21 / 43
レベルxxの少女達
しおりを挟む
スマホの表示は圏外になっていた。家の電話も、光回線のインターネットも繋がらない。外部と連絡が取れないように、妨害がされてるようだった。
何度、電源を入れなおしても繋がらないスマホを、うんざりしながら放り出すと、空那は母親の身体を毛布で包み、ベッドに寝かせた。
(父さん……どうしたかな?)
隣の町で輸入雑貨店を営む父は、この時刻にはそろそろ帰り支度を始める頃だ。
……道路や交通機関は、一体どうなっているのだろうか?
父も、この町に入った瞬間、母と同じように眠りに付く運命なのか?
それから空那は蒼白な顔で、雪乃と砂月に己の見たもの、聞いたものを説明した。自分がやってしまったこと、炙山父のこと、そしてアニスのこと……すべての話を聞き終えると、雪乃が怒鳴った。
「なんてことなの!? 平和に暮らしてる人達を、いきなりこんな風に拉致して、オマケに部品にするなんて……私、絶対に許せないっ!」
砂月も、爪をガリガリ噛みながらウロウロする。
……部屋の中には、耐え難い空気が満ちていた。
二人とも、怒りをもてあましているのだ。
沈黙に耐えきれなくなった空那は、ふと視線を外す。すると……外。遠くの屋根上に、巨大な『何か』が、ゴソリと動く。
驚いた空那は窓へと向かい、改めて夜の街を見回した。
「……な、なんだ!? あれっ!」
その緊張した声に、砂月と雪乃も窓へと走る。そして、それを見た。
闇の中、付近の屋根に蠢くそれらは、街灯や満月の光を反射して、鈍く銀色に光っていた。丸い身体に、触手のような四本脚。時折、その身を震わせては、蛍のような緑色にチカチカ瞬く。
大きさは、直径3メートルほど。街中で見かけた銀塊の、何十倍もの大きさで、軽自動車くらいはあるだろう。
それが、辺りの屋根へ道へと、我が物顔で飛び移る。グロテスクで、巨大な針金細工のような……あるいは子供の玩具のようなそれらが、夜の風景に見え隠れしている。
月明かりに照らされた、脚の足りない蜘蛛のような姿を見て……雪乃の心が、怒りに燃え上がった!
雪乃は抜き放した日本刀を片手に、夜の町を獣のように疾走する。
周囲の屋根にいる『四脚』は、全部で5体。
雪乃は地面を蹴り、民家の壁を跳躍し、1体の『四脚』のいる屋根へと着地した。
そして街灯の光で鈍く銀色に反射するそいつに、素早く斬撃を叩きつけた。吸い込まれた刃は、豆腐を切り裂くように敵を両断する。
真っ二つに切られた『四脚』は、強く緑に一度だけ輝くと、まるで溶けるみたいにあっという間にバラバラと崩れた。
十メートルほど離れた屋根にいる別の『四脚』が、雪乃に気づいて脚の一本を伸ばす。脚は途中で、グンと何倍にも伸びて、まるで鞭のようにしなった。
風を切り、振り回されるそれを、雪乃は上体を捻って軽々と避ける。避けられた鞭は、雪乃の後ろの電柱に当たった。ガツン! 音と共に、半ばから削り取られ、その威力を物語る。
二度、三度。次々と連続で、鞭が飛ぶ。矢継ぎ早に繰り出される攻撃を、雪乃はすべて見切って避けた。そして四度目の鞭を、刀で切り飛ばす。同時に、敵めがけて跳ぶ。
十メートルの間合いが一足飛びで縮まり、
「でやぁーっ!」
気合と共に銀が閃き、『四脚』は横一文字に両断される。上下に断たれた『四脚』が、一拍の間をおいてバラバラと崩れる。
残り3体の『四脚』が、雪乃めがけて集まってきた。雪乃をぐるりと取り囲み、一斉に鞭を振るう。
音速の鞭が三本、さすがに避けられない! ……が、雪乃はなんと、上下左右に高速で刀を振り回し、すべての鞭を一気に弾き返した。
『四脚』は諦めずに、しつこく鞭を繰り出す。雪乃が弾き返す。また繰り出す。弾き返す。
鋭い金属音と共に、空中に火花が連続で散り、それが幾度も続き、その回数が、十数を超えた。
唐突に、パキィンッ! 刀が折れる。蓄積された負荷に、耐え切れなくなったのだ!
