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35話 ルヴァイス視点
しおりを挟む「……なんだその顔は」
話疲れて寝てしまったソフィアを抱いて寝室に連れて行こうとするルヴァイスがテオに話しかける。
ソファの周りにはソフィアの書いた紙がたくさんおかれていた。
「いえ、ルヴァイス様は子どもが苦手なのかと。
公衆の面前でのいちゃつきといい。
まさかここまで子どもの相手をしてあげるとは」
紙にソフィアの書いた今日の出来事をみながらテオが言えば
「子どもが苦手と言った覚えはない。
子どものほうが私を見るなり逃げるだけだ」
「ああ、なるほど!」
テオがぽんっと手をたたいてうなづいた、
「そこで納得されてもそれはそれで苛つくものだな……」
「ルヴァイス様はわがままですね」
「うるさい、それにソフィアは幼いが支離滅裂な事は言わない。
話の筋は通っている。大人以上に周りをよく分析できている」
そう言うとルヴァイスは抱いたままのソフィアに視線を向けた。
「分析ですか?」
「ああ、これくらいの年齢ならば魔法を褒められた事を誇るだろうに、この子の説明を書いた紙を見ろ」
ルヴァイスは机に並べられた書類をテオにみるように勧めた。
「……これは?」
「ジャイルたちの研究がいかに優秀で、これから作物を作るのにどれだけ役に立つかを説明している。分析もたいしたものだ。
よほど父の教育がよかったのだろう。経験と知識量が足りぬが、頭はいい。
ちゃんと学ぶ場を与えれば伸びるタイプだ」
「ルヴァイス様が一番好きなタイプですね」
「何が言いたい?」
「いえ、ルヴァイス様はとても素晴らしいお方だと」
「喧嘩なら全力で買うが?」
「面倒なので遠慮させていただきます。
それにしても素敵な婚約者でよかったですね」
「……ああ、そうだったな。では将来に期待しよう。
それまでは、呪いなどに負けず這ってでも生きねばな」
ルヴァイスは自分の腕の中で眠るソフィアを見ながらつぶやいた。
魔獣を倒すと受ける呪い。
その呪いにルヴァイスとルヴァイスを呪いからかばったルヴァイスの父は呪われた。
呪いは体に瘴気を呼び込み、体を徐々に蝕んでいく。
ルヴァイスの父もその呪いのせいで長寿の竜人でありながら、若くして命を落としてしまった。
――いや、正確には殺した。
もがき苦しみながらも、自分が死ねば呪いがルヴァイスや弟ラディスに引き継がれるかもしれぬと、発狂しながらも痛みに耐えて生きていた父をルヴァイスは自分の手で殺したのだ。
結局呪いは引き継がれることはなかったが、ルヴァイスの呪いもまた父と同じもの。
父がルヴァイスを身を挺して守り呪いの大半を引き受けてくれたおかげで父よりも進行は遅いがその呪いは確実にルヴァイスを蝕んでいる。
西都の魔獣はとどめを刺したあと、湧き出てくる呪いを避けたが、心なしか体調が悪くなるスピードがはやい。
自分の命などいつ終わっても構わない。
――だが、この研究とソフィアだけは必ず守る。
それが父の夢でもあるのだから――。
そう思いながらルヴァイスは寝入ったソフィアの頭を撫でるのだった。
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