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7.ロットの憂い

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王様が私に声をかける。
「今日はカトミィナ嬢も疲れておるじゃろう。部屋を用意している。今日はゆっくり休むといい。明日にはカトミィナ嬢の家族も会いに来る。みんな楽しみにしておるじゃろうよ」
「えっ!家族?私に家族がいるんですか?」
あまりに驚き過ぎて、普通に王様に尋ねてしまった。

「なんじゃ?聞いとらんかったのか?」
チラリと王様はロットに視線を送る。
「申し訳ございません。謁見後に話すつもりでおりました」
ロットは王様に頭を下げ、私にも謝った。
「先にお話しするべきでしたね。ミィナ、申し訳ない」

ぎゃあ!王様の前で謝らせてしまった。
上司の前で失態を晒させてしまった。
なんかそれは間違っている気がして、焦ってロットに声をかける。
「大丈夫ですよ。後でゆっくり話してくれるつもりだったんですよね。気にしないでください。私も準備でバタバタしてましたし、ロットは何も悪くないですよ」

ロットは、ハッとした顔をしたあと蕩けるような笑顔を見せる。
うっ!眩しい。イケメンが過ぎる。

「なんと優しいお嬢さんじゃ」
「うわーこんな子いるんだね。優し過ぎるんじゃない?」
感嘆の表情を浮かべる王様と王子の声に、ロットは誇らしげな顔になる。

…もうヤメテ。優しいんじゃない。色んな事が怖いだけだ。ホント無理。
ちょっと泣きたい気分になった。



謁見室を出て、ホッと息をつく。
緊張したけど、今日の山は越えた。今日は山が多過ぎだ。山どころか地球まで越えてきてしまった。

安堵の息をついていると、ロットがポツリと話しかけてきた。
「…レイトン王子は美しいでしょう?」

え?王子?
…美しい?

先ほど会った王子の姿を思い浮かべる。
父である国王と同じ色の髪――ロットより濃い燻したような銀色。眼の色は、そんな髪色と同じだった。
細身で背は高いし、顔立ちも悪くない。でもわりと普通だ。クラスに1人はいそうな感じ。
優しそうな顔立ちではあるが、美しいという表現は合わない。
とはいえそんなこと口に出したらマズイのかも。不敬だと切り捨てられるかもしれない。

「美しい…?あ、うーん?…美しい…
あ、優しそうな顔立ちはしてますよね。髪と目の色はロットに似てるけど、王子の方が濃い銀色をしてますよね」
優しそうという言葉はセーフなのか。もっと褒め讃えなければ不敬なのか。この話題はキツイ。

王子が美しいという言葉が出なくて、焦ってロットの話題に変えることにする。
「美しいと言えば、ロットは本当に美しいですよね。ロットくらい格好いい人、今まで見たことないです。世界レベルですね」

そう思っていたことを話すと、ロットは驚いた顔をして、私をじっと見つめた。
――うっイケメンだ。

ロットが私に語りかける。
「…ヤノー人は、髪色で美しさを見ます。暗い色ほど高貴で美しいとされるのです。ミィナ、貴方のその黒銀髪の美しさはこの国一でしょう。私はその黒銀髪の美しさに惹かれたのも勿論ですが、ミィナを知る度に貴方自身への思いが深くなっていきます」

ロットに、熱を持った目で見つめられる。
どうにも居心地が悪くてソワソワする。イケメンが過ぎて落ち着かない。どうしたらいいのか分からなくなるのだ。
止めてくれ。そんな風に見ないでほしい。

「あ!あの!私の家族ってどんな人ですか?」
無理矢理だが話題をかえる。

「ミィナにはご両親と、2つ年上の兄がいますよ」
「じゃあ兄は22歳ですね」
「違います」
速攻否定された。何故だ。

「私、いま20歳なので、2つ上だったら22歳ですよね?」
「ミィナは16歳ですよ」
「えっ?違いますよ」
ロットの言葉に驚く。いや貴方、諜報機関に勤めてるんですよね。調査対象の人物の年齢ですよ?間違ってますけど。


ロットが、恋人繋ぎしていた手にキュッと少し力を込めた。落ち着いて聞いてくださいというかのように。
「幼少期のヤノー国人は、宇宙人より成長が早いのです。同世代の宇宙人に比べてヤノー国人は、より能力も知能も背も高いので、簡単に年齢を上に誤魔化せたのでしょう。
ミィナは16歳、これは確証が取れていることなんです」

まさかの地球年齢の年齢詐称。若返った感じで悪い事ではないけど。そっか。16歳だったのか。高校はとっくに卒業してフリーターしてたけど、まだ高校生やっていられる歳だったのか。

ロットは私の様子を見て、私が落ち着いている事に安心した様子をみせた。
ちょうど目的の部屋に到着したようなので、ひとまず部屋に入ることにする。

ロットが手をかざして扉を出しスウッと開くと、そこは落ち着いた淡い色調で揃えられた、可愛いらしい部屋だった。

先ほどの4人の侍女が部屋に控えている。
「今日はお疲れでしょうし、こちらの部屋で夕食を召し上がりませんか?ケトナー様もご一緒にいかがでしょう?」
「いただこう」
そうしてロットと夕食を取りながら、出されたヤノー国料理を堪能した。上品な味わいで、和食のような安心できる味わいだった。


私の家族は、明日の朝この部屋に会いに来てくれるらしい。



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