それを合図とばかり、両側から挟み込むように、2体の『四脚』が飛び掛かる。
だが、雪乃は空中へと高く跳んで、攻撃をかわす……真っ直ぐに落ちる先には、その場を動かなかった、1体の『四脚』が!
雪乃は折れた刀の柄を、そいつの背に思いっきり振り下ろした。
ガァンッ! ドラム缶に車が突っ込んだみたいな無粋な破砕音が響き、その背が深く陥没する。
3体目の『四脚』が断末魔のように強く光り、バラバラと崩れ落ちた。
残りは……2体。
ゆらり、怒りに燃えた雪乃が立ち上がる。鬼神の如き強さだった。
窓の外で繰り広げられる光景に、空那はただ、喉を鳴らす。
雪乃が跳ね回るたび、屋根の上で緑の光が輝き、銀色の破片が飛び散り、時に破壊音が鳴り響く。
それを見て、砂月が呟く。
「勇者の力はね、感情の大きさに左右されるの。その気持ちが大きければ大きいほど、化け物みたいに強くなる」
空那は唖然と砂月の顔を見る。真剣な顔で彼女は続けた。
「暴走しちゃうと、もうダメだよ……。本気になった勇者は、恐ろしいんだ! ……誰にも止められない。一人だと、自分が死ぬか、相手が死ぬまで戦い続けるだけなんだよね。だから、誰かが止めてやらないと……」
それでは『勇者』というより、『狂戦士』ではないか!
空那は真っ青になって叫んだ。
「勇者って、そんな危険なもんなのかよッ!?」
空那の心を、とてつもない衝動が襲う。
(雪乃が死ぬ……この世界からいなくなる! ……再び、巡り会えたのに!)
その思考の意味に、おかしさに、気づく暇もなく。空那は冷静さを完全に失ってしまった。彼は反射的に家を飛び出す。そして、大声で叫んだ。
「雪乃っ! 戻れ! 戻ってくれ! 頼むよーっ!」
砂月が己の迂闊な一言に気づき、慌てて追いかける。
「あ……おにいちゃん!? 外に出たら危ないよぉ!」
雪乃の顔が、ハッと空那の方を向く。それが、敵に狙わせる呼び水となった。
彼女の視線の先を読み取り、『四脚』が荒走家の屋根へと飛び移る。雪乃に勝てないと見た『四脚』が、標的を空那に切り替えたのだ!
雪乃も慌てて追いかけるが……距離がありすぎて、追いつけない!
雪乃の口から、絶望的な悲鳴が飛び出る。
「あぁっ!? やだ……ヤダヤダ! それだけはヤダぁーっ! 空ちゃん、逃げてーっ!」
空那の死角から『四脚』が、巨体を宙に躍らせた! 真下には、彼がいる!
空那も気づく……が、もう遅い!
砂月がなんとか守ろうと、とっさに覆い被さる。押し倒された空那の目には、おぞましい質量が落ちてくるのが映る。
(こんなの、砂月だって支えきれないっ!)
空那は妹だけでも助けようと、必死に押し返す!
砂月は震えながら離すまいと、強く抱きしめる!
すべては、刹那の出来事だった。二人が死を覚悟した、次の瞬間。
バチリ!
闇を閃光が貫き、なにかが爆ぜる音がした。
すると銀塊はあっという間に千切れ、一瞬で四方八方に飛んでいく……なにが起こったのか?
