38 / 68
俺は君のヒーローだ。
34 過去の話
しおりを挟む約束の放課後、俺は鞄を持って教室を飛び出し、智也さんの待つ校門に向かった。
「智也さん!」
「あ、優翔、早いね」
「早く会いたかったんで……」
「ははっ、嬉しいなぁ。」
そう言って、笑った智也さんの顔は少し疲れたみたいだった。
「智也さん、なんか元気ない?」
俺がそう聞くと、智也さんは「元気だよ?」と笑う。それでも、その笑みはどことなく悲しそうだった。
心配に思って言葉を探していると智也さんは、俺の手を掴んだ。
「ほら、デートしよ。ここ目立つし。」
ニコッと後ろをみた智也さんにつられて後ろを向くと、人が徐々に昇降口から出てくるのが見えた。
それから、2人で駅の近くにあるショッピングモールへ行き、服やら雑貨を見て回った。
「あー、楽しかったなぁ」
「はい。物みるだけでこんなに楽しいとは思わなかったです。」
俺の言葉を聞いて、智也さんは嬉しそうに俺の頭を撫でた。
「ちょ、智也さん?」
わしゃわしゃ撫でられる俺の頭。その手を止めず、智也さんはしばらくニコニコしていた。
「よし、そろそろ帰ろうか。」
「あ、はい。……って、俺着替えとか持ってないんですけど……。」
そう言った俺を見て、智也さんは思い付いたように口を開いた。
「着替えなら、僕の服貸してあげるよ。それとも、1回帰りたい?」
いつもと同じ声なのに、なにかを試すように聞こえた。
「あー、えっと、じゃあ、服借りていいですか?」
『帰りたい』そう言ってしまったら、いけない気がしたんだ。
それから、帰らない 選択をした俺を見てニコッと笑った智也さんに安心した。
「ねぇ、優翔。絶対に勝てない人って、どんな人だと思う?」
智也さんの家に着いて、しばらくして智也さんは静かにそう聞いた。
「絶対に、勝てない人ですか……?」
質問の意図も、正しい答えもわからない。けど、今日の智也さんはどこかに消えてしまいそうなくらい悲しく笑っている。
「好きな、人とか……?」
「っ……うん、そうだね。」
苦しそうに、俯いて、それでも笑顔のままでいる。
どうすればこの人の苦しみを解放できる?
どうすればこの悲しい笑顔を壊せる?
俺は気が付いたら、智也さんの顔に触れていた。
頬に触れ、涙袋をなぞる。
「優翔?」
「泣いてもいいんですよ。俺しか、いないです。」
智也さんは線が切れたみたいにポロポロポロポロ、綺麗な涙を流した。
涙と共に、智也さんは心を落としてくれた。
「僕は、弱い。だから、みんな、傷付けて、傷付けて……でも、やっぱり、誰よりも、僕は傷付けないと、だめだから……僕は、傷付かないと、だめなのに……僕は、僕も……ちゃんと、生きたいのに。生きなきゃ、だめなのに……」
智也さんは優しい人だ。優しくて、強いのにどこか危うい。
「優翔、ごめん。ごめんね。」
智也さんの謝罪の意味も分からず、俺はただ謝る智也さんを抱きしめていた。
0
あなたにおすすめの小説
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜
キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。
モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。
このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。
「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」
恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。
甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。
全8話。
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
雪を溶かすように
春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。
和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。
溺愛・甘々です。
*物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています
happy dead end
瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」
シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。
だって、君は210日のポラリス
大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺
モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。
一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、
突然人生の岐路に立たされた。
――立春から210日、夏休みの終わる頃。
それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて――
📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。
エピローグまで公開いたしました。14,000字程度になりました。読み切りの形のときより短くなりました……1000文字ぐらい書き足したのになぁ。
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる