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死に際のアニス
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アニスは、無人のコンビニエンスストアにいた。
この付近は電気が消えていて、暗い。アニスが先ほど、リアクターで小石を跳ね上げて、電線を切断したからだ。
彼女は地下水路を追い詰められ、ついには中枢まであと20メートルの地点で、地上へと出る事を余儀なくされた。
四方八方から近づく水音にどうしようもなくなり、リアクターの出力を最大限に上げて水路を封鎖し、辛くも外へ逃げ切った所なのだ。
冷たい床に這い蹲りながら、アニスは考えた。
(やはり空那の作戦に、間違いがあったとは思えない)
たったの四人……しかも、時間は明日の朝まで。
まともな方法で、なんとかできるはずもない。
実質的にできる作戦など、限られていた。
その中でも、成功する可能性があったのは、囮と潜入のみだった。
ただ、それを行う上でもっとも重要な……アニスのもたらした『情報』に、多大な誤りがあったのだ。
(まさか、これほどの物量が潜んでいたとは、思わなかった)
ケイ素生物が多すぎて、あのままのルートを進んでも、中心部には辿り着けなかったろう。
無駄な事を、する気はなかった。
わずかな可能性にかけ、地上に出たが……どこも『四脚』が徘徊してて、潜り込めそうにない。
雪乃のように足が速くないアニスは、数でこられたら逃げ切れない。その上、逃げたおおよその場所は、すでにバレてしまっている。
(……多分、もうすぐ自分は死ぬだろう)
きゅるる……空腹で腹が鳴る。
(リアクターのために、カロリーを補給しなくてはならない)
なにか食べようと思い立ち、店内を見回し……レジの横、ホットスナックのコロッケが目に入った。
そして、隣を見る。棚に、缶詰が並んでいる。サバの水煮、ミートソース、コンビーフ、スイートコーン、サンマの蒲焼、オイルサーディーン……どれを食べても、カロリーは摂取できる。
レジは、外から丸見えだ。危険を冒し、コロッケを取りに行く必要などない。
隣にある缶詰を開けて食べれば、事は済むのだ。充分にカロリーは摂取できる。
だが……アニスの手は、そちらに伸びない。
ゆっくりと、這うようにして、レジへと向かう。
そんな自分自身に、アニスはとても驚いていた。
(これは……? 自分は、なにをやってるのだろう!?)
高い可能性で、『自分が死ぬ』という事実に思い至った時、どうしても缶詰ではなくて、コロッケを食べたいと考えてしまった。
(この場において、そんな気持ちが、効率より優先されるとは思えない。やらなくていい事、失敗する可能性のある事を……なぜ、自分はやっているのだろう?)
自問しつつ、レジの裏へと回り込む。どうやら、幸運にも見つからなかったらしい。ゆっくりと保温機へと手を伸ばしかけた時……不意に。パキリ、音がなった。
外を見ると、ガラス越しに『四脚』が張りついている。
ガラスにピキピキと亀裂が入り、次の瞬間に弾け飛ぶ。
アニスは、キラキラと輝く世界を、ぼんやりと眺めた。
レストランで見た夜景みたいに……たくさんの光が……闇の中に散らばっている。
(綺麗……。これはきっと、最後に記憶する光景……)
美しい光の中で、自らの死を確信した。
この付近は電気が消えていて、暗い。アニスが先ほど、リアクターで小石を跳ね上げて、電線を切断したからだ。
彼女は地下水路を追い詰められ、ついには中枢まであと20メートルの地点で、地上へと出る事を余儀なくされた。
四方八方から近づく水音にどうしようもなくなり、リアクターの出力を最大限に上げて水路を封鎖し、辛くも外へ逃げ切った所なのだ。
冷たい床に這い蹲りながら、アニスは考えた。
(やはり空那の作戦に、間違いがあったとは思えない)
たったの四人……しかも、時間は明日の朝まで。
まともな方法で、なんとかできるはずもない。
実質的にできる作戦など、限られていた。
その中でも、成功する可能性があったのは、囮と潜入のみだった。
ただ、それを行う上でもっとも重要な……アニスのもたらした『情報』に、多大な誤りがあったのだ。
(まさか、これほどの物量が潜んでいたとは、思わなかった)
ケイ素生物が多すぎて、あのままのルートを進んでも、中心部には辿り着けなかったろう。
無駄な事を、する気はなかった。
わずかな可能性にかけ、地上に出たが……どこも『四脚』が徘徊してて、潜り込めそうにない。
雪乃のように足が速くないアニスは、数でこられたら逃げ切れない。その上、逃げたおおよその場所は、すでにバレてしまっている。
(……多分、もうすぐ自分は死ぬだろう)
きゅるる……空腹で腹が鳴る。
(リアクターのために、カロリーを補給しなくてはならない)
なにか食べようと思い立ち、店内を見回し……レジの横、ホットスナックのコロッケが目に入った。
そして、隣を見る。棚に、缶詰が並んでいる。サバの水煮、ミートソース、コンビーフ、スイートコーン、サンマの蒲焼、オイルサーディーン……どれを食べても、カロリーは摂取できる。
レジは、外から丸見えだ。危険を冒し、コロッケを取りに行く必要などない。
隣にある缶詰を開けて食べれば、事は済むのだ。充分にカロリーは摂取できる。
だが……アニスの手は、そちらに伸びない。
ゆっくりと、這うようにして、レジへと向かう。
そんな自分自身に、アニスはとても驚いていた。
(これは……? 自分は、なにをやってるのだろう!?)
高い可能性で、『自分が死ぬ』という事実に思い至った時、どうしても缶詰ではなくて、コロッケを食べたいと考えてしまった。
(この場において、そんな気持ちが、効率より優先されるとは思えない。やらなくていい事、失敗する可能性のある事を……なぜ、自分はやっているのだろう?)
自問しつつ、レジの裏へと回り込む。どうやら、幸運にも見つからなかったらしい。ゆっくりと保温機へと手を伸ばしかけた時……不意に。パキリ、音がなった。
外を見ると、ガラス越しに『四脚』が張りついている。
ガラスにピキピキと亀裂が入り、次の瞬間に弾け飛ぶ。
アニスは、キラキラと輝く世界を、ぼんやりと眺めた。
レストランで見た夜景みたいに……たくさんの光が……闇の中に散らばっている。
(綺麗……。これはきっと、最後に記憶する光景……)
美しい光の中で、自らの死を確信した。
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