カラカラと乾いた音を立てて散らばる銀の破片に、三人ともが唖然とする。
空那は、光線の瞬いた先へと視線を移した。見ると、屋根の上に小柄な人影が立っていた。
緊張感もなく、構えるでもなく、ただ自然体に立ち尽くす……その姿。月明かりに逆光となり、顔は見えない。
だが、知っている。空那は知っている。それが誰だか、わかったのだ。
影は片手を、雪乃の後ろの最後の1体の『四脚』へと向けた。
その腕から閃光が迸り、そいつを弾き飛ばす。強い光に照らされた彼女は、紛れもないアニスだった。
アニスは、ふらり……まるで散歩でもするかのように、平然と屋根を歩く。
そして、転んだ。
ボーっとしていて、瓦に蹴つまずいたらしい。そのまま、ゴロゴロ転がり落ちる。
「あーっ!? アニス先輩ーっ!」
驚いて空那が叫ぶのと、雪乃が走るのは同時だった。
落ちたアニスめがけて雪乃がジャンプして、地に落ちるすんでの所で抱きとめる。
空那は、ホッと胸をなでおろした。
ふと、鈍い光がグネグネと地面を這うのに気づいた。見ると、それは散らばった銀の破片が、細かく千切れてバラバラになり、大量のハリガネモドキが、ミミズのように身をくねらせて移動してるのだった。
砂月が立ち上がり、それを睨みつける。ついで、その目が爛々と輝き、夜を照らす。
ぞわり……ざわざわ……ざわっ。
なにかが、夜の街のそこかしこで、黒く蠢いた。
まるでゲル状の生物のような黒い塊が、マンホールや下水から這い出て来る。そいつらは散らばった銀色のハリガネに取り付き、片っ端から取り込み始めた。
ガリガリと、掻き毟るような音が響く。
空那は、それが何かを確かめるために身を乗り出した。
「うっ!?」
思わず、顔をしかめて引き返す。
黒の正体は……大量のゴキブリとネズミだった。
雪乃が青い顔で言う。
「これは……知能の弱い動物を、意のままに操る魔術ね!」
その言葉に、砂月が腕組みをして頷く。
「ククク……そうだ。意志薄弱にして虚弱な生き物は、我の支配からは逃れられぬ。矮小な生き物たちだよ……だが、寄り集まれば強力な武器となる。奴らは与えられた命令を、文字通りに命を賭して遂行するからな!」
空那は、ふと思い出し、砂月の顔を覗き込む。
「そういや、お前ってゴキブリが死ぬほど嫌いじゃなかったっけ?」
覗き込んだ砂月の顔は蒼白なだけでなく、口から泡を吹き、白目を剥き、冷や汗を流してガタガタ震えていた。
「こ、ここここ、今後、わ、わ、我が城より……半径2キロ以内には絶対に、絶対に! 立ち入らないように命令しておく。あの、お、おおおお、おにいちゃん……ここ、腰が、抜けて、た、倒れちゃいそうだから……は、早く! さ、支えてぇ……っ!」
何度、電源を入れなおしても繋がらないスマホを、うんざりしながら放り出すと、空那は母親の身体を毛布で包み、ベッドに寝かせた。
(父さん……どうしたかな?)
隣の町で輸入雑貨店を営む父は、この時刻にはそろそろ帰り支度を始める頃だ。
……道路や交通機関は、一体どうなっているのだろうか?
父も、この町に入った瞬間、母と同じように眠りに付く運命なのか?
それから空那は蒼白な顔で、雪乃と砂月に己の見たもの、聞いたものを説明した。自分がやってしまったこと、炙山父のこと、そしてアニスのこと……すべての話を聞き終えると、雪乃が怒鳴った。
「なんてことなの!? 平和に暮らしてる人達を、いきなりこんな風に拉致して、オマケに部品にするなんて……私、絶対に許せないっ!」
砂月も、爪をガリガリ噛みながらウロウロする。
……部屋の中には、耐え難い空気が満ちていた。
二人とも、怒りをもてあましているのだ。
沈黙に耐えきれなくなった空那は、ふと視線を外す。すると……外。遠くの屋根上に、巨大な『何か』が、ゴソリと動く。
驚いた空那は窓へと向かい、改めて夜の街を見回した。
「……な、なんだ!? あれっ!」
その緊張した声に、砂月と雪乃も窓へと走る。そして、それを見た。
闇の中、付近の屋根に蠢くそれらは、街灯や満月の光を反射して、鈍く銀色に光っていた。丸い身体に、触手のような四本脚。時折、その身を震わせては、蛍のような緑色にチカチカ瞬く。
大きさは、直径3メートルほど。街中で見かけた銀塊の、何十倍もの大きさで、軽自動車くらいはあるだろう。
それが、辺りの屋根へ道へと、我が物顔で飛び移る。グロテスクで、巨大な針金細工のような……あるいは子供の玩具のようなそれらが、夜の風景に見え隠れしている。
月明かりに照らされた、脚の足りない蜘蛛のような姿を見て……雪乃の心が、怒りに燃え上がった!
