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9話 幸せの終わり
しおりを挟むレイゼルさんとの幸せな時間は、長く続かなかった。
帝国の西郡に魔獣が現れて、討伐部隊が編制されることになったの。
魔獣は100年に一度現れるか現れないかの天災級の魔物。
帝国や神殿が総力をあげても倒すのが難しいって昔習った気がする。
その部隊に回復魔法が使えるレイゼルさんも召集されてしまった。
レイゼルさんは回復魔法がちょっとだけ使えるって本当の力を隠しているけれど、それでも回復魔法が使える人材は貴重なんだって。
でもそんな危険な所に行ってほしくない。
「……ソフィア様。これを」
討伐隊に行く前の日に、レイゼルさんは私にペンダントをくれた。
記憶をなくしたレイゼルさんが唯一もっていた大事な物。
でも私は欲しくなかった。
だって、これを貰ったらもう二度と会えなくなるような気がしたの。
わかってる。リザイア家の命令には誰も逆らえない。
それでも、行ってほしくなかった。ずっと一緒にいてほしかった。
でもそれをレイゼルさんに言うと、レイゼルさんを困らせてしまうから、私は涙をこらえて『気を付けて』って紙に書いて微笑んだ。
そして、レイゼルさんは私の首に「戦場でなくしてしまうと困るので持っていてください、必ず魔獣を倒して戻ってきます」とペンダントを私の首にかけてくれて、そのまま手をふって行ってしまった。魔獣を倒しに。
私はまた一人。
神殿の人が食べ物を置いていくだけで、私は一人で離れの小屋に住んでいる。
毎日レイゼルさんが無事に戻ってきますようにって祈りながら。
どうか、レイゼルさんが無事に戻ってきてくれますように――。
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