妹と幼馴染の前世が、寝取り魔王と寝取られ勇者+宇宙、そして未知との遭遇

森月真冬

文字の大きさ
2 / 43

知ってるだろ? これがいわゆる、魔王からは逃げられない……だ

しおりを挟む
 待望の日曜日である。
 あいにくの曇り空だったが、天気予報は明日まで持つと言っていた。
 空那はウキウキしながら身支度を整える。
 彼は、この日をまんじりともせず待っていた。雪乃とは通学も学校も一緒に過ごしていたが、二人とも緊張していて会話も少なく、どことなくぎこちなかった。
 それというのも、すべては今日と言う日の為だ。
 今日は、力一杯に楽しむのだ! ……できれば、朝まで。
 少し寝不足の目を擦りつつ、空那は玄関で靴を履く。
 と、その背後に誰かが立った。
 後ろから絡みつく細い腕に、空那はぎくりと身を震わせる。

「どこへ行くの?」
「え? えっと、雪乃と遊園地でお泊りデート……」

 しまった、と。空那は思う。
 思わず、本当の事を言ってしまった。
 肩越しに見える猫っ毛とリボンは、紛れもない砂月の物である。どうやら、墓参りについていかなかったらしい。
 さて、めんどくさい事になったぞ、と視線を下げる。すると意外な事に、その目は涙で潤んでいる。

「行っちゃ……やだぁ!」

 言葉と共に、涙がほろりと頬を伝う。
 空那は焦った。生まれてこの方、こんなに焦った事があっただろうか? ってくらいに焦りまくった。
 兄妹喧嘩で泣かせた事は何度かあったが、外出で泣かせるのはさすがに初めての経験である。

「い……いや、いやいや。だって、俺もう、約束してるしっ!」

 だが、砂月はその腕を離さない。ギュッと力を込めてくる。
 空那は、己の体にかかる意外なほど強い圧迫感に、かはぁ、と息を吐き出す。
 鼻にかかった涙声で、砂月が言う。

「ねえ、行かないでよぉ……お願いだからぁ……おにいちゃあん!」
「うお、え、ちょっと……? あの……砂月さんっ? ちょお、痛っ……は、離していただけませんか?」

 甘える声の妹に敬語で話しかけながら、空那はなんとか脱出しようと身をよじる。だが……これがなんと、外れない!
 力いっぱいもがいてるのに、まるで石像にでも抱きしめられてるみたいにビクともしないのである!
 なんだ、この怪力は!?
 驚く空那の唇に、砂月の唇がゆっくり近づいて行く。

「ね、行っちゃ、やだよぉ……ごくり。うぁあ、おにいちゃんの唇、たまんないね……ふぅ、ふぅ……ね、キス……しよ?」
「いやいやいや、えーッ!? な、なんで突然、キスなんだ!?」
「なんでって……この体勢だったら、当然そうなるでしょ? くふぅ……」
「ならんよ!? なるわけないよ!? わからん! 全然、わからん! 説明を求める! わからんままで、されたくない!」

 空那は暴れる。だけど両腕をがっちりホールドされているので、身動きできない。
 冷や汗を垂らして空那は必死で抗った。だが、まったく意味がない。
 頭をつかまれ、向きを強引に変えられる。肩越しに少しずつ近づく妹の小さな唇に、空那は戦慄した。
 砂月が、熱い吐息を吹きかけながら囁く。

「ねぇん……アタシ、なんでもしてあげるからさぁ……今日だけは、家にいて?」
「な、なんでも!? なんでもて!? ……なにする気なの!? あのね! やっぱりさ、俺達、一応は義理とは言え兄妹だし……その、これ以上はいけ……むぐっ」

 唇と唇が重なる。
 ……静寂の中、二人の息遣いだけが聞こえた。
 ファーストキス。妹だから、ノーカン! ノーカン!
 空那が頭の中で連呼した……その時だ。突然、玄関がガチャリと開く。
 そこには、険しい顔した雪乃が立っていた。その背後では空が怪しく曇り、雷がゴロゴロと不穏な音を立てている。
 空那の目が驚愕で見開かれる。
 しかし、弁解しようにも口は塞がれ、言葉にならない。んーんーと呻く空那。
 雪乃はわなわなと震え、唇を重ねる砂月を指差し、高らかに吠えた。

