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66話 陰謀

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「聖獣の様子はどうだ?」

 大神殿の最奥部。
 聖獣を封じ込めた封じの間で、大司教が付き添っていた司教に尋ねる。

「かなり憔悴しています。これ以上【聖気】を吸い取るのは無理かもしれません」

 そう言って視線を向けると、そこにはぐったりと動かなくなった狼型聖獣クロムの姿がある。

「西の森で見つけたという聖獣はまだ確保できないのか」

「は、今竜神官の精鋭部隊をすべてそちらに送り込みました、すでに捕獲し、こちらに連れてきているそうです」

「よし、それまではあの偽聖女に代わりをやらせる。
 四日後の豊穣際は偽聖女に聖杯を通じて聖気をまかせればいい。
 聖杯を通せばセスナの炎の呪いもごまかせる」

「はっ」

 大司教の指示に司教は仰々しく頭を下げた。

◆◆◆


「……この結界は……」

 テオは密偵と大神殿の最奥部に忍び込み結界の様子を確認する。

(複雑な古代神話で刻まれている。おそらく初代大司教が張った結界だろう。
 大司教の血を受け継いだものかその洗礼をうけたものしか入れない。
 破るのはかなり難しいが……大がかりな施術をすれば私でも十分破壊できる)

 そんな事を考えながら、テオが結界を観察していると

(テオ様。人がきます)

 密偵に袖を引かれて、慌てて柱の陰に隠れた。
 密偵の言う通りしばらくすると足音が聞こえてくる。

 魔法で姿と気配を消して様子を観察していると、そこに現れたのは【金色の聖女】と噂される金髪で美しい竜人少女と、それを取り囲む竜神官達だった。

「本当に10日後の豊穣の儀式で私が【金色の聖女】だと発表してくださるのでしょうね?」

「もちろんです。皆あなたが【金色の聖女】とほめ称えるでしょう」

「ソフィアよりも私が目立つのは確かなんでしょうね!?」

「はい。間違いありません」

 と、大きな声で会話する聖女と神官。
 どうやら10日後に行われる神殿の行事の豊穣際にて、ソフィアを貶める計画を立てているらしい。

(なぜ【金色の聖女】がソフィア様を目の敵にしているのだろう?)

 テオが疑問に思いながら聞き耳を立てていると

「転魂に耐えただけのことはあったわ」

 そう言って【金色の聖女】が微笑んだ。
 その言葉にテオの顔が青くなる。
 よく見ると歩き方や仕草が以前会ったソフィアの姉デイジアのものそのものだ。

(……まさか。【セスナの炎】で魂が不安定だったデイジアを竜人の少女の体に入れたのか!?)


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