
演じなきゃ。僕を演じなきゃ。
「太狼、お前なんで伊藤みたいな奴と友達やってるんだ?」
教室の中から、声が聞こえた。
(これは、僕の記憶だ)
「なんでって、あいつは良い奴だよ。疑問に思う点がわからない。」
「良い奴なの?」
「あぁ。それに、あいつの隣は安心するんだ。」
心臓が跳ねて、笑みが溢れる。
けれど、その先を思い出して心が凍った。
(あ、そうだ。これは、ダメな記憶だった。)
そう気が付いた時には遅かった。
「なにそれ、妬けるんだけど。僕の隣は安心できないの?」
(やめろ、もう。いいから。)
「あーもう、拗ねるなよ。お前が1番だよ。龍。」
優しくて甘い声。
太狼の隠した指輪の相手。
太狼を壊した唯一の人。
(知ってる。わかってる。お前に言われなくたって。)
また目の前の景色が変わった。
空の見えるどこかの屋上。暁がそいつを照らす。
「なぁ、伊藤。太狼は俺の恋人なんだよ。」
(知ってるよ。だから、なんだって言うんだよ。)
「俺は、これから、たとえ死んでも太狼の隣に居るよ。太狼は、あげないよ。」
それは、警告するというより決意に似た声だった。
(それを、なんであいつに言ってやらなかったんだよ。)
風が吹いて、教室の中になる。
「トモちゃん、女と男ってどっちが気持ちいい?」
「うぇ、男とかなに言ってんだよ。つか、トモ男ともヤッてんの?」
汚い。気持ち悪い。けど、忘れるには気持ちいい。生きてていいって言われるみたいで嬉しい。それだけ。それだけだよ。
周りの会話は僕を抜いてどんどん弾む。
「ならさ、イケそうな男って誰かいる?」
「あー、まぁイケメンは無理だな。そこそこ可愛くて、筋肉質じゃないやつとか?」
「そんなんいるか?」
「んー、いい感じの体なぁ……隣のクラスの佐藤とか、津田は?」
「いやいや、見たことないし男はやっぱり無理だって。」
「まぁ、そうだよなぁw」
「……でも、田中とかなんかいけそうなんだよな……なんでだ?」
「は?田中?なんで?」
はっとした。
(駄目だ。あいつは駄目だ。)
「なんか、着替えの時とかちらっと見えたんだけど」
ガタン
「それより、女の子紹介してあげようか?」
勢いよく机から降りて言う。
「え、まじで?!」「俺、巨乳がいい!」「年上!」
(本当に、悪夢だ。)
そう思えばまた目の前が変わる。
(ここは……倉庫?)
「はっはっ、ちょ、龍やめろって」
「ちょっとだけ、ね?」
「ちょっと、って、んっ、やめっ、人、来たらどうすんの」
「大丈夫。男同士なんて、じゃれてるようにしか見えないから。」
「ん、ばっ、そう言うんじゃ、はっ、んっ、どこ、触って」
逃げ出したいのに、もっとここで聞いていたい。
僕が、絶対に聞けない声だから。
「本当は、キスが良いんだよ?でも、じゃれてるように見えないじゃん。」
「はっ、んっ、これも、みえ、ないっ、てっ、ふっ、はっ、」
「それは、太狼の頑張り次第だよ。」
(あぁ、本当に僕はなにしてるんだろう。)
「むり、も、やらぁ、これ、やら、もっ、と、ちゃんと、さわっ、てっ」
「はは、太狼はもう飛んじゃいたいの?」
「りゅー、りゅー、おね、がい、ちゅーして、ちゅー、なきゃ、やら、りゅー」
「だーめ。家に帰ってからたっぷりしてあげるから我慢して。」
「りゅー、おね、がい、」
「んー、じゃぁ、お家でなんでもする?」
「すりゅ、いっぱい、きもちく、する、から、」
「じゃあ、一回だけね。」
あぁ、本当に……
「なんて、悪夢なんだ。」
今日は、雨らしい。雨の音が響く。
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