雪乃は抜き放した日本刀を片手に、夜の町を獣のように疾走する。
周囲の屋根にいる『四脚』は、全部で5体。
雪乃は地面を蹴り、民家の壁を跳躍し、1体の『四脚』のいる屋根へと着地した。
そして街灯の光で鈍く銀色に反射するそいつに、素早く斬撃を叩きつけた。吸い込まれた刃は、豆腐を切り裂くように敵を両断する。
真っ二つに切られた『四脚』は、強く緑に一度だけ輝くと、まるで溶けるみたいにあっという間にバラバラと崩れた。
十メートルほど離れた屋根にいる別の『四脚』が、雪乃に気づいて脚の一本を伸ばす。脚は途中で、グンと何倍にも伸びて、まるで鞭のようにしなった。
風を切り、振り回されるそれを、雪乃は上体を捻って軽々と避ける。避けられた鞭は、雪乃の後ろの電柱に当たった。ガツン! 音と共に、半ばから削り取られ、その威力を物語る。
二度、三度。次々と連続で、鞭が飛ぶ。矢継ぎ早に繰り出される攻撃を、雪乃はすべて見切って避けた。そして四度目の鞭を、刀で切り飛ばす。同時に、敵めがけて跳ぶ。
十メートルの間合いが一足飛びで縮まり、
「でやぁーっ!」
気合と共に銀が閃き、『四脚』は横一文字に両断される。上下に断たれた『四脚』が、一拍の間をおいてバラバラと崩れる。
残り3体の『四脚』が、雪乃めがけて集まってきた。雪乃をぐるりと取り囲み、一斉に鞭を振るう。
音速の鞭が三本、さすがに避けられない! ……が、雪乃はなんと、上下左右に高速で刀を振り回し、すべての鞭を一気に弾き返した。
『四脚』は諦めずに、しつこく鞭を繰り出す。雪乃が弾き返す。また繰り出す。弾き返す。
鋭い金属音と共に、空中に火花が連続で散り、それが幾度も続き、その回数が、十数を超えた。
唐突に、パキィンッ! 刀が折れる。蓄積された負荷に、耐え切れなくなったのだ!
それを合図とばかり、両側から挟み込むように、2体の『四脚』が飛び掛かる。
だが、雪乃は空中へと高く跳んで、攻撃をかわす……真っ直ぐに落ちる先には、その場を動かなかった、1体の『四脚』が!
雪乃は折れた刀の柄を、そいつの背に思いっきり振り下ろした。
ガァンッ! ドラム缶に車が突っ込んだみたいな無粋な破砕音が響き、その背が深く陥没する。
3体目の『四脚』が断末魔のように強く光り、バラバラと崩れ落ちた。
残りは……2体。
ゆらり、怒りに燃えた雪乃が立ち上がる。鬼神の如き強さだった。
窓の外で繰り広げられる光景に、空那はただ、喉を鳴らす。
雪乃が跳ね回るたび、屋根の上で緑の光が輝き、銀色の破片が飛び散り、時に破壊音が鳴り響く。
それを見て、砂月が呟く。
「勇者の力はね、感情の大きさに左右されるの。その気持ちが大きければ大きいほど、化け物みたいに強くなる」
空那は唖然と砂月の顔を見る。真剣な顔で彼女は続けた。
「暴走しちゃうと、もうダメだよ……。本気になった勇者は、恐ろしいんだ! ……誰にも止められない。一人だと、自分が死ぬか、相手が死ぬまで戦い続けるだけなんだよね。だから、誰かが止めてやらないと……」
それでは『勇者』というより、『狂戦士』ではないか!
空那は真っ青になって叫んだ。
「勇者って、そんな危険なもんなのかよッ!?」
空那の心を、とてつもない衝動が襲う。
(雪乃が死ぬ……この世界からいなくなる! ……再び、巡り会えたのに!)
その思考の意味に、おかしさに、気づく暇もなく。空那は冷静さを完全に失ってしまった。彼は反射的に家を飛び出す。そして、大声で叫んだ。
「雪乃っ! 戻れ! 戻ってくれ! 頼むよーっ!」
砂月が己の迂闊な一言に気づき、慌てて追いかける。
「あ……おにいちゃん!? 外に出たら危ないよぉ!」
雪乃の顔が、ハッと空那の方を向く。それが、敵に狙わせる呼び水となった。
彼女の視線の先を読み取り、『四脚』が荒走家の屋根へと飛び移る。雪乃に勝てないと見た『四脚』が、標的を空那に切り替えたのだ!
