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第二部 第三章 それぞれの真実と闇
24 心地の良い 嫉妬 メルチェーデside
しおりを挟む「ローザを、ガイオがローザを真実の意味で貴方なしで生きてはゆけないくらいに愛して差し上げれば宜しいのですわ!!」
優し気で、多分男女の機微や肉欲に一番縁遠い者とされるだろう嘗ての処女神ダリアの花の女神ダーリアは何故か自信満々な笑みを湛えればだ。
そう私達へ力強くも自信たっぷりに宣ってくれたのだ。
「おいおいダーリアそれは余りにも乱暴だろう」
私が思わず突っ込みを入れればである。
「私はローザを愛しいとは思うが本人の望まぬ事は何一つとして致したくはない」
渋面の、至って堅物なガイオらしい答えが返ってくる。
だがダーリアのターンはこれで終わりではなかった。
「何故です? どうして愛しいと思うのであればローザを愛しはしないのです。抑々宜しいですかガイオ。神代の頃貴方の変なプライドとサヴァーノへの下らぬ配慮をしていたが為にローザは貴方を選ぶ事もサヴァーノをしっかりと振る事も出来なかったのです!! ええどちらを選ぶ事も出来ずにローザは与えられた地位と務めを粛々とこなしていた可哀想な操り人形の様にも見えましたわ」
「ちょ、ダーリアそれは余りな……」
つい思わず声を発してしまったけれどもだ。
「あらメルチェーデは私が偽りを申しているとでも仰るの?」
「い、いや偽り等とは……」
確かに言われてみればそうなのだがしかしだ。
これは本当に私の知るダーリアなのだろうか。
以前の彼女はダリアの女神らしく儚げで直ぐに倒れてしまいそうな感じだった。
だが昔とは違い今の彼女は一度口を開けば弾丸トークは止まら……ない。
「そ・れ・にですわ。表向きはサヴァーノの妻神と言う地位のお陰で彼のお手付きとなった女神や人間の女だけではなく、そこは性に対してだらしのなかった……おほほ、私から言えばとんだマザコン野郎ですわね。そしてそのマザコン野郎様は母親恋しい余り男女関係なく目に留まった者を次から次へとそれはもう数多に侍らせておりましたでしょう。ですから正妻であられたローザは彼等より謂れのない嫉妬と言う醜い感情だけではなくです。様々な嫌がらせ等も受けておいででしたわ。そうでしょメルチェーデ」
行き成り話を振られた私は頷くしか……いや、真実だけにって抑々だ。
何時の間にダーリアはその事を知っていたのだろうか。
ローザの傍近くにいた私でさえそれを知ったのは随分と後の事だった。
「あら、それは致し方がないでしょう」
「はい?」
「ふふ、メルチェーデは男女の機微なんてものを私以上に知ろうともしなかったのですもの」
「嫌だからと言ってお前も私と同じ処女神……」
「処女神だから男女の機微に聡くなくともいいと思っているのは恐らく貴女とアルテ-アくらいでしょうね」
この言葉に何故か私は激しくショックを受けてしまった。
いや別にアルテ-アと同じだからと言う訳ではない。
ただ単に同じ処女神と言うライン上に立っているかと思えばだ。
ダーリアだけが何時の間にか自分達よりも神?若しくは人間として成長を遂げていると言う事実に少しだけもやっとしてしまった。
この感情は多分嫉妬だろう。
男女の機微には聡くはないが私だとて長年このクソな転生で揉まれてきたのである。
女神であった頃にはない様々な感情に目覚めればだ。
雑多な感情に左右される時もある。
だがこの感情は嫌ではない。
ああこれは心地の良い感情の揺らぎだ。
でも今はその様な些事に囚われてはいけない。
確かにダーリアの言う通りだ。
母親の尻ばかり追い掛けていたサヴァーノにローザの苦しみを思い遣ると言った優しさはなかったな。
まあ優しさを見せられてもだ。
ローザの心の中には既にガイオが棲んでいたのだ。
ローザを心より癒す事が出来るのはこの世界でただ一人ガイオしかいない。
「……そして私が封じられたのは神殺しの剣の為だけではないのです。本当の理由はローザの真の秘密を知ってしまったからですわ」
ダーリアは静かに私達を見つめてゆっくりと深呼吸をした。
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