73 / 109
第三章 謎と試練
73 フロージア代表キャプテンアマト
しおりを挟む
「クレええええええええええええええ」
なんてことだ……恐れていたことが……。
とにかく俺たちは急いでクレの元へと駆け寄る。
「ぐっ、うっ」
「大丈夫か!? クレ」
「ちょっと通して、ヒリラさん、お願いします」
「かしこまりました。少し診させていただきます」
ベンチ裏からヒリラさんがやって来る。
クレの容態は……
「はい、大丈夫です。これならすぐ治りますね。とりあえずこちらを貼っておいてください」
「は、はい。えっと……なんですかこれは」
「それはフィップ。皮膚に特製の液を染み込ませ痛み止めと治癒の効果をもたらすものです。
それを貼って安静にしておいてください」
どうやら致命的な怪我ではないようで一安心だ。
流石オグレスの科学。本当に感謝しかない。
しかし……
「いや、安静になんてしていられません。
まだ負けているんです。彼らのスピードについていけるのは俺とラーラだけ。ここで俺が倒れるわけにはいかない」
「……ダメよ。それは聞き入れられないわ」
「何故ですかフィロさん!
大切な試合ですし、今貼っていただいたフィップのおかげでもう足も痛くありません! 俺はまだやれます!」
「……まず、痛みがないのはそれのおかげ、決して治ったわけではないわ。科学力があるといっても、最終的に頼れるのは人間の治癒力。治癒力を促進させることはできても、魔法のように一瞬で回復させることはできない。
それに、ここで無理して試合に出れば今後更に長い間辛い思いをするかもしれないのよ」
「……それでも」
「そしてもう一つ。先に言わせてもらうわ、ごめんなさい」
「え……」
「こうなる可能性はあったのに、あなたを止められなかった。私の判断ミスよ」
「いえ、俺も承知の上での作戦だったので……謝らないでください」
「ありがとう。
そしてその上で言うわ。ベンチに下がりなさい。ここだけは退けない」
「ですが……」
「大丈夫だって。このチームにはまだまだ頼れる仲間がいるでしょ?
そうよね、凛ちゃん」
「はい、いつでも出られます」
「凛ちゃん!? さっきまでどこ行ってたの? 姿見えないから心配したんだよぉー」
「うん、ちょっとね」
「クレートくん、あなたの代わりに凛ちゃんが試合に出るわ。
もっとも、彼女が信頼できないというのなら否定してくれても構わないけど」
「……いえ、大丈夫です。
頼んだ」
「頼まれた」
「そして、ラーラちゃん」
「は、はい!」
「私的にはあなたにも退いてほしいの。理由はわかるわよね?」
「……確かに、わたしも心のどこかではこんな……スポーツマンシップに欠けることはしてこないんじゃないかって油断していた部分はありました。
でも今は違います! それに、こんな戦い方をするチームが許せない! 覚悟は決まってます! まだ戦わせてください!」
「……わかったわ。
レオくん!」
「はいっ!」
「ラーラちゃんがヤバそうだったら守りなさい。あなたなら可能でしょう?」
「当然、ラーラちゃんには1ミリたりとも危害を及ばせないことを約束致します」
「よし。
じゃあ、いってきなさい!」
「「「はい!」」」
結局、クレに代わって凛が出場、ラーラもベンチに下がらないことが決まる。
当然俺にもラーラにベンチに下がってほしい気持ちはある。しかし、ここでクレに続いてラーラまでいなくなると俺たちの勝率は0に等しくなる。
フィロさんもそれはよくわかっているのだろう。だからこそのこの選択だ。
頼んだぞ、レオ。
一旦状況も落ち着いたところでフィールドを見ると、先程クレに衝突した選手がレッドカードを出されている場面が目に入る。
「今のプレーは故意に衝突したと判断しました。
何か異議はありますか?」
「故意に衝突したわけではないと思います。恐らく彼もボールを奪おうと必死になりすぎてしまったのでしょう。
しかし、その結果相手の選手を傷つけてしまったのも事実。危険なプレーの結果レッドカードと判断されてしまったのは仕方のないことだと思います。
