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50話 他視点
しおりを挟む「ルヴァイス様大丈夫ですか?」
ソフィアやジャイルがそれぞれの部屋に戻った後、ルヴァイスは最低限の書類を終え事実に戻っていた。
ベッドの枕に背をあずける格好で座るルヴァイスにテオが水を差し出した。
「……ああ、大丈夫だ。
それより放った密偵からの連絡は?」
「はい。どうやら聖杯ファントリウムから出る【聖気】の量があきらかに減っていると神殿内で噂になっているようですが上層部が握りつぶしているようです。
キュイを必死に必要としているのはその件が関係しているのかと」
「……そうか。キュイは未来予知できる聖獣だ。
キュイが行くのを嫌がるところをみると、ろくなことではないな。
……もしかしたら聖杯ファントリウムから調べてみる必要があるかもしれない」
「……といいますと?」
「聖気がたりなくなり、キュイを欲している。これだけ揃えばお前ならわかるだろう?」
そういってルヴァイスは目を閉じた。
「ルヴァイス様?」
「……すまない。少し疲れた。休ませてくれ」
いうルヴァイスの顔は見るからに青くなり、息も荒い。
何よりこれほど重要な話をしている最中に休みたいと申し出るほどに、ルヴァイスの体調はよくないのだろう。
「かしこまりました。信頼のおける治癒師と護衛、そして侍女を天蓋の外に控えさせておきます。神殿の調査も私のほうで進めておきます。いまはお休みください」
テオが言うと、ルヴァイスは目をつぶったまま
「……ああ、頼む」
と、力なく微笑んだ。
◆◆◆
「どうだ。まだ竜王は聖獣を差し出す気はないと?」
ルヴァイスが倒れてから10日後。
大神殿で大司教が部下の司教に尋ねた。
「はっ。ですが日に日に顔色は悪くなっています。
それと、薬を飲みに来るときについてくる護衛の宮廷魔術師が変わりました。
どうやら宮廷魔術師テオは神殿の薬以外も探しているようでポーションを買いあさっていると聞き及びます」
「……ではルヴァイスが飲む【聖薬】鑑定する魔術師がかわったと?」
「は、はっ」
「いいぞ、これからルヴァイスの【聖薬】にこの薬を薬を混ぜておけ。宮廷魔術師のテオの鑑定でなければ引っかかることはないだろう」
大司教が厳かな飾りの瓶に入った粉末を司教に渡す。
「はっ。ところでこの薬は?」
聞いた司教に大司教が、冷ややかな視線を向ける。
大司教がこういった態度をとるときは「何も聞かずにやれ」という事だ。
司教は顔を青くしてそのまま頷いた。
「仰せのままに」
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