「そこまでよ! 魔王シェライゴス! 一度ならず二度までも、よくもこの私の恋人を!」

 砂月が、ぷはぁと唇を離し、哄笑してそれに答える。いつのまにやらその肩には漆黒のマントがひるがり、頭にはグロテスクで巨大な角が乗っかっていた。

「ふはははははは! よくぞ我が城へ来たと言っておこう、勇者アルカっ!」

 火花を上げる少女二人に囲まれて、空那は呆然とその顔を交互に見比べる。
 雪乃は傍らの傘立てからビニール傘を一本抜き出すと、それを構えてぎろりと睨む。放たれる殺気に、空那は慌ててその場を後ずさる。

「ちょ、ちょっと待って、雪乃! 今のは俺の意志じゃなくて、不可抗力だって!」

 砂月が、馬鹿にしたように指をさす。

「ぶははははは! なんだ、その銅の剣にも劣るような貧弱な武器は!? そんな物で我が命が奪えるか!」

 空那は青くなる。

「ちょ、挑発すんな! お前はっ」

 瞬間、裂帛れっぱく|の気迫と共に、横一文字に銀が閃く!
 その一撃は真っ直ぐに砂月へと吸い込まれ……ガギィン! 鋭い金属音を響かせて、何かに弾かれた。
 ごとり。少し遅れて、玄関に掛けてあった姿見が半ばで断ち切られ、床に倒れた。それを追ってパラパラと、コンクリートと建材の破片が落ちる。壁には深く、綺麗に切り裂かれた傷がついている。
 雪乃は怒りに燃えた表情で舌打ちし、折れたビニール傘を投げ捨てる。落ちたビニール傘はぐしゃぐしゃに潰れ、その先には黒く尖った何かが食い込んでいた。
 さらに雪乃はもう二本、傘立てから両手で傘を抜き出すと、それを構えて踏み込んだ。

「魔王シェライゴス、覚悟ぉーッ!」
「ま、待てってばぁ!」

 空那はあわあわと両手を突き出した。
 しかし、静止の声も空しく。またしても殺気と共に二条の光がクロスして、稲妻のように宙を走る!
 止める間もない早業だった。空那は悲鳴を上げてうずくまる。

「うわあっ!?」

 死んだ! 今度こそ死んだ!

 ……と思ったけど、まだ首がついてる!?
 ガクガク震えながら恐る恐る顔をあげると、そこには異形の片腕で二本の傘を受け止める、妹の姿があった。
 ギリギリと音を立て、傘が腕に食い込む……が、砂月は余裕の薄笑いを浮かべている。彼女の腕は、巨大な獣を思わせる黒い毛皮に覆われて、凶悪で鋭い爪がドス黒く光っていた。
 雪乃が歯を食いしばり、さらに強く踏み込む。異形の腕から鮮血が飛んだ。
 焼けそうなほどに熱い血が空那の顔にかかって、ハッと我に返る。

「お……おい、待て! なんだこりゃ!? 説明しろっ!」

 二人は一瞬、空那を見て気を殺がれたような顔をしたが、またすぐに視線を戻し、己の腕へと力を込め始めた。
 それを見て、空那は急に悔しくなる。

(……なんだ、こいつら? 俺を完璧に無視して、勝手に喧嘩しやがって!)

 腹が立った彼は、落ちていたスリッパで、二人の後頭部を思いっきり引っ叩く。
 パカーン、パカーン! と。小気味いい音が、二連発で廊下に響いた。

「いったぁーい!」
「おにいちゃん、なにすんのよぉ!」

 頭を抑えて抗議の声をあげる二人を見下ろし、空那は指を突きつける。
 あまりの事態に動転していたが、彼にとっては結局、二人は幼馴染と妹であり、腹さえ括ればその態度に遠慮はないのだ。

「だからさぁ、説明しろって言ってんだろっ!」

 しばしの静寂。
 それから二人は顔を見合わせ、困った顔で話をはじめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

処理中です...