よって、この判断に異論はありません」
「お前、ふざけんのもいい加減にしろよ。
どうせお前が仕向けたんだろ! 白々しいんだよクソ野郎が!」
「なんですか? 汚い言葉ですね。審判に報告しましょうか。迷惑です」
「てめぇ……!」
「よせ将人、それ以上言ったら今度はお前が退場になるぞ。
こいつには、プレーで見返してやればいい」
「懸命な判断ですね。
それでは、この悲しい事故のことは忘れて、正々堂々とした勝負をしましょう」
懲りずに煽り続けるアマト。
将人が怒りを抑えられないのも無理はない。
仲間を傷つけられて俺だって怒りで溢れている。
絶対に勝つ。
強い気持ちを胸に抱き、フィールドへと戻る。
後半24分。ファールのあった場所からオグレスボールでスタート。
一見チャンスだが、そうもいかない。
攻めの要であったクレはもういない。
どうやって攻めようか考えていると、凛に声をかけられる。
「ボクに策がある」
***
「ピィィィィィィィィィィィ」
試合再開の笛が鳴る。
キッカーはレオ。ということは……
「ええい!」
自信なさげに蹴られたレオのボールは
「ホントに上手いんだ。やるじゃん!」
凛へと届く。
褒める凛、知っていたのか……?
いや、レオの反応を見るに、あの後自分がパスが上手いって凛に自慢でもしたのだろう。
肝が据わってるなあ、ほんとに。
こうして凛にボールが渡り、受け取った凛はドリブルで前に進む。
「大丈夫です。
その方は普通の選手。囲めば終わりです」
アマトの指示の元、2人の選手が凛のディフェンスに当たる。
囲まれた凛、しかし……
「はっ、その程度?
なめてもらったら困るんだけど!」
見事。フェイントを駆使し、2人のディフェンスをものともせず凛は突き進む。
「何をしていますの! たった1人ですわ!」
3人、4人……5人! 前線の選手も戻ってきて凛のディフェンスに当たるが、凛からはボールを奪えない。
「くっ、なぜ奪えない。
もう1人当たってください! ここで絶対に止めます!」
「いやいや、1人に対して6人は愚策でしょ」
相手が集まってきたところで凛はパスを出す。
氷の上という慣れないフィールドで、あれだけの人数に囲まれながら、それでもボールを奪われず進み続け、一瞬の隙を見つけてパスを出す。
先程ベンチにいなかったのは、裏で氷の上でのドリブルを練習していたからだろうか。
中園凛、上手いとは思っていたが、これほどとは……。
そしてそのパスを受け取るのは……
「おっしゃあ! ぶち決めてやるぜえ!」
将人! ダイレクトで蹴ったそのボールは、的確にゴールの隅を狙い撃ち……
「させません」
「なっ!?」
狙い……撃てない。コースが読まれていたのか。アマトによってギリギリのところで弾かれる。
「わかりやすいですね。
僕に怒り、僕に一泡吹かせたい。故に僕側のゴールを狙ってくる。そこまでわかっていれば止められます。
単純そうなあなたを散々煽った甲斐がありました」
大きなチャンスをまたも逃し、試合は0-2のまま。
試合終了時刻は刻々と迫ってきているのだった。
なんてことだ……恐れていたことが……。
とにかく俺たちは急いでクレの元へと駆け寄る。
「ぐっ、うっ」
「大丈夫か!? クレ」
「ちょっと通して、ヒリラさん、お願いします」
「かしこまりました。少し診させていただきます」
ベンチ裏からヒリラさんがやって来る。
クレの容態は……
「はい、大丈夫です。これならすぐ治りますね。とりあえずこちらを貼っておいてください」
「は、はい。えっと……なんですかこれは」
「それはフィップ。皮膚に特製の液を染み込ませ痛み止めと治癒の効果をもたらすものです。
それを貼って安静にしておいてください」
どうやら致命的な怪我ではないようで一安心だ。
流石オグレスの科学。本当に感謝しかない。
しかし……
「いや、安静になんてしていられません。
まだ負けているんです。彼らのスピードについていけるのは俺とラーラだけ。ここで俺が倒れるわけにはいかない」
「……ダメよ。それは聞き入れられないわ」
「何故ですかフィロさん!
