あなた♡おもちゃ～嘘から始まる、イケメンパティシエとの甘くて美味しい脅され関係～

５５：新しい道具の未知の強さ※

　
　颯斗が手にしている道具を前に、雛子は思わず臆してぐっと言葉を詰まらせた。
　ローターでさえついこの間まで未知の道具だったというのに、いきなりこれはハードルが上がり過ぎではなかろうか。
　抗議の意志表示として足を閉じようとするも、果てたばかりの体は力が入らない。すりと内腿を擦り合わせるだけに終わり、勘違いした颯斗が「期待してるのか？」と笑う。

「や、やっぱりそれ使うのは……」
「だから安心しろって。自社の製品を信じてないのか？」
「信じてるに決まってるでしょ！」
「それなら平気だな。ほら、痛かったり苦しかったらすぐに止めてやるから」
「むぅ……」

　颯斗の手が足を撫でてくる。それに促され、雛子はおそるおそると足を開いた。
　機械がゆっくりと下腹部へと近付いてくる。その用途さえ知らなければ美容用具にでも思えただろうが。機械の詳細を知っているだけに不安しかない。
　だが機械の吸引部が最初に触れたのは、雛子の秘部……ではなく、腹だった。臍の下あたりに触れて吸ってくる。

「吸われてる感覚あるか？」
「ん……、ちょっとだけ」

　機械が触れている感覚と共に、吸い付かれている感覚は微かだがある。もっともこれは果てたばかりで体が敏感になっているからなのもあるだろう。
　その感覚がゆっくりと下へと降りていく。そうしてついにその部位の直前に迫ると、颯斗が指先でくいと下着の布をずらし、露わになったそこに機械を当てた。
　ローターで刺激されぷくと主張していた花芽に機械の吸引部が吸い付き……、瞬間、雛子の体がビクンと跳ね上がった。

「あっ！　あぁ！　だ、だめ！　これっ、あぅう！」

　今まで感じたことのない快感に悲鳴じみた声をあげてしまう。
　なにせそれほどに強いのだ。指で撫でられ捏ねられた時とも違う、口や舌で直接愛撫された時とも違う、断続的で容赦のない快感。
　吸引と振動は機械ゆえに休むことも許さず雛子の体を責め立ててくる。快感が止まることなく体の中で一気に湧き上がり、それが崩れることない一定の感覚で体中を駆け巡る。

「んっ、んぅ！　あっ、くぅ！　駄目っ、いや、これ強くて……！　あっ、ひぅ！」
「すげぇ良い反応。気持ち良いんだな」
「あ、あぁ！　違う、これっ……やだ、違うの、違うのがくる……！　やだ、颯斗っ……！んっんぅう！」

　強い快感にわけが分からぬまま翻弄され、体に力が入る。
　下半身が震えあがる感覚に慌てて「だめ」と「止めて」と告げようとするも喘ぎ声に変わり、宥めるために颯斗が首筋にキスをしてきた。
　彼の片手は雛子を責める機械を押さえ、そして片手は下腹部に置かれている。下腹部の手は撫でることもなくただ添えるように置かれているだけなのに、それが妙に腹の内を意識させ、花芽に与えられる快感と合わさっていく。容赦のない強い快感が体中を断続的に駆け巡るせいで、もう体中がおかしいくらいに気持ち良い。
　溜まる一方の快感が許容量を超えて体中に満ちる。その快感が爆ぜるのを感じ、雛子の体が大きく震えた。

「あっ、やぁ、もう！　ふぁ、あうぅう！」

　びくびくと体が震え、強い快感が駆け抜ける衝撃に耐えるために腹や足に力が入る。
　体から快感が溢れていくのを感じ、次いで余韻と疲労感が体を包む。快感が強ければ余韻も強いのか、甘い痺れが緩やかな波のように体を巡る感覚に、呼吸と共に甘い吐息が漏れた。

「……ん、ふぅ……あ……」
「随分と気持ちよさそうだったな。ほら、見てみろよ」
「ん……？」

　颯斗に促され、とろんと溶けた意識で自分の下腹部へと視線を向ける。
　力無く開いた足。ショーツは既に濡れて、更にはベッドシーツにシミまで着いている。随分と濡れている、いや、濡れすぎている。
　まるで愛液が大量に溢れたような……。と考え、果てる瞬間に快感が溢れたのを思い出し、雛子の頬がかぁと熱を持った。

　快感が溢れるような、ではない、実際に溢れたのだ。
　……潮を吹く、というものである。

「え、やだ、私……！」
「すげぇエロい声で悶えてたし、潮吹くほど気持ちよかったんだな」
「だって、そんな……うぅ……私は止めてって何度も言ったのに！」
「あんなエロくて甘い声で止めろと言われて止める男はいない！！」
「そんな力強く断言しないでよぉ……、どうしよう、下着の替え持ってきてないのに……」

　びちゃびちゃ、と情けない声で呟く。履いているだけで自分の下着がどれだけ濡れているのかが嫌というほど分かってしまうのだ。
　抱きしめてくる颯斗が笑うのが伝わってくる。肘打ちしてやろうかしら、と心の中で悪態をついた。この体勢なら肘打ちは容易い。

「他人事だと思って笑って……！」
「下着も売ってたから買えばいいだろ。俺が買ってやるよ」

　宥めながらも何度も首筋にキスをしてくる。
　あげくに雛子の顎を掴むと自分の方へと向かせて唇にキスをしてきた。替えの下着が無いことを嘆く雛子とは逆に、颯斗はだいぶご機嫌なようだ。それが不服で雛子が小さく唸るも彼の笑みが強まるだけである。

「まさかここまで感じるとはな。さすが顧客アンケートの結果が良いだけある。こんなの知ったら、ローターじゃ物足りなくなるんじゃないか？」

　キスの合間に話す颯斗に「馬鹿なこと言わないで」と文句を訴える。
　だがその声もだいぶ甘ったるく、更には体に力が入らないため彼にもたれかかるように体を預けながらだ。悔しくてペチリと腕を叩いてみるも、それだって力が入っていない。二度も果て、更に二度目はあれだけ強い快感の末に果てたのだ、体に力が戻るのは少し先になるだろう。
　だが颯斗の手が再び機械に電源を入れるのを見ると体が強張りを取り戻し、「待って！」と本気で制止の声をあげた。自分でも必死さが分かる、密事の最中の甘い制止の声とは違う。

「せっかくだし、もう少し体験してみた方が良いだろ」
「で、でも、そんな何度もは……」

　あんな強い快感を再びなんて耐えられない。
　そう考え、雛子は退路を探すようにシーツの上を見て……、そして一つの箱を手に取った。
　手のひらサイズの小さな箱。思わず「これ！」と声をあげてしまう。