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お姉様、夫人に引き取られる。
しおりを挟む「おかしいと思ったのは、昨日侯爵が倒れたリビア嬢をお迎えに来られた時ですわ。
リビア嬢は息子が留守の間に魔獣から急襲を受けた我が屋敷と使用人達を守り抜き、膨大な魔力を使い果たした末に意識を失われました。
そしてリビア嬢のことを貴方に連絡すると、貴方はリビア嬢が魔力不足になられて倒れたと聞かれただけで、娘が出しゃばって申し訳なかったと謝られた。私は呆気に取られましたわ。
一番に活躍したリビア嬢の実力を知っておられたなら あんな言い方はなさらないはずですもの。」
「リビアの実力……」
どういうことか意味が分からないといった様子のお父様。
そうよね。
私だってこんなに火力のある炎を出せるなんて長年知らなかったわけで、お父様が気づくはずもないわ。
「やはりご存知ないのですね、侯爵。
リビア嬢はうちの息子以上の魔力をお持ちです。
自分の娘がそれほどの魔力の持ち主だと知らないだなんて、私は信じられません。」
「い、いや……そうだったのか。いやはやお恥ずかしい。ハハ……」
この晩餐会に招かれた本当の意味と、娘の私が膨大な魔力の持ち主だということに驚きが隠せず、上手く話を切り替えせないお父様。
まあ、私自身でさえも大量の魔力を持っていることを知らなかったのだけどね。
私に関心のないお父様が知らなくて当然だわ。
「私は、息子の想い人であるリビア嬢を大変気に入っております。リビア嬢がご実家で不当な扱いを受けておられるとしたら、私はこの事を見過ごしておくわけにはいきません。」
「教育方針はそれぞれ異なります。ジェイダ前大公夫人といえど、他の家の方針を指図する権限は……」
「それでは、陛下に頼んでリビア嬢を他の王家分家の養女にしていただきましょう。
その上で、うちの息子と結婚してもらいます。」
「な……!」
「侯爵様こそなにか勘違いをされていらっしゃるのでは?
私は貴方に提案をしているのではありません。
リビア嬢はしばらくうちで預かります。
いいでしょうか、リビア嬢。」
「は、はい……」
「それではいきましょう。
ここでは美味しい食事も喉を通りませんからね。」
冷たい眼差しでお父様を一瞥し、席を立つ夫人に私とギルバートも続いた。
こうして晩餐会は、ジェイダ夫人の一方的な攻撃で幕引きとなり、店から出た通りには人が多く三人で帰るところを多くの貴族たちの目に映して帰ることになった。
***
その後、
ガシャンっ!
「クソッ。どうなっているんだ!リビアが膨大な魔力の持ち主だと!?」
屋敷に帰宅したフェルディナント侯爵は、近くにあったグラスを床に強く叩きつけるように割り怒りを顕にした。
それも当然。
幾ら大公夫人とはいえ、女性にあれほどまで侮辱されたのだから。
しかも大公と二人の娘の目の前で何も言い返せずに終わってしまい、挙句リビアは大公家に連れていかれ、面子が潰れてしまったのだ。
「一体何がどうなっているんだ!!」
「落ち着かれてください、お父様。これにはきっと裏がありますわ。
だって、お姉様に元々膨大な魔力があったと本当にお思いですか?
私達家族が気付かない筈ございません。裏があるとみた方がいいですわ。」
「そ、それもそうだな。」
「私も最近のお姉様は何かおかしいと思って知り合いに調べてもらっているところです。
とりあえず、その結果を待ってみましょう。」
そして、この日のジェイダ夫人の行動で、それぞれの思惑が動き出すこととなる。
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