大切な試合ですし、今貼っていただいたフィップのおかげでもう足も痛くありません! 俺はまだやれます!」
「……まず、痛みがないのはそれのおかげ、決して治ったわけではないわ。科学力があるといっても、最終的に頼れるのは人間の治癒力。治癒力を促進させることはできても、魔法のように一瞬で回復させることはできない。
それに、ここで無理して試合に出れば今後更に長い間辛い思いをするかもしれないのよ」
「……それでも」
「そしてもう一つ。先に言わせてもらうわ、ごめんなさい」
「え……」
「こうなる可能性はあったのに、あなたを止められなかった。私の判断ミスよ」
「いえ、俺も承知の上での作戦だったので……謝らないでください」
「ありがとう。
そしてその上で言うわ。ベンチに下がりなさい。ここだけは退けない」
「ですが……」
「大丈夫だって。このチームにはまだまだ頼れる仲間がいるでしょ?
そうよね、凛ちゃん」
「はい、いつでも出られます」
「凛ちゃん!? さっきまでどこ行ってたの? 姿見えないから心配したんだよぉー」
「うん、ちょっとね」
「クレートくん、あなたの代わりに凛ちゃんが試合に出るわ。
もっとも、彼女が信頼できないというのなら否定してくれても構わないけど」
「……いえ、大丈夫です。
頼んだ」
「頼まれた」
「そして、ラーラちゃん」
「は、はい!」
「私的にはあなたにも退いてほしいの。理由はわかるわよね?」
「……確かに、わたしも心のどこかではこんな……スポーツマンシップに欠けることはしてこないんじゃないかって油断していた部分はありました。
でも今は違います! それに、こんな戦い方をするチームが許せない! 覚悟は決まってます! まだ戦わせてください!」
「……わかったわ。
レオくん!」
「はいっ!」
「ラーラちゃんがヤバそうだったら守りなさい。あなたなら可能でしょう?」
「当然、ラーラちゃんには1ミリたりとも危害を及ばせないことを約束致します」
「よし。
じゃあ、いってきなさい!」
「「「はい!」」」
結局、クレに代わって凛が出場、ラーラもベンチに下がらないことが決まる。
当然俺にもラーラにベンチに下がってほしい気持ちはある。しかし、ここでクレに続いてラーラまでいなくなると俺たちの勝率は0に等しくなる。
フィロさんもそれはよくわかっているのだろう。だからこそのこの選択だ。
頼んだぞ、レオ。
一旦状況も落ち着いたところでフィールドを見ると、先程クレに衝突した選手がレッドカードを出されている場面が目に入る。
「今のプレーは故意に衝突したと判断しました。
何か異議はありますか?」
「故意に衝突したわけではないと思います。恐らく彼もボールを奪おうと必死になりすぎてしまったのでしょう。
しかし、その結果相手の選手を傷つけてしまったのも事実。危険なプレーの結果レッドカードと判断されてしまったのは仕方のないことだと思います。
よって、この判断に異論はありません」
「お前、ふざけんのもいい加減にしろよ。
どうせお前が仕向けたんだろ! 白々しいんだよクソ野郎が!」
「なんですか? 汚い言葉ですね。審判に報告しましょうか。迷惑です」
「てめぇ……!」
「よせ将人、それ以上言ったら今度はお前が退場になるぞ。
こいつには、プレーで見返してやればいい」
「懸命な判断ですね。
それでは、この悲しい事故のことは忘れて、正々堂々とした勝負をしましょう」
懲りずに煽り続けるアマト。
将人が怒りを抑えられないのも無理はない。
仲間を傷つけられて俺だって怒りで溢れている。
絶対に勝つ。
強い気持ちを胸に抱き、フィールドへと戻る。
後半24分。ファールのあった場所からオグレスボールでスタート。
一見チャンスだが、そうもいかない。
攻めの要であったクレはもういない。
どうやって攻めようか考えていると、凛に声をかけられる。
「ボクに策がある」
***
「ピィィィィィィィィィィィ」
試合再開の笛が鳴る。
キッカーはレオ。ということは……
「ええい!」
自信なさげに蹴られたレオのボールは
「ホントに上手いんだ。やるじゃん!」
凛へと届く。
褒める凛、知っていたのか……?
いや、レオの反応を見るに、あの後自分がパスが上手いって凛に自慢でもしたのだろう。
肝が据わってるなあ、ほんとに。
こうして凛にボールが渡り、受け取った凛はドリブルで前に進む。
「大丈夫です。
その方は普通の選手。囲めば終わりです」
アマトの指示の元、2人の選手が凛のディフェンスに当たる。
囲まれた凛、しかし……
「はっ、その程度?
なめてもらったら困るんだけど!」
見事。フェイントを駆使し、2人のディフェンスをものともせず凛は突き進む。
「何をしていますの! たった1人ですわ!」
3人、4人……5人! 前線の選手も戻ってきて凛のディフェンスに当たるが、凛からはボールを奪えない。
「くっ、なぜ奪えない。
もう1人当たってください! ここで絶対に止めます!」
「いやいや、1人に対して6人は愚策でしょ」
相手が集まってきたところで凛はパスを出す。
氷の上という慣れないフィールドで、あれだけの人数に囲まれながら、それでもボールを奪われず進み続け、一瞬の隙を見つけてパスを出す。
先程ベンチにいなかったのは、裏で氷の上でのドリブルを練習していたからだろうか。
中園凛、上手いとは思っていたが、これほどとは……。
そしてそのパスを受け取るのは……
「おっしゃあ! ぶち決めてやるぜえ!」
将人! ダイレクトで蹴ったそのボールは、的確にゴールの隅を狙い撃ち……
「させません」
「なっ!?」
狙い……撃てない。コースが読まれていたのか。アマトによってギリギリのところで弾かれる。
「わかりやすいですね。
僕に怒り、僕に一泡吹かせたい。故に僕側のゴールを狙ってくる。そこまでわかっていれば止められます。
単純そうなあなたを散々煽った甲斐がありました」
大きなチャンスをまたも逃し、試合は0-2のまま。
試合終了時刻は刻々と迫ってきているのだった。
0
あなたにおすすめの小説
人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚
咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。
帝国歴515年。サナリア歴3年。
サナリア王国は、隣国のガルナズン帝国の使者からの通達により、国家滅亡の危機に陥る。
従属せよ。
これを拒否すれば、戦争である。
追い込まれたサナリアには、超大国との戦いには応じられない。
そこで、サナリアの王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。
当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。
命令の中身。
それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。
出来たばかりの国を守るため。
サナリア王が下した決断は。
第一王子【フュン・メイダルフィア】を人質として送り出す事だった。
フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。
彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。
そんな人物では、国を背負うことなんて出来ないだろうと。
王が、帝国の人質として選んだのである。
しかし、この人質がきっかけで、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。
西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。
アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす。
伝説の英雄が誕生することになるのだ。
偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。
他サイトにも書いています。
こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。
小説だけを読める形にしています。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
立花家へようこそ!
由奈(YUNA)
ライト文芸
私が出会ったのは立花家の7人家族でした・・・――――
これは、内気な私が成長していく物語。
親の仕事の都合でお世話になる事になった立花家は、楽しくて、暖かくて、とっても優しい人達が暮らす家でした。
異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~
夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する!
農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。
逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。
これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。
異世界からの召喚者《完結》
アーエル
恋愛
中央神殿の敷地にある聖なる森に一筋の光が差し込んだ。
それは【異世界の扉】と呼ばれるもので、この世界の神に選ばれた使者が降臨されるという。
今回、招かれたのは若い女性だった。
☆他社でも公開
異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」
その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ!
「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた!
俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!
コンバット
サクラ近衛将監
ファンタジー
藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。
忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。
担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。
その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる