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「お待たせ」
「今日は、忙しいみたいだから、おかみさん怒ってたぜ」
「ほんと?なにかあったっけ?」
「お前な…聖女様のお披露目会だろうが」
「そうだった!」

ずっと前から祭りの準備があったのに、どうして忘れてたんだろう。目覚ましだって、かけていたはずなのに。
今日、仕事を抜けたらさすがに、おかみさんに殺されるかもしれないけど、でも今日は真名ちゃんが見れるかもしれない。

「エド。今日、仕事抜けられると思う?」
「抜けられると思うか?」
「…そんなに忙しい?」
「忙しいに決まってるだろ。この稼ぎ時に。……なんだ。聖女様の顔に興味があるのか?」
「う、うん…そりゃあ」
「ふーん」
「エドは、興味ないの?」
「俺は別に。どうせ俺たちとは関わりがない存在だろうしな」
「そ、そんなに私たちと関わりがないかな。瘴気の浄化とか…ほら。なんかそういうときに関わるかもしれないじゃん」
「関わるわけないだろ。浄化に行くときは、どうせ騎士様たちが一緒だろう」
「騎士……」

そうか。騎士って手もあるのか。

真名ちゃんが今、どんな状況に立っているのか分からないけど、とにかく顔を見て話したい。
そのためには、城に潜りこまなくてはいけない。
でも、用事もないのに城になんて入れないから、騎士として入る…ってのは…ダメか…。一応、聖女候補として、そこそこの人間が私の顔を見てたし…いや、でも1ヶ月経ってるし、覚えてる人いるかな…。
でも、王子様に啖呵切っちゃったしなぁ…。
ってか、あそこらへんと顔を合わせるのはまずいか。

その前に私に戦闘能力どころか運動能力すらないから、無理か…。

「お前、騎士になんか目指そうと思ってるんじゃねーだろうな」
「……え?」
「騎士なんてやめとけ。ろくでもない奴らばっかりだ」
「あ。そういえば、エドって元騎士だっけ?」

エドの眉間にしわが寄っている。
こんな不機嫌フェイスもかっこいいんだから、美形ってお得。
こういう顔すると女の子キャーキャー言うんだよな。

「私に騎士できると思う?」
「出来ねえよ。上下関係厳しいし、アイリ手際悪いしな」
「エドが手際良すぎるだけだよ…」
「ほら。おかみさんの怒りがやばくなる前に下」
「アイリィイイイイイイ!!!!いつまで寝るんだい!!??!?」
「うぃぃ……」

おかみさんバチ切れじゃないか……。
仕事抜けるの難しいかな。
とりあえず、今日は仕事頑張るしかない。
あと、おかみさんに土下座するしかない。

「まだ起きてないのかー!?」
「起きてますぅ!今、行きます!!!」
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