雪乃も慌てて追いかけるが……距離がありすぎて、追いつけない!
雪乃の口から、絶望的な悲鳴が飛び出る。
「あぁっ!? やだ……ヤダヤダ! それだけはヤダぁーっ! 空ちゃん、逃げてーっ!」
空那の死角から『四脚』が、巨体を宙に躍らせた! 真下には、彼がいる!
空那も気づく……が、もう遅い!
砂月がなんとか守ろうと、とっさに覆い被さる。押し倒された空那の目には、おぞましい質量が落ちてくるのが映る。
(こんなの、砂月だって支えきれないっ!)
空那は妹だけでも助けようと、必死に押し返す!
砂月は震えながら離すまいと、強く抱きしめる!
すべては、刹那の出来事だった。二人が死を覚悟した、次の瞬間。
バチリ!
闇を閃光が貫き、なにかが爆ぜる音がした。
すると銀塊はあっという間に千切れ、一瞬で四方八方に飛んでいく……なにが起こったのか?
カラカラと乾いた音を立てて散らばる銀の破片に、三人ともが唖然とする。
空那は、光線の瞬いた先へと視線を移した。見ると、屋根の上に小柄な人影が立っていた。
緊張感もなく、構えるでもなく、ただ自然体に立ち尽くす……その姿。月明かりに逆光となり、顔は見えない。
だが、知っている。空那は知っている。それが誰だか、わかったのだ。
影は片手を、雪乃の後ろの最後の1体の『四脚』へと向けた。
その腕から閃光が迸り、そいつを弾き飛ばす。強い光に照らされた彼女は、紛れもないアニスだった。
アニスは、ふらり……まるで散歩でもするかのように、平然と屋根を歩く。
そして、転んだ。
ボーっとしていて、瓦に蹴つまずいたらしい。そのまま、ゴロゴロ転がり落ちる。
「あーっ!? アニス先輩ーっ!」
驚いて空那が叫ぶのと、雪乃が走るのは同時だった。
落ちたアニスめがけて雪乃がジャンプして、地に落ちるすんでの所で抱きとめる。
空那は、ホッと胸をなでおろした。
ふと、鈍い光がグネグネと地面を這うのに気づいた。見ると、それは散らばった銀の破片が、細かく千切れてバラバラになり、大量のハリガネモドキが、ミミズのように身をくねらせて移動してるのだった。
砂月が立ち上がり、それを睨みつける。ついで、その目が爛々と輝き、夜を照らす。
ぞわり……ざわざわ……ざわっ。
なにかが、夜の街のそこかしこで、黒く蠢いた。
まるでゲル状の生物のような黒い塊が、マンホールや下水から這い出て来る。そいつらは散らばった銀色のハリガネに取り付き、片っ端から取り込み始めた。
ガリガリと、掻き毟るような音が響く。
空那は、それが何かを確かめるために身を乗り出した。
「うっ!?」
思わず、顔をしかめて引き返す。
黒の正体は……大量のゴキブリとネズミだった。
雪乃が青い顔で言う。
「これは……知能の弱い動物を、意のままに操る魔術ね!」
その言葉に、砂月が腕組みをして頷く。
「ククク……そうだ。意志薄弱にして虚弱な生き物は、我の支配からは逃れられぬ。矮小な生き物たちだよ……だが、寄り集まれば強力な武器となる。奴らは与えられた命令を、文字通りに命を賭して遂行するからな!」
空那は、ふと思い出し、砂月の顔を覗き込む。
「そういや、お前ってゴキブリが死ぬほど嫌いじゃなかったっけ?」
覗き込んだ砂月の顔は蒼白なだけでなく、口から泡を吹き、白目を剥き、冷や汗を流してガタガタ震えていた。
「こ、ここここ、今後、わ、わ、我が城より……半径2キロ以内には絶対に、絶対に! 立ち入らないように命令しておく。あの、お、おおおお、おにいちゃん……ここ、腰が、抜けて、た、倒れちゃいそうだから……は、早く! さ、支えてぇ……っ!」
0
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる