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私は、生まれて初めて神に祈った。
……。嘘だ。神に祈るだけなら数えきれないほどしている。叶えられたことなんて、ほとんどないけど。
でも、今回ばっかりはいいじゃん。よくわからないけど、雷落としてくれるくらいには私たちを守ってくれるんじゃないの?あいつらの言葉をどれほど信じていいのか分からないけど。
神様どうか私たちを守ってください。

特に真実ちゃん!
真実ちゃんあの顔だし、若いし、絶対に彼氏いるっ!それなのに、あんな爺さん相手にしていると気づいたら、かわいそうすぎる!悲惨すぎる!よくわからないところに誘拐されて、薬盛られて爺さんと肉体関係を結ぶなんて、恐ろしすぎる!!!
今は、ぼんやりしているみたいだけど、正気を取り戻したときが怖い。
真実ちゃんが、どうか、守られますように。
どうか、それだけはお願いします。神様!

なーんてことを沈む意識の中で精いっぱい祈っていた。



それから1か月後。
私はある下町で働いていた。
あいつらは、記憶を消すとか言っていたけど、なぜか私には、バッチリ記憶があった。何ならあの時のことも鮮明に覚えている。
下町に売るとか言われていたから、てっきり、そういう店で働かされるのかと思えば、もっと危険なところに売り飛ばされるところだったらしい。私が、馬車で運ばれている最中に下町の人たちに助けられたのだ。

―コンコン。

「アイリ?起きてるか?」
「起きてるよー」
「女将さんが呼んでる」
「えっ!!???もうそんな時間?」

慌てて時計を見る。
30分も寝過ごしている。
急いで顔を洗う。化粧水なんてものは、この世界では超高級品なので私は持っていないので、水だけ洗顔だ。悲しい。一応、成人女性なのに。でも、水がいいのか分からないけど、顔が乾燥した感じはないから不思議だ。もしやこれが神様の加護?
適当に髪をとかし、服を着替えたら終わりである。

「まだかかりそうか?」
「おわった!ごめん!」
「そんなにいい夢見てたのか?」
「別に」

私を助けてくれた人達の一人。
エドワード・トンプソン。
黒い髪はいつだってサラサラ。私よりキューティクルがすごいのだから、異世界ってすごいなぁって…。
この世界、美形が多いのかなって最初勘違いしてしまうくらい顔が綺麗だ。
面倒見がよく、この辺をよくわかっていない私をよく助けてくれるので、とても感謝している。あと、モテる。顔良くて正確よくて、おまけに身長も高いから、まぁモテる。若いしね。
最近は、私の面倒ばかり見ているようで、たまに嫌味を言われることもあるから、申し訳ない。
私も何とか慣れようと頑張ってはいるから、それまで……。申し訳ないと内心謝っている。
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