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1章
皇太子の最愛の人
しおりを挟むデーヴィド帝国の皇帝、皇妃、皇太子と彼らを護衛する金龍騎士団の騎士団員達は既に、ライラット王国の王都近くまで来ていました。
ですが、デーヴィド帝国の者達は早く帰りたくて仕方がありません。
なぜなら、ライラット王国の国民達が皇太子に色目を使ったり、
「私を妻にしてください♡」
「私を一緒に帝国に連れていってください♡」
などと、皇太子に対して言い寄っていたからです。
あまりにも、非常識なライラット王国の国民にデーヴィド帝国の皇帝も皇妃も怒りを感じていました。
しかもその女性達は、自分達の使えるコネを使い、常に高飛車に振る舞い、手当り次第に異性にアタックをしたり、気に食わないことがあればその度にソフィアに酷いことを、常にしていた令嬢達でした。
いつもの彼女達を知っている周囲の人々は、この令嬢達の変わりように、呆れを通り越して、苦笑いを浮かべていました。
まさか皇太子が、ソフィアのことしか考えていないということに、彼女達は誰一人として気づくことは、ありません。
そうしているうちに、デーヴィド帝国の皇太子達は王都に到着しました。
たくさんの国民達が集まり、彼らは迎えられましたが、皇太子達は笑顔も見せず、手をふることも決してしませんでした。
デーヴィド帝国の者達は、〝何か〟を必死に探していました。
そう、〝神・精霊・妖精の愛し子〟であるソフィアを......
しばらくして、皇太子であるエドワードは、一際目立つ、金色に近い水色の髪の最愛の人を見つけました。
エドワードは、父と母である皇帝と皇妃に許可をもらい、馬車から飛び降り、彼女を迎えに行きました。
ですが、そこには痩せ細り、神様が直接与えた金色の瞳があったはずの右目には、包帯が巻かれ、車椅子に座り、変わり果てた姿の最愛の人がいたのです。
エドワードは、ソフィアが大怪我を負わされたことにすぐ、気づきました。
でも、ソフィアが傷つけられたことを受け入れたくなくて信じたくなくて、守ってあげられなかった自分が憎くて、憎くて仕方がありませんでした。
「ソフィ......?」
意を決してソフィアの名を呼びます。
すると、ソフィアは先程まで闇を帯びていた瞳が光を取り戻し、嬉しそうに頬が紅潮していました。
「えど、さ、ま?」
ソフィアは、小さい頃約束した男の子であるエドワードが、本当に迎えに来てくれた嬉しさのあまり美しい瞳に涙をため、最愛の人の名前を呼びます。
でも、やはり声はあまりでませんでした。
もちろんエドワードは聞き逃しません。
彼女の声